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「じゃあ決まりね?私の部屋には夜に来て頂戴。必ず1人でいるようにするわ。」
「夜がいいのか?」
てっきり昼間に訪問するものだと思っていたが、夜か。
「ええ、その方が効率いい。昼間は国務をして、問題があったら夜アキに相談する。良い案だと思うのだけれど。」
確かにその通りだ。昼の時間をアキに割くくらいなら、国務をして貰った方がいい。アキへの相談はいつでもできる。
「でも流石に毎日はいけないぞ?」
「まあそれは仕方ないわ。数日おきに来てくれればそれでいい。私、ちゃんと頑張るつもりだから・・・其方も協力してね?」
「ああ、わかった。」
そう言われると断れない。彼女が王女を頑張るようにとけしかけたのはアキだ。そしてそれを手伝うとも言った。だからユキがやると言っている以上、アキも出来る限りの事をしなければ道理が通らない。だから彼女の要望には出来る限り答えるつもりだ。夜のプライベートな時間が減るのは嫌だが、仕方ないだろう。
「とりあえず話はこんなところか?」
「そうね。他には特にないわ。」
「一応話をまとめると・・・ユキとは数日おきに会う。俺はユキのプライベートルームに直接転移する。そして俺に関する情報はユキが責任を持って統制してくれる。って事で大丈夫?」
「ええ、秘密はちゃんと守るから安心して。私も助けて貰うんだから当然よ。」
書面には残ってない口約束だが、王女であるユキの言質だ。問題ないだろう。
「そしてナギとジーヴスについては、イニステラの屋敷においておくと危険が及ぶ可能性がある事を鑑みて、これからはミスミルドの屋敷に滞在してもらう。ただし仕事は今まで通りイニステラの屋敷の管理。ってことでいいね?」
「わかったよ!任せて!」
とは言っても流石に毎日ユーフレインで仕事して貰うわけではない。あくまでアキがユーフレインで活動する日に連れて行って、向こうで仕事して貰う感じだ。ナギ達を向こうにおいておくのはリスクがある。だから仕事もアキがユーフレインに行く時だけだ。
つまりアキがユーフレインに行かずベルフィオーレに居る日は、ナギ達はオフと言う事になる。自由にしていて貰って構わない。ユーフレインに行く頻度は大体数日に1回だから、実働時間は週2~3日と言ったところか。
ただナギ達がそれを納得するわけがない。絶対「もっと仕事させて!」と文句を言ってくることは目に見えている。
もちろんその対策はある。
「でも俺がイニステラに行かない日は、ナギ達もこっちに居てもらう。仕事はあるから安心しろ。というかシャルちゃんに聞いてくれ。シャルちゃん、任せていい?」
秘技、うちのメイドに丸投げ。対策でも何でもない気がするが、まあシャルに任せておけば問題ないだろう。この子はアリア並みに優秀だしな。
「はい!もちろんです!」
「ありがとう。ユミーナちゃんについてはこっちの屋敷でメイドをして貰う。シャルちゃんの下で色々覚えて欲しい。ジーヴス、それでいいか?」
「はい。問題ございません。最高の環境でございます。」
「ユミーナちゃんも大丈夫?」
「はいですー!アキお兄ちゃんのメイドさん頑張ります!」
ユミーナがこっちの屋敷でメイドをしてくれるのは正直嬉しい。ずっとあの屋敷をシャル1人に任せっきりだったので申し訳ないと思っていたのだ。アリアもメイドではあるが、アキにつきっきりだしな。それにシャルとユミーナは年も近い。きっと2人はいい友達にもなれるだろう。
ただユミーナがシャルのような性格にならないかだけは心配だ・・・
「シャルちゃん、ユミーナちゃんの事、よろしくね。頼むよ?」
「はーい!ちゃんとアキさんの凄さを教えますね!」
違う、そうじゃない。アリアとシャルだけで毒舌メイドは十分なんだからユミーナは普通に教育してくれ。
「まあ・・・任せるよ。」
もうなるようにしかならないだろう。シャルに一任しよう。
「それより昼飯にしようか。空腹で限界の子が俺の膝にいるしな。」
さっきからルティアがアキの膝の上でずっと涎を垂らしながらご飯を見つめているのは知っていた。アキの話が終わらないからずっと我慢してくれているのだが、さすがにちょっと可哀そうになってきた。
「ん!たべる!」
「ちゃんと待てて偉いぞ、ルティア。」
子供をあやすようにルティアの頭をくしゃくしゃと撫でてやる。ちなみにこれで17歳なのだから吃驚だ。ある意味この子はシャルやユミーナより子供っぽい。
「えっへん!」
可愛い。まあこれがこの子のチャームポイントだろう。影でいる時は心強い、アキを全力で守ってくれる。情報収取能力も隠密能力もずば抜けて凄い。だがこうしてアキに甘えている時は子供のように幼く、小動物のようになるのがルティアだ。
「じゃあ食べよう。」
「「「「はーい!いただきます!」」」」