13
「アキ!この変態!何ソフィーにくっついてるのよ!」
エレンやレオと無事合流したのはいいが、ソフィーがまだアキから離れないのでエレンに怒鳴られている。
「聞いてくれ、解き放たれた猛獣よ。」
「その名で呼ぶなー!」
「エレン、違うの。」
ソフィーが助け舟を出してくれる様子。
「な、なによ。」
「私はアキさんの女なんです。だからくっついていてもいいんです。」
「ミルナだけじゃなくソフィーにまで手を出すなんて!変態、変態、変態!」
助け舟どころか悪化させるようなこと言うなよとアキは呆れる。
「ミルナに手出したっけ?」
「はい、だされましたわ。」
ミルナはうふふと笑いながら答える。
「嘘つけ、この露出狂。」
「その呼び方だけはやめてください……。」
すいませんでしたとミルナが素直に謝る。黒歴史を量産し続けているミルナは弱点が確実に増えていっていると思う。十分に貯まったら製本してプレゼントしてやるとしよう。
「アキの変態!」
エレンがうるさい。しかも変態しか罵る言葉が思いつかないらしい。とりあえず彼女を諫める。エレンはすぐに怒るが、なんだかんだちゃんと対応してあげるとすぐに素直になってくれるので扱いやすい。
「ソフィーもいい加減離れて。今日はまだまだやる事あるんだし。」
「えー……。まぁ、しょうがないですね、わかりました。」
渋々ながらもアキから離れるソフィー。
「ところで依頼報告の方は無事終わったんだよね?」
レオがアキに尋ねる。
「うん、平和に終わったよ。ソフィー見ればわかるだろ?」
「なるほど、確かに大丈夫だったみたいだねー。」
ミルナが後ろで「あれのどこが平和なんですの、アキさんの平和の定義ってなんですの。」と頭を抱えているようだが気にしない。
「じゃあアキ、これからどうするの?」
「みんなにはとりあえず俺の買い物に付き合って貰いたい。いい?」
「うん、いいよー!」
昨日とは違いレオも今日は周りを気にせずアキに普通に話しかけてきてくれる。昨日の話をちゃんと覚えているのだろう。とりあえず買い物に付き合う事に4人とも異論はないようなので、早速商業地区の方へ歩みを進める。
「まず服を見たいんだよね、ミルナ、頼む。」
「はい!任せてください!最高のをお選びしますわ!」
ミルナが口早に捲し立てる。選んでくれとまで言った覚えはないのだが、ミルナがやる気なので自由にさせよう。他の子達はやれやれという表情でミルナを見つめている。
「まあ、落ち着け。同時にやりたい事があるんだよね。俺が言う条件に当てはまる店に連れて行って欲しいんだ。」
「取り乱してすいません……どのような条件でしょうか?」
「まず規模が大きい商会であること。他の街、できたら他国にも展開している大きいところ。そして出来たらでいいけど、服以外も扱っている商会であること。」
「そうですわね……その条件ですぐ思いつくのは大商会である3つですわ。上から順にトリニア商会、ゼクス商会、ミレンド商会になりますわ。どこの商会も服屋に加えて他の商店も様々な街で展開しております。」
「なるほど……衣服から大きくなった商会はある?」
「それでしたら3番目のミレンド商会ですわ!ここの服は私大好きですの!是非ここに行きましょう!ちょうどいいじゃないですか!」
相当その商会が扱う服が好きなのか、ミルナが壊れる。その様子を見たソフィーが隣で苦笑いしている。見慣れた光景なのだろう。
「服の事になるとミルナはいつも壊れるの?」
一応エレンやレオにも聞いてみた。
「ええ、アキ、諦めるのね。」
「僕はもう慣れたよー。」
2人は呆れを通り越して見守るという境地に達しているようだ。
「話が進まないから落ち着け。他の2つは?」
ミルナの頭を軽く叩いて落ち着かせる。
「す、すいません。トリニア商会は日用品ですね、生活雑貨など。ゼクス商会は家具や調度品類から始まったと聞きます。多分ですが。圧倒的にそれ関連の店舗が他に比べて多いので。」
「そして各商会は得意な分野からどんどん色んな商品に手を広げて、商会としては3大手になった感じなんだね?」
「そうですわね、他にも商会はありますが衣服を扱っていてアキさんの言う条件に当てはまるのはこれくらいですわ。」
「ちなみにミルナはそのミレンド商会の服はよく買うの?」
「いえ……高いので眺めるくらいですわ。頑張って貯めて1着くらいは買いましたが今の私たちの懐事情ではとても……。」
そこまで悲しそうな顔しなくても。どれだけそこの店の服が欲しいんだ。
「あとは個人店くらいか……個人じゃ規模的に厳しいし、その3商会の店を回ろうか。皆悪いけど買い物に付き合ってね。」
「はい!今すぐ!……っ痛い!」
ミルナがまた壊れかけたので、今度は強め一撃をミルナの頭に入れる。
「ミルナってポンコツなところ多いよね。しっかりしてるように見えるのに。」
「そ、そんなことないですわ!」
「だって誘惑が下手だし、魔法詠唱ですぐ照れるし、エロい知識が壊滅的だし、服の事になると壊れるし、誘惑がお笑いだし。」
「なんで、誘惑だけ2回言うんですか……。」
「大事なことを2回言うのは世界の摂理だ。」
「よくわかりませんが、止めてください……。でも確かにそう言われると本当に私ダメダメですわね。自信がなくなりましたわ。」
ミルナが肩を落とす。
「レオ達には俺と会う前のミルナはどう見えてた?」
3人に確認する。すると、ミルナはしっかりしたお姉さんで、常に何事にも動じないような印象を持っていたとソフィーが語る。偶に弱くて泣き虫になるけど、それは自分達の前だけで外にいる時は凛としていたとエレンやレオが言う。
「今は?」
「えー……うん。意外に弱点多いんだなって思ったかな。でも僕、それはアキのせいだと思うんだけど。」
レオが言いづらそうに答える。アキのせいと言えばそうだが、元々あった弱点を浮き彫りにしただけだ。今まではそこを突いてくる連中が偶々いなかった。けれどこれからも無いとは言い切れない。
「ミルナ逆に考えよう。弱点がわかったんだと。別に直す必要はないよ。それがミルナのチャームポイントでもあると思うし、俺は好きだ。ただ把握しておかないといけない。弱点を見せてもいい相手ならいいけど、見せたら不味い時は隠さないといけないわけだしね?」
「はい、わかりました。」
ミルナが素直に聞き入れる。その後しばし逡巡して、彼女はアキを正面から見据えて口を開く。
「今日はアキさんは私に学べと言いました。だからわざと色々言ってくださるんですよね。交渉の時に横においてくださるだけじゃなく、敢えて意地悪な事言ったりして私を動揺させたりしているんですよね?」
「いや、意地悪したいだけだよ。」
適当に誤魔化す。意地悪したいのは半分本当だ。
「ふふ、そういう事にしておいてあげますわ。」
ミルナがいつものように笑う。でもどこか楽しそうで吹っ切れたような笑顔だ。




