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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二十七章 ベルフィオーレとユーフレイン
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「わかった。でも俺から1つ提案。ナギもジーヴスもこっちに住め。住むのはこっち、仕事はイニステラ。それなら問題ないだろ。」


 というかこれしかないだろう。もう色々バレたのだから今更ユーフレインに住まわしておく必要もない。屋敷の管理さえして貰えればいいのだから、夜はベルフィオーレ、昼間はユーフレイン。これでいい。


「い、いいの!?」


 ナギが目を見開いて叫ぶ。


「ああ、ナギは俺の奴隷だからな。奴隷の願いを叶えるのも雇い主の役目だろ。」

「やった!嬉しい!アキありがとう!」


 花が咲いたような笑顔を浮かべるナギ。


「でもいいのか?イニステラに行ける頻度は減るけど?」

「全然いいよ。私、別にあの国に思い入れないもん。」


 ナギの言葉にユキがどこか複雑な表情を浮かべている。まあ自分の国を「思い入れない」と言われたのだ、あんな顔にもなるのも仕方ない。


「あ、ねえねえ、アキ?もしかして毎日お仕事くれなかったのも、夜に私達を別の屋敷に帰らせてたのも・・・こっちに戻ってきてたからなのかな?」

「うん。そうだよ。」

「なるほどね!それなら納得!」


 しかしこれでアキとしても肩の荷が少し降りた。こちらの事情もある程度わかったはずだし、「仕事ちょうだい!」ともうナギも無理に言ってこないだろう。何より変にナギ達に隠し事をしなくて済む。


「これからもよろしくな、ナギ。」

「うん!っていうかもう一生ついてく!ずっとアキの奴隷でいる!」


 別にそこまでの決意は必要ないんだが。ナギが奴隷からの解放を望めば解放するし・・・ってそれは出来ないんだったか。


「そう言えば奴隷って解放出来るの?」


 奴隷商であるから奴隷の解放については聞いていなかった。


「え?出来るわよ?其方そんな事もしらないで奴隷買ったの・・・?」


 ユキが呆れ顔だ。


「あの時は奴隷を解放するかどうかなんて考えてなかったからね。そもそもこの国には奴隷制度がないんだから知らなくて当然だろ。」

「なるほど、それもそうね。ちなみに解放は主人と奴隷が合意したら出来るわ。もちろん出来ない場合もあるけど・・・其方は奴隷についてどこまで聞いたのかしら?」

「奴隷の人権が確保されていてる事や・・・まあ基本的なとこだけだよ。」

「ふーん・・・そうなのね・・・じゃあ私が少し教えてあげる。」


 ユキが話してくれた内容はちょっと衝撃的だった。


 簡単にまとめると、ユーフレインにおいて奴隷の人権は別に確保されていな

いらしい。サラが説明してくれたのはただの綺麗事だったようだ。もちろんサラが嘘を吐いていたわけではない。サラが言っていたようなルールは実際にはある。だがそれが守られているかというと微妙なところらしい。


「其方の知り合いの奴隷商はサラと言ったかしら?」

「うん、サラだよ。」

「彼女の事は信頼してもいいわ。真面目な奴隷商よ。其方が受けた説明は何も間違っていない。でもああいう奴隷商の方が珍しいのよ。」


 どうやらユーフレインの奴隷の実情は酷いものらしい。サラは奴隷を好きに扱う事が出来ないと言っていたが、実際は好き勝手にやっている主人が多い。奴隷契約に違反したら主人も罰せられるのだが、その法律はほとんど機能しておらず、奴隷商が上手く誤魔化して処理してしまうんだとか。まあ奴隷商としては奴隷が売れれば儲かるのだからそうなるのも当然かもしれない。


「雇い主は奴隷を壊しても新しい奴隷を買えばいい。奴隷商としては奴隷が売れるから儲かる。だから雇い主と奴隷商が結託して法なんて破る。そんなところ?」

「ええ、そうよ。サラが奴隷商として成り上がれないのはそういうところね。他の奴隷商はルールを無視して稼いでいるんだから勝てるわけがないもの。」


 そう言えばサラは必ず誰かに足を引っ張られるとも言っていたな。


「サラはいい意味で真面目って事か。」

「そうね。」

「でもこんな話をユキが平然と話したら駄目だろ・・・」


 奴隷制度がちゃんと守られていないのであればユキはそれを是正する義務がある。


「わ、わかってるわよ・・・わかってるから苛めないで・・・」

「ごめんごめん、これから頑張るんだもんな。」

「そうよ。ちゃんとするわよ。」

「しかしナギは良い奴隷商に拾われて幸運だったんだな。」

「ええ、そうね。あと其方のような主人に買われて・・・本当に運がいいと思うわよ?ナギのような女奴隷は大抵慰み者にされて、壊される事がほとんどだもの。」

「ひぃ!?」


 ナギが悲鳴をあげ、テーブルの下でプルプル震えている。可愛い。


「ナギ、俺はそんな事しないからな?」

「う、うん・・・アキの事は信じてるし・・・大丈夫。私は本当に運がよかったのね・・・」

「そうね。こんな良い主人、普通いないわよ?」

「アキありがとおおおおお!」


 今度はナギが目に涙を溜めながら抱き着いてきた。


 しかし奴隷制度の実情がここまで酷いとは思わなかった。まあ実情がどうであれ、アキの奴隷に対する扱いは変わらないが。というかユキが言ったような扱いをナギにしたらアキがミルナ達に殺される。

挿絵(By みてみん)

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