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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三章 アリステール
55/1143

22

 無事爺さんとの食事会も終わったので、アキ達は自分達の屋敷へ引き上げる。アキは早速ソフィーと「お話」するので彼女を自室へと呼んだ。


「お邪魔しますー。」


 ソフィーが嬉しそうに部屋に入ってくる。とりあえずソファーに座るようにと促す。自分もソフィーの横に座るが、彼女は急に体を預けるように寄り添ってくる。


「ソフィー、何してるんだ。」

「だめですかー?」

「まあいいけど。」


 とりあえず本題に入ろう。


「メイド連れて帰ってくればよかったなー、みんな可愛かったし。」


 敢えてソフィーを煽るような事を言う。予想通りソフィーはさっきと同じように即座に反応する。


「アキさん?何を言っているんですか?やっぱりメイドが好きなんですか?お話です、お話が必要なようですね。」


 アキは結構強めにソフィーの頭を叩く。


「ひゃん……痛い……。」

「ソフィーどうした、なんでそんな感じになった?」


 原因は大体わかっているが、一応聞くところから始める。


「え、どういうことですか?」


 本人は自覚がないんだろうか。そういえば以前彼女に仕草の注意をした時も自分ではあまり気づいていなかったのを思い出す。


「セシルと話してた時も、爺ちゃんとメイドの話をしてた時もソフィーは凄く怖い笑顔になってた。そんな笑顔するソフィーじゃなかっただろ。」

「あ……だって……その。」


 アキに指摘され視線を逸らすソフィー。一応やっている自覚はあったのか。


「例えば、俺がセシルと恋人同士になって2人で寝てるとこをソフィーが目撃しちゃったらどうする?」

「不貞?不貞ですか?そうなんですね、セシルさんと。なるほど。」

「その考えをやめんか。」


 再度ソフィーを強めに叩く。


「ひっ……痛いです……。」


 アキは頭を悩ます。そもそもヤンデレって治せるんだっけ?そんな知識はさすがにないし、本でも見た事がない。嫌われるよりはましなのだが……とアキは小さく呟く。さてどうしたものかと頭を抱えていると、アキの呟きを聞いていたソフィーが急に泣き出す。


「い、いやです、嫌わないで。嫌いにならないで……!」


 多分「嫌い」という部分だけが聞こえたのだろう。


「いや、嫌いにはならないから大丈夫だよ。」


 ソフィーに優しく諭す。


「だって……いま嫌いって……。」

「違う違う、『嫌われるよりは良い』って言ったんだよ。」

「ほんと……?」


 ソフィーが涙を拭きながら鼻声で確認してくる。


「ソフィーはそんなにブランの屋敷で『俺の女』って言われたのが嬉しかったのか?あれからだよね、ソフィーがそんな風になったの。」


 切欠となる原因は間違いなくあれだ。そしてその発言をしたアキが諸悪の根源なのでアキ自身も強くソフィーに出られない。


「え……あ、はい。あれで私気付いたんです。」

「何に?」

「アキさんの言っていた意味。親しい人にだけ笑顔を見せればいい、笑顔を上手く使い分けるって意味。だからアキさんにだけ見せることにしたんです。もう他の人はどーでもいいんです。私はアキさんの女なんです。」


 あれか、とアキは思い出す。アリステールまでの道中で夜営の時にソフィーと話した際、仕草や言動について注意をした。その時にソフィーはアキの意見を求めた。アキは社交辞令や愛想笑いを上手く使えばいい、大事な笑顔は大事な人にとっておけと言った。ソフィーに意味はすぐにわかるからと説明したが、どうやらわかり過ぎたようだ。というよりも効き過ぎた。


 あれからソフィーは自分の仕草や言動には注意するようになっていた。そしてアキは街に入ってから視線や風当たりを自分に誘導する為、ソフィー達に懐かれるように行動していた。褒めたり、撫でたり、思いっきり女の子扱いしたり。男性免疫があまりなかったソフィー。さらには彼女の純粋な性格も相まってアキの行動や言動が劇薬になったのだろう。とどめがブランの屋敷での件。属に言うとあれで「完全に落ちた」という事だ。


 どうしたものかとアキは逡巡する。


「ソフィーにそう言ってもらえるのは嬉しいよ。でもあれはあの貴族を脅す為に言った言葉だよ?」

「でも言ってくれました!私じゃダメなんですか!アキさんの女になれないんですか!」


 落ち着けとソフィーを宥める。


「うーん、なりたいの?おすすめしないよ?」


 アキは苦笑しつつソフィーに確認する。


「なりたいです!アキさんじゃないと嫌なんです!」

「ありがとう。それは嬉しいけど、今はダメ。」

「どうしてですか!」

「わかるよね?イリアの事があるんだから。」


 イリアの件が優先でそれ以外の事に現を言っている暇はないはずだと彼女に説明する。気持ちは嬉しいが、違うだろうと優しく諭す。


「ソフィーはイリアの事はどうでもいいのか。」

「そんなわけないです!」

「でしょ?それにソフィーは今まで男性への免疫がなさすぎるから急に優しくされて勘違いしてるだけじゃない?」

「違います!そのくらいわかります!」


 とりあえず今はそういう事を考えている時ではない。目的を達成して終わってから考えればいい。まずはイリアに全力で当たるべきだろう。


「兎にも角にもイリアの件を終わらせてからだ。」

「……はい。」


 一応理解はしてくれたのかソフィーは同意する。


「イリアの事が無事に終わって、もしその時まだソフィーの気持ちが変わらないなら改めて言ってくれないかな?その時はちゃんと良い返事が出来ると思うし。」


 アキはソフィーを優しく撫でる。この後アキは彼女達をSランクにするのに色々やる。その後もイリアを助ける為に汚い事もするだろう。だからいつ嫌われてもおかしくないと思っている。だが全てが終わって、それでも彼女がアキの傍に居たいと言うのであれば受け入れるのは吝かではない。


「それじゃダメか?」

「ううん、それでいいです。」


 ソフィーは小さく呟き、アキに抱き着いて優しく笑う。


「覚悟してください。私って頑固なんですから。一度決めた事は変えませんよ?」


 やれやれと思いアキは苦笑する。


「俺が他の子を好きになったらどうするの?」

「そ、そんなんダメ!と言いたいですが……まあ遊びでないなら許します。ダメではないですがちゃんと私も見てくれるならいーです。」


 許しますとか完全に正妻モードなんだがと頭が痛くなる。ちなみにこの世界は一夫一妻制ではないので、一夫多妻だろうが一妻多夫だろうが当人達が納得しているのであればなんでもいいらしい。アキに複数の女性を養う甲斐性があるかは疑問ではあるが。とりあえずソフィーのヤンデレ化は止められたと思う。


 後は扉の向こうの連中にも一言いっておかねばとアキは部屋の扉に近づき、一気に開ける。


「きゃっ……!」


 扉に寄りかかって聞いていたのかエレンが倒れこんでくる。その後ろでレオとミルナが「あはは」と乾いた笑い声をあげる。ソフィーは会話を聞かれていた事に顔を真っ赤にして固まっている。


「で、君達は何をしてるのかな?」


 アキがミルナを睨むと慌てて言い訳を始める。


「ち、違いますの。これは、その、あれですわ。えっと……誘惑しに来ました!」


 アキはミルナの頭を軽く叩く。


「もっとましな言い訳しろ。昨日の今日だろ。」

「うう……」


 次はレオとエレンを見る。


「あ、あんたがソフィーに変な事しないように見張っていたのよ!」

「で、したのか?」

「し、してないわよ!……痛っ……うぅ、なにするのよ……。」


 エレンにも一撃入れて反省しろと言う。自分でも悪い事をしている自覚があるのかシュンとして押し黙る。


「一応聞くけど、リオナは?」

「えーっと……ソフィーとアキが気になって盗み聴きしてた、ごめんなさい。」


 正直に謝って頭を下げる。アキはレオの頭上に手をかざす。レオは殴られると思ったようで、尻尾がしゅんとさせている。だが殴るのではなくレオを優しく撫でる。すると自然と尻尾がパタパタと動くのがとても可愛い。


「リオナは正直でいい子だな。そう言えば別に怒らないのに。で、盗み聴きしに行こうっていったのは誰なのかなー?」

「ミル姉だよー。あとエレンもノリノリだった。」


 撫でられて尻尾を気持ちよさそうに振り続けるレオがあっさりとミルナ達を売る。


「レオ、裏切りましたわね!」

「ちょっと!何ばらしてるの!」


 アキはミルナとエレンの頬を片方ずつ容赦なく引っ張る。


ひゃいれすわ!(痛いですわ!)

らめなしゃ!(やめなさい!)


 2人はちょっと涙目になって頬をさすっている。


「で、どこまで聞いてた?」

「ま、全く聞こえませんでしたわ。」


 ミルナがぎこちない笑顔で笑う。


「あ、じゃあソフィーが俺の女になった事知らないのかー。」


 アキは適当に言う。ソフィーが後ろで狂喜乱舞しているが、さっきも言ったようにこういう冗談で暴走するなと突っ込みたい。


「話が違うわよ!アキはイリアの事が終わっ……!」


 そこまで言ってエレンは両手を口にあてる。鎌を掛けられた事に気付いたようだ。


「ほう、全部聞いてるんじゃないか。2人とも嘘を重ねるとはいい度胸だな。」

「ち、違うんですの!」


 とりあえず2人の頬をもう1回引っ張っておいた。いつまでも扉の前で話していても仕方ないので一先ず皆をソファーに座らせる。


「優先することがあるでしょってソフィーに話していただけだよ。」


 どうせ全部聞いていたんだろうからこれ以上の説明はいらないだろう。


「あ、あのじゃあアキさんは全てが終わった後なら……その、お、俺の女にしてもいいってことですの?」


 ミルナが恥ずかしそうにしながらも尋ねる。


「ソフィーにはそう言ったつもりだよ?ただし俺がその時そうしたいって思って、ソフィーもそうなりたいって思ってる場合ね。」


 それを聞いたソフィーが「大丈夫です、間違いありません」とガッツポーズしているが、アキは自分の気持ちは無視されるのかと頭を悩ませる。


「ふふ、それなら私も頑張ってみますわ。」

「僕も僕も!」

「わ、私も……頑張ってあげてもいいわよ……?」

「それは各自好きにして。」


 アキは諦めたように言う。


「とりあえず、全ては明日からだ。明日からは忙しくなるから覚悟するように。」


 忙しいから余計な事を考えている暇はないだろうし、今日くらいは皆の好きにさせよう。好きな事話して、好きな事して、笑っていてくれればそれでいい。


「では最後に景気付けにエレンが面白い事します。」

「ちょっと!何言ってるのよ!」


 エレンがいつもの様にテンポよく突っ込んでくれる。


「火を噴いて爆発します。」

「死ぬわよ!だから私をオチ使うなって言ってるでしょ!」

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