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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二章 魔素
27/1143

15

「今日はこの辺りまでにしましょう。」


 ミルナが一日の終わりを告げる。そしてソフィーとレオを斥候から呼び戻し、皆で野営の準備を始める。流れは昨日と一緒だ。


「みんな、お疲れ。今日もありがとう。」


 アキは基本的に何もしていないので、お礼だけは言っておこうと皆に労いの声をかける。


「いえ、アキさんのお役に立てなのなら嬉しいです!」


 ソフィーがタタタと小走りで近寄ってくる。


「ソフィーの笑顔は癒されるなー。」

「そ、そんなことないですよ……。」

「あら、私の笑顔では癒されないんですの?」


 ソフィーが恥ずかしそうに下をむいてモジモジしているのを見ていたミルナがわざとらしい笑顔でアキに尋ねる。


「黙れ、暗黒物質。」

「ちょっと、アキさん!今日は私に対して冷たくありませんか!」

「冗談だ。ミルナもお疲れ。でもまあ、それだけ仲良くなったってことで。」

「全く、調子いいんですから……。」


 なんだかんだミルナも楽しそうにしている。


「アキこそ頑張ってたよ、おつかれ。」


 レオはアキに労いの言葉を掛けてくれる。


「ありがと、レオ。じゃあ頑張った俺は今日、夕飯作らなくていいんだな?」

「うそうそ!アキなにもしてない!頑張ってないよ!」

「おい。」


 清々しいまでの手のひら返しにアキも呆れる。ちなみにエレンは会話に入りたいが切欠が思いつかないのかさっきからこっちをチラチラ見ている。


「エレン。」

「な、なによ!」


 エレンにはアキも話があるからちょうどいいと思い、呼ぶ。文句言いながらも素直に近づいて来てくれるエレンが微笑ましい。


「お疲れ。」

「べ、別に疲れてないわよ。」

「お手。」


 エレンは瞬時に反応してお手をしてしまう。考えるより先に体が動くタイプなのかなと思うアキ。エレンは自分が何を言われて何をしたのかしばし逡巡した後に気づく。


「な、なにさせるのよ!」

「はい、いい子いい子。」


 アキはエレンの頭を撫でる。


「だから犬扱いするなー!」


 ガルルと唸るエレン。正直獣人族のレオより犬っぽいのではないか。


「エレン、ちょっと食事の前に手合わせしてくれないかな。」


 急に本題にはいったアキにエレンはキョトンとする。


「いきなりどうしたのよ?アキじゃ相手になんないわよ。」

「駄目か?」

「べ、別にダメじゃないわ。」


 なんだかんだで頼めば快く承諾してくれるエレン。アキは礼を述べ、エレンの前から離れて10Mくらいの距離に立つ。


「本気でお願いしたい。」

「ええ、わかったわ。でも真剣でやるのは危ないわよ?武器はどうするの?」

「確かにそうだね、訓練用の剣でもあればいいんだけど。」


 模造刀みたいな殺傷力のない武器があれば最適だが……とアキは考える。


「ありますわよ、こちらお使いください。」


 ミルナがどこからか木でできた短剣を4本取り出す。


「だから毎度毎度どこから出している。」

「だからそれは乙女の秘密ですわ。」


 ミルナのからかうような返答にため息を吐くアキ。助かったのは事実なので感謝して短剣を受け取る。ミルナがエレンにも2本の短剣を渡す。


 改めてアキはエレンの前に立ち短剣を構える。


「では私が合図いたしますわ。」


 ミルナが片手をあげる。

 ソフィーとレオは座ってアキを応援してくれている。完全に観戦モードだ。


「よろしいですか?……では、はじめ!」


 ミルナが腕を振り下ろす。





 エレンはアキへの距離を一気に詰める。どう考えても昨日の今日で自分に勝てるわけがないのにアキは手合わせをお願いしてきた。彼の真意はわからないが、彼にお願いされてちょっと嬉しかった。でも手加減はしない、本気でとお願いされたから。手を抜いたら失礼だと思ったから。


 アキは動かないでエレンを見つめている。エレンは攻撃射程範囲に入るとまずは横薙ぎからと決めて右手の短剣を横に振るう。アキはエレンの横薙ぎの軌道に短剣を的確に割り込ませる。


「うそ!」


 読まれた?エレンはアキに防御されたことに驚く。今のは間違いなく本気だった。なのに昨日まで短剣を振ったことの無いアキに防御された。


 何故と思いながらもエレンは瞬時に次の攻撃にうつる。上段からの振り下ろし。だがそれもアキの短剣に防御される。エレンは一度後ろに飛び距離を取って短剣を構え直す。


「ふぅ……。」


 一度自分を落ち着かせる。手を抜いていたはずはない、だが慢心があったのかもしれない。気合を入れなおし、エレンは一度深呼吸する。


 次は決める。殺す気で行く。


 エレンは地面を全力で蹴る。アキにも見せた事のないエレンが一番得意としている短剣での6連撃。左手の短剣を真横に振る右薙ぎ、その反動を使い右手の短剣を斜め下段に向かって振り下ろす袈裟切り。遠心力でそのまま1回転して右手の剣で横薙ぎ、その後左手の剣での切り上げ。最後に両手を斜めに交差させる袈裟切りと切り上げの十字切り。


 カン、カン、カン、カン、カカンと木剣同士がぶつかる音が響く。


「なんでよ!」


 エレンは唇を噛んで感情を抑える。全て防がれた。冒険者ですらないアキに。Bランクの自分の剣が。


 もう1度!もう1度!


 エレンは短剣を振るう。次は何かが腕にあたる。それによって短剣の動きが一瞬だけ鈍り、今度はアキに避けられる。右、左と連撃をいれるが剣の軌道が思うようにいかずアキに当たらない。


 なんで?どうして?誰か教えてよ!


 エレンは必死に考えるがわからない、アキにどうして自分の剣が止められるのか。何故当たらないのか。そしてエレンは再び地面を蹴ろうとするが、アキの声に遮られる。


「もう無理、降参。」

「え……?」


 どうして?降参?待って、だって私まだ何もしてない!

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