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アキとミルナがブランとの出来事の反省会をしている間、ソフィーはずっとアキにくっついていた。アキの腕に自分の両腕を絡ませて離さなかった。
「今なら少しわかります。」
ソフィーが小さく呟く。
初めてアキを見たときは彼がよくわからなかった。ミルナやエレンと話しているのを見て悪い人ではないだろうと思ったくらい。チームに賛成したのは皆も賛成しそうな雰囲気だったし、彼の才能があればイリアのところへ辿り着きやすくなると思ったから。
「でもいつからかな……懐いちゃったの。」
少し一緒に居ただけでソフィーは彼に懐いた。自分を見る目が汚くなかったのが切欠だったのかもしれない。普通の人を見るくらいの感覚で話しかけてきてくれた。女の子だから、可愛いから、胸があるから、そういう理由ではなかった。彼にも彼の目的があったので自分達を女として見なかったのかもしれない。どんな理由だったとしても、彼のソフィーを見る目が懐く理由の1つだったのは事実だろう。
それに彼はソフィーの事を可愛い可愛いと言いつつも下心がある目で見てこなかった。あるのかもしれないが、ソフィー達が感じないのだから問題ないと思う。普通に、純粋に、女として可愛いねと褒めてくれる。
「えへへ、私可愛いのかな?」
笑顔が可愛い、仕草が可愛い。自分も女の子だし、やっぱり純粋な気持ちで言われるのは嬉しい。あと彼は注意してくれた。ソフィーの仕草や表情が男を勘違いさせていると。自分ではわからなかった、自分のせいで勘違いさせていたなんて。そのままソフィーが知らないのをいいことに自分を利用することも出来ただろう。でも彼はそれをしなかった。優しい人だと思った。ただその時に彼が言った「笑顔を使い分ける」下りはよくわからなかった。すぐわかると言ってくれたけど。
「それから仕草とかにはちょっと気を付けるようになったっけ……。」
街に入ってからも彼は堂々としていた。寧ろ楽しんでいた。自分達がいつも不快に思って嫌悪している視線を浴びても面白がっていた。おかしい人。でもそのおかげでソフィーは街でのひと時を楽しむことが出来るようになった。他にもきっとアキが色々としてくれたのだろう、自分にはわからないような複雑な事を。
でもそんな風当たりを受けても、悪口を言われても、全く反応しなかったアキだったけど、ソフィー達の事になると本気で怒ってくれた。それが嬉しかった。自分達に向けられる不快な視線の事、指名依頼の事、そして今回の貴族との事。もうだめだと思った、泣きそうだった。そんな時でも彼は優しく手を握って安心させてくれた。そして気づいたら解決してくれていて、何事もなかったかのように今もミルナと話している。
もういつ彼の事が気になっていたかはわからない。もしかしたら最初からかもしれない。皆が言っていたように確かにどこかイリアに似ている。いつの間にかみんなに慕われていて頼りにされているアキ。確かにそういう意味ではどことなく似ているかも?でもいつからなんて別にどうでもいい。気づいたら気になっていて、気づいたらもっともっと好きになっていた。それでいい。
今ならアキが言っていた言葉の意味が少しわかる。「ソフィーの一番の笑顔を見せるのは親しい人や大事に思ってる人だけにすればいい。」彼はそう言った。最初は、笑顔は笑顔としか思っていなかったけど今ならわかる。「俺の女」だって言われ時、この人以外にその時の顔を見られたくなかった。だから抱き着いた。アキにしか見せたくない。アキだけに見て欲しい。自分が恥ずかしそうに笑うところ、嬉しそうに笑うところ、泣きそうになりながらも笑うところ。他の人に見せるなんて勿体ない。
「アキさん、そういうことですか?」
ソフィーは心の中で確認する。勿論返事はない。
そろそろエレンやレオとの合流場所だ。もうすぐこの時間も終わり。きっとこの姿を見たらエレンはまたアキを怒るだろう。でも安心して。怒られたら慰めてあげるから。ソフィーは小さく呟く。誰にも聞こえないように。
「だって私の笑顔は癒されるんですよね?私の一番の笑顔はアキさんにしか見せない事にしました。だからまた可愛いって言ってくださいね。」




