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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二十七章 ベルフィオーレとユーフレイン
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「ルティア、どうだ?」


 ユーフレインに転移したアキは、屋敷の地下室に身を潜めつつ、周囲を探る。今朝ユキを襲った連中は全て片付けたが、増援が待ち構えていてもおかしくない。


「ん・・・いる。屋敷の中。」

「まあそうだよな・・・しかし人の屋敷に勝手に入りやがって・・・」

「許さない。ここは私とアキの愛の巣。」


 ルティアよ・・・そのよくわからない語録は相変わらずどこから仕入れてくるんだ。まあ全部ミルナなんだろうけど。


「ルティア、それ・・・可愛くないぞ?」


 それに断じてここはアキとルティアの愛の巣ではない。


「も、もういわない!」

「じゃあ最初から言うなよ・・・」

「むぅ・・・失敗。」


 いい加減ミルナから得た知識なんて逆効果だと学んで欲しい。ミルナが言うならともかく、ルティアには似合わない。まあミルナが言ったところで効果的なのかと言われると全くそんな事はないが。


「それよりアキ、どうするのだ?私が片付けてくるか?」

「いや、それはやめてくれ。」

「む、何故だ?私じゃ駄目?」

「いや、ほら屋敷の中が血だらけになるのは嫌だし?」


 というよりエリスが屋敷の中で暴れたら絶対大変な事になる。屋敷が半壊・・・いや全壊する。


「なるほどなのだ!」


 上手く誤魔化せた。まあでも一応嘘ではない。血だらけになるのは普通に勘弁してもらいたいしな。


「ん、じゃあ私?」

「いやルティアが殺っても血だらけになるだろ・・・」

「んー・・・なる。」


 そうなるとここはアキの出番だ。


「俺がやる。」

「だめ。あぶない。」

「心配してくれてありがと。でも大丈夫だ。催眠魔法で眠らせるだけだしな。」


 屋敷内に催眠魔法を展開すればそれで終わり。血生臭い展開にもならない。


「んー・・・そんな魔法ある?」


 ルティアが不思議そうに首を傾げる。


 まあ当然の疑問だ。ルティアの言う通り、ベルフィオーレやユーフレインにそんな魔法はない。だがアキにしてみれば、魔法で催涙ガスのような物を作り出せばいいだけ。地球に居た頃の知識を活用すれば容易だ。


 あまり地球の知識を多用するのは避けるべきだとは思うが、今はアキ、ルティア、エリスしかいないし、問題ない。不法侵入してる連中は全て始末するつもりだしな。それに最近は転移くらいにしかオリハルコンを使っていなかったし、丁度いいリハビリだ。今朝襲撃者を撃退した時も、剣しか使わなかった。魔法も体内魔素で使える程度の魔法のみ。久々に理不尽な魔法を使ってさくっと殲滅してしまおう。


「まあ俺だから出来るいつものやつだよ。」

「納得。危なくないなら・・・いい。」

「そうだな、アキに任せるのだ!」


 任せてくれるらしい。もし少しでも危険があったら2人に全力で止められているんだろうな。そろそろこの過保護も何とかしたいところではあるが・・・まあ今はそんな事を考えてる暇はない。


「アキ、毒殺は出来ない?」


 その方が楽でしょとルティア。


 確かにその方が楽だ。でも毒殺して屋敷の中に死体が転がっているのもなんか嫌だ。それに毒殺した際、何らかの拍子で糞尿を垂れ流されたりなんかしたら最悪だ。この子達にそんなもの掃除させたくない。アキだってしたくない。


「ルティアは掃除したいか?」

「絶対やっ。眠らす。やっぱそれがいい。」

「だろ?じゃあ眠らせるからな。ルティアとエリスは俺が良いって言うまで地下室から絶対に出るなよ?」

「ん、わかった。」

「了解なのだ。」


 アキは地下室の扉を少しだけ開け、その隙間からオリハルコンの剣を出し、早速魔法を発動させる。魔素を使って催涙ガスを具現化、屋敷内に充満させる。細かい説明は省くが、いわゆる全身麻酔の時に使われる笑気だ。吸入麻酔薬とも言われる。まあ普通であれば、人体に影響がでないよう、麻酔薬の濃度や配合など専門的な知識が必要な事ではあるのだろうが、今回は眠らせたら殺すだけ。知識がほとんどないアキでも気にせず使える。


「ルティア、何人いる?」

「ん、10人・・・もう少しいるかも。」


 ルティアが明確な答えを出せないのも仕方ない。なんせこの部屋から出ずに気配だけを探っているのだから。まあ何人いようが関係ないといえば関係ないのだが。


「外にはいるか?」

「わからない。ごめん。」

「気にするな、聞いただけだしな。」


 これについてはアキが索敵魔法を使えばいいだけの話だ。とは言っても、今は催眠魔法を展開しているからまだ使えない。魔法の多重展開は出来なくはないが、今は屋敷内の襲撃者連中を眠らせる事が優先だ。万が一漏れがあってはいけないし、1つの魔法に集中したい。


「アキ、まだ?」

「まだだな。10分くらい魔法を使って、その後20分くらい待とう。万が一も屋敷の中で戦闘したくないからね。」

「ん、わかった。」

「エリス、ベルフィオーレへ送り返すから事情を説明しておいてくれる?ルティアは俺と残ってくれ。俺が1人なるのは駄目だろ?」

「だめ。」

「わかったのだ。それなら引き受けるのだ。」


 ただ催眠魔法を発動している間は転移させられないので、とりあえず10分経過するまでルティアとエリスと雑談して過ごす。そして10分経過したところで、エリスをベルフィオーレへと送り返した。


「アキ、おつかれ。」

「あとは待つだけだな。」

「ん。それまでいちゃいちゃする。」


 アキが返事をする暇もなくルティアが抱き着いてきた。どうやらアキに拒否権はないらしい。まあどうせ暇だし、別にいいのだが・・・ルティアはなんというか本当に要領がいい。抜け目ないというか、甘え上手というか。


「はいはい。好きなだけどうぞ。」

「ん!」

挿絵(By みてみん)

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