23
「エレンやリオナもお腹空いた?」
ベルやミルナだけでなく、当然他の子達も全員ユキとのミスミルド散策について来ている。まあ彼女達が大人しく留守番するわけがないのは分かっていた事だ。
「え?うん、まあ・・・そうね?」
「空いたと言えば空いたかな?」
控えめな態度のエレンとリオナ。
可愛い。ミルナも少しはこの奥ゆかしさを見習って欲しいものだ。
「じゃあご飯にするか。そう言えばシャルちゃん達、近くにいないかな?」
アキが屋敷を出る時、シャル達はもう屋敷にいなかった。
きっと先に街へ出たのだろう。
「ん、アキ、探す?」
ルティアがいつの間にかアキの背中に貼り付いている。
相変わらずいいタイミングで出てくる子だ。
「合流できるなら一緒にご飯を食べたい。ルティア、探せる?」
アキは何か目的があって街を出歩いているわけじゃない。ユキが街を見たいと言ったので、適当に案内しているだけだ。だからせっかくご飯を食べるなら、全員で食べたい。その方が絶対に美味しい。それにナギやジーヴスに今後の話もしたいしな。
「ん!余裕!」
それだけ言うとルティアはいつものようにスッと姿を消す。シャル達を探しに行ってくれたようだ。
あとはもうルティアに任せておけば問題ないだろう。とは言ってもミスミルドの街からシャル達を探し出すのはいくらルティアでも時間がかかるはず。
それならルティアが戻ってくるまでミルナ達と買い物に洒落こむとしよう。
「じゃあ洋服でも見に・・・」
服と言った瞬間、ミルナ達の肩がピクンと跳ねた・・・気がする。
「ユキさん!ユキさんのお洋服を選びませんこと!私達はもう十分ですわ!」
ミルナが必死だ。他の子達も「それがいい」「名案ね」と声を揃えて叫ぶ。
「え?え?私?」
不思議そうに首を傾げるユキ。戸惑っているようにも見える。
まあそうなるだろう。いつもならミルナ達は「私と!私と!」と文句を言ってくるのだからユキが驚くのも当然だ。ベルも「他の王女となにしてるんですか!」なんて一言も言う事なく、「それがいいです」と素直に納得している。
しかし凄い。ミルナ達のやつ、一瞬で全部ユキに押し付けやがった。
この子達はアキとの買い物に関してはこうやって全力で回避しようとしてくる。どうやらアキと一緒に洋服を買いに行くのは精神的に色々疲れるらしい。おかげで最近ミルナ達は全然買い物に付き合ってくれない。疲れる程に着せ替え人形してないと思うのだが・・・まあ今日はユキという人形をゲット出来たし、よしとしよう。
「そうと決まれば・・・」
「アキ、ただいま。」
気付いたらルティアがまた背中に貼り付いている。
あれからまだ数分くらいしかたってないんだが?
「・・・はやいね?」
彼女が戻ってきたと言う事は、シャル達を見つけたと言う事だ。
いや、それにしても早すぎないだろうか。
「私、有能!」
確かに有能だ。ただ、今アキは「買い物にいくぞ!」とテンションをあげたところなんだが。出鼻を挫かれた感が半端ない。しかもミルナ達は「ルティアさんよくやりましたわ!」と何故かルティアを褒め称えている。
そうか、そんなに嫌か。
「ミルナ達が冷たい。俺は悲しい。」
「ち、違いますわよ!これはそのなんていうか・・・別にアキさんとお買い物行くのが嫌というわけでは・・・ないんですのよ?」
しどろもどろになりながら必死に言い訳するミルナ。何故疑問系なんだ。
「じゃあ今度付き合ってよ。」
「うー・・・わかりましたわ・・・でもちょっと!ちょっとだけですわよ!」
よし、言質は取った。
「エレンやリオナもいいよな?」
「わ、わかったわよ・・・」
「ちょっとだけだからね!」
「アリア達もな?」
「アキさんの頼みなら喜んで・・・で、でも程々にお願いします。」
「歯切れが悪いぞ、アリア。」
「き、気のせいです。」
渋々と言った感じだが、全員OKしてくれた。まあアキが本気で頼めば、この子達は断ったりはしない。なんだかんだで首を縦に振ってくれる。
「アキ?いまから買い物いく?」
「いや、行かない。ルティアがシャル達を見つけてくれたならご飯にしようか。」
別に行ってもいいのだが、食いしん坊のルティアが悲しむ気がする。
「やった。たべる。」
「おう・・・嬉しいのはわかったから背中で暴れるな。」
そんなに喜ぶ事だろうか。まあ・・・ルティアだし仕方ないか。
「店はこの前行った店にしよう。」
エリスとルティアと行った爺さん御用達のあの店だ。あそこなら個室もあるし、色々と話が出来る。この人数であの店に行くとなるとかなりの出費だが、他に金を使うところもない。偶にはいいだろう。
「とりあえずシャル達に合流するか。ルティア、どこに行けばいい?」
「ん、あっち。」




