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「それで話の続きだけど・・・奴隷には種類があるの。犯罪奴隷、戦闘奴隷、借金奴隷・・・とまあ色々あるんだけど、奴隷商が扱うのは主に借金奴隷よ。」
以前アキはミルナ達に奴隷の種類について説明した。だが本当にそう言った種類の奴隷が存在しているのは知らなかった。アキのはあくまで小説や歴史からの知識だ。それにサラも種類については特に言及していたなかった。
「借金奴隷しか扱えないって決まりなのか?」
「いえ?他の奴隷は扱い辛いからって意味よ。犯罪奴隷や戦闘奴隷なんて買う人いないでしょ?だから奴隷商も仕入れない。まあそういう奴隷は国が一括で買い上げて適当に使い潰すんだけどね。」
なるほど、納得のいく理由だ。
「借金奴隷はお金に困って奴隷になるから色々扱いやすいのよ。戦闘力も基本的にないしね。戦う力があるなら奴隷にならずにハンターにでもなってるわよ。」
そして犯罪する度胸があるなら、奴隷に堕ちる前に犯罪に手を染めている。ユキは明言しなかったが、そう言う事だろう。まあ自分の国で犯罪が横行している事実を口にするのは憚られる。
「そういやナギは一回契約違反で差し戻されてたな・・・それも珍しいのか?」
「え?そうなの?その子・・・よく生きてるわね。普通もう死んでるわよ。大抵の奴隷商は再教育なんてめんどくさがってしない。大抵は殺すか娼館にでも売り飛ばして終わりよ。」
「ナギ・・・よかったな、お前の奴隷商がサラで。」
「うん!うん!よかった!」
ナギは千切れるのではないかという勢いで首を縦に振っている。
というかここまでくるとナギの運はある意味奇跡だ。サラという良心的な奴隷商に拾われ、反骨精神満載の奴隷だったにも関わらず、殺される事なく大事に扱われた。そしてアキに買われた。なんというか凄い運だ。
「でもアキさん、彼女が犬獣人でなかったら買ってませんよね?」
そう言えばとベルが思い出したかのように口にする。
「確かに・・・わんこじゃなかったら買ってなかったかも。」
確かにあの時「犬だ!買う!」と滅茶苦茶テンションが上がった覚えはある。
「私わんこで生まれてきて本当によかった!わぉーん!」
天を仰ぐように雄叫びを上げるナギ。
「ちなみにユキ、ジーヴスの場合はどうなんだ?」
「そうね、彼の場合だったらそこの孫娘?の子が房事をさせられるんじゃないかしら。彼の方は適当に雑用させる感じになると思うわ。その子は奴隷じゃないにしても、適当に理由をつければ済むことだしね。」
「アキ様のお眼鏡に叶った事、サラ様に拾われた事、深く感謝致します。」
ジーヴスもあまり奴隷の実情は知らなかったらしく、しみじみと呟く。
「それでユキ、解放も出来るって言ってたよな?」
「ええ、一応そういうのはあるわ。機能してないけどね。解放する主人なんていないし、その前に奴隷が壊れるもの。でもアキが解放するって言ってその子達が了承すれば出来るわよ。」
なるほど、出来るのであれば解放はしておいたほうがいいかもしれない。
「じゃあナギ・・・」
「やだ!私はアキの奴隷がいい!奴隷でいたい!」
「いや別に奴隷でなくともメイドとして雇うぞ?」
「やだ!」
何故そこまで頑なに拒否するのだろう。今の奴隷の実情を聞いて奴隷でいたいとは思わないはずだが・・・
「アキ、わかってあげなさい。奴隷じゃなくなったら其方にいつに解雇されてもおかしくないのよ。奴隷でいる限りは安心できる。そう言う事よ。それに其方、この子達に秘密厳守の誓いもさせてるのでしょ?奴隷じゃなくなったら適応されないわよ?」
あ、こらユキ、余計な事を言うな。
「アキ!解放したらアキの秘密を大声で言いふらすからね!!!」
ほら、こうなるだろう。
アキはユキを睨むが、ユキはしてやったり顔だ。
「わかったよ、ナギがそれがいいならこれからも俺の奴隷でいてくれ。」
「うん!ずっといる!ねえ・・・アキじゃなくご主人って呼んでもいい?」
「ああ、うん、好きにしていいよ。」
「やった!ご主人!これからもよろしくね!」
もうナギが喜んでくれるのならそれでいい。いつもちゃんと仕事してくれているし、秘密もしっかり守ってくれている。そもそも秘密厳守の誓いといても拘束力があるわけではない。破ろうと思えばいくらでも破れる。だからナギに感謝はすれど、文句はない。
「ジーヴスも奴隷のままでいいのか?」
「はい、問題ございません。今後ともユミーナ共々よろしくお願い致します。」
「こちらこそよろしく頼む。」
ナギやジーヴスの事についてはこれで問題ないだろう。今晩にでもユーフレインの屋敷を引き揚げさせるとしよう。
「しかしこれで明日から『仕事、仕事』言われなくて済むな・・・」
「それは別!仕事はしたい!仕事はいっぱい欲しい!」
駄目らしい。
まあナギ達がこっちにいてくれるのであればそれは何とでもなる。ベルフィオーレなら買い物だって頼めるし、いくらでも仕事はあるだろう。
「わかった、わかった。」
「えへへ、ありがと!」