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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二十七章 ベルフィオーレとユーフレイン
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 ユキが淹れてくれたお茶を飲み、アキは早々に屋敷へと引き上げた。彼女まだ居て欲しそうにしていたが、部屋の外のメイド達がいつ入ってくるかわからないし、あまりユキの私室に長居するべきではないだろう。


「アキさん、おかえりなさいませ!」


 屋敷へ戻るとミルナ達が出迎えてくれた。


「ただいま。首尾は?」

「上々ですわ。」

「屋敷の安全は確保済み?」

「もちろんですわ。」


 さすがミルナ達、こちらも問題ないようだ。


「細かい話はベルフィオーレからに戻ってからにしよう。」

「そうですわね。」


 ミルナも異論はないらしい。


「ナギとジーヴスの準備も大丈夫?」

「もちろん!ばっちりだよ!」

「問題ございません。よろしくお願い致します。」


 ならさっさと帰るとしよう。


 明日からまた忙しくなる。






 ベルフィオーレに戻り、リビングにみんなを集めた。解散してもよかったのだが、いくつか話しておくことがある。


「夜遅いのに悪いな、すぐ終わる。」


 今日も色々あった。というかありすぎだ。


 朝ユーフレインで襲われ、その後ベルフィオーレに戻って街で遊び、夕方またユーフレインで襲われた。なんとうか・・・目まぐるしい1日だった。


 正直疲れた。


「あ、その前に!ご主人!改めてよろしくね!」


 ナギが開口一番、頭を下げてくる。


「こちらこそ。」

「えへへ、ご主人に買われてよかったって思ってたけど、今日は余計にそう思ったよ!ありがとね!」


 尻尾をぱたぱた振りながら笑うナギ。


 うちのわんこ可愛い。


 しかしナギが口を開いてくれたのは丁度いい。


「話ってのはナギにあるんだけど、ちょっといい?」

「え?私?」

「うん、仕事欲しいよね?」

「ほ、欲しい!お仕事欲しい!」


 ナギならそう言うと思っていた。


 だから是非彼女に任せたい仕事がある。


「シャルちゃん、ナギにはどこまで話してある?」


 一応確認だ。今更ナギに何かを隠すつもりはないが、シャルが全部話してくれてのであれば、アキがここで説明する手間が省ける。


「全部です。」

「俺の事も?」


 ベルフィオーレとユーフレインの事は話してあるとしても、どこまでアキの事についてナギ達に話してあるのか。出自まで伝えてくれているのであれば話は早い。


「はい。あの・・・ダメでした?」

「いや、助かる。ありがとう。」

「はい!」


 アキが異世界の出自である事や、オリハルコンで色々出来る事はナギ達には話すつもりでいた。こうなった以上、一蓮托生だしな。さすがにユキにはまだ話していないが、いずれ彼女にも話す事になるだろう。シズに関しては・・・まだわからない。だがこれからも友人をしていくのであれば、何時かは話す日が来そうだ。


 勿論最初はユーフレインの人間には絶対に話すつもりはなかった。どこまで話していいかわからなかったし、話すべきではないと思ったからだ。だがナギやユキ、シズの事を知った今ならもう話してもいいと思っている。


「でもナギ、俺の出自聞いても全然驚いてないのな。」


 むしろそれを聞いていたのに、驚く事もなく、平然とした顔をしているのだから凄い。普通なら「え?なに?説明して!」と問い詰めたくなるだろう。


「んー・・・まあ逆に納得したかな。それにご主人の生まれがどこであってもご主人はご主人だよ!」


 なんかこの反応、見に覚えがあるな。確かアリアやベルにこの話をした時も似たような反応をされた気がする。


「それなら話が早い。これ、俺の世界の道具なんだけど・・・」


 アキは電子タブレットを取り出し、ナギに見せる。最近はミルナ達と過ごす時間が増え、すっかりご無沙汰しているこの道具、今こそ使い時だろう。


「ここに書いてある文字、読めるか?」

「んー・・・読めない・・・」


 まあそうだろう。日本語だからな。


 不思議とこの世界、話す分には言語関係なく意思疎通が出来る。アキがミルナ達と会話できている事もそうだし、ナギとミルナ達が会話出来ている事もそうだ。だが地球とベルフィオーレとユーフレイン、使用している言語は絶対に違う。文字が違うのが何よりの証拠だ。


 言葉は通じるが、文字にすると理解出来ない。


 理由は未だにわからない。以前推測した、言葉と魔素が言霊魔法となって発動しているという可能性が一番高そうだが・・・果たして。


「セシルは読めるよね?」


 言葉が通じる理由はともかく、今はこちらが先だ。


「はい、読めます。」


 セシルはすっかり日本語の読み書きを覚えた。まあセシルだけでなく、ミルナ達もある程度は習得しているが、習得度で言うとセシルが一番だ。彼女はいつも欠かさず、読み書きの練習をしてくれている。さらにはタブレットに入っている書籍も読み漁っている始末。セシルにはそこまでしなくてもいいと言ったのだが、セシル曰く、「アキさんの秘書として、アキさんが話している事、アキさんの世界の事を理解しないといけません」との事らしい。


「セシル、このタブレットを渡すから、ナギに朗読してやってくれ。そしてナギはそれを文字として書き起こして欲しい。」

「はい、わかりました。」

「あとナギにこの文字を教えてあげて。まあこれは出来たらでいいけど。」


 ナギが日本語を読めるようになれば、セシルの負担が減る。出来れば覚えて欲しいところだが、言語習得には向き不向きもあるので無理する必要はない。


「ナギもいい?」

「わ、わかった!頑張るよ、ご主人!」

「うん、期待してるね。」

挿絵(By みてみん)

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