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話を進めても問題ないとのことなので早速本題へと入る。
魔獣制度についての話をイル達にするかの判断はとっくに終わった。結構早い段階でこの人達なら大丈夫だろうという結論には達していた。先程のステラとのやり取りで十分に彼らの人間性は理解できた。
観察というのは何も直接話す必要はない。その人物が見ている物や表情を観察するだけでも十分だ。それが最愛の娘というのであればなおさらだ。ステラが必死にベルと仲良くなろうとしている姿を「頑張れ」と応援している両親の姿を見れば、イルとミリアの人物像は大体わかる。
王や王妃といった人の上に立つ人間は、感情や本心を隠すのが上手い。だから普通に話しても本心を見抜くのには時間がかかる。ただ娘を見る時の表情はそんな簡単には誤魔化せない。人間である以上、人の親である以上、大好きな娘への想いはどうしても出てしまう。
ちなみにステラ自身はわかりやすいので、直ぐに観察するのをやめた。彼女はベルのように真っ直ぐで真面目な子だ。ただエレンのように素直になるのがちょっと下手なだけ。
しかしやはりサルマリア王家も真面目な人達らしい。やはりこういった為政者の誕生は長年の魔獣召喚制度による副産物なのだろう。だがアキとしてはどの為政者も真面目過ぎてつまらない。汚い屑王子などをやり込めてみたいのに、これでは交渉術もなにもない。ただただ観察するだけで済んでしまう。
まあこんなことベルに言ったら一喝されそうだが。それならもうそういった為政者はいないと諦めて、ベルに「毒殺された王女様ごっこ」ならぬ「性根の腐った王女様ごっこ」でもしてもらおうか。
「ではまず、何から話すかですが……、これをご覧ください。」
説明するより見てもらったほうが早いかもしれないと思い、今回はオリハルコンを持ってきた。王家の彼らなら問題ないだろう。アキは早速オリハルコンを取り出し、抜刀してイル達に見せる。彼らは瞬時にそれがオリハルコンだとわかったようで表情が少し動く。
「まさかオリハルコンが出てくるとは……。」
イルが冷静さを保つように呟く。
「こちらはアイリス女王から貸与して頂いている物です。」
アキがそう言うと、サルマリア王家の3人は納得したように頷く。アキが女王をアイリスと呼んだ事やオリハルコンを貸与している事からミレーとの関係を見抜いたのだろう。そしてアキを彼らに紹介したエスペラルド王家との関係も理解したはずだ。まあそれはうちの王女様のアキへの懐き具合から一目瞭然だろうが。
「つまり話とはこの件です。そうですね、まずは順を追って話しましょう。」
何度目になるかはわからない事の経緯をイル達に話す。
まずはどうやってアキがこの件に気づいたか。
「ううむ……アキさんの観察眼あってこそかもですが、情報統制に穴があるのはいただけないですね。」
イルが難しそう顔をして唸る。
「エルミラ陛下も同じ事をいっておりました。」
次にアキがSランク冒険者になり、今まであった一連の出来事を省略することなく彼らに伝える。さらにはオリハルコンの使用方法、ルティアの事、そしてイリアの事。全てを説明する。最後にサルマリアに来た目的と理由を話して締めくくる。
「多少の推測も入っていますが、これが今わかっている事全てです。」
「いやはや……何をいっていいかわかりません。」
「少し考えを整理する時間も必要でしょうから一息つきましょうか。」
流石に情報量が多すぎるので、5分程休憩を挟むことにする。アキ自身喉も乾いていたし、丁度いい。
水を入れようと水差しに手を伸ばす。だがベルがいつの間にか準備していてくれたようで、既に水が注がれたコップを手渡してくる。王女がしていい事じゃないだろう。何やってんだか。
「悪いな、ベル。」
「アキさんの前では王女ではなくベルです。だからいいんです。」
「そう?」
ベルは私がやりたいだけですと言ってくれる。それならいいが。
せっかくなのでついでに気になっていたことも聞いておこう。
「ベルは大丈夫なの?今まで王城で大きい部屋に住んでメイドや執事がいたのに。俺といると全部自分でしなきゃいけないよ?」
今ベルの部屋はミルナ達と同じ平凡な個室だ。勿論一般的な屋敷の部屋よりは大きいし、爺さんの屋敷だけあって豪華だが、王城に比べたら雲泥の差だろう。それにメイドもいないし、自分の事は自分でしなければいけない。そんな環境だ。ベルにとってはこれが辛くないのかずっと気になっていた。
「全然です。私そんなのどうでもいいんです。私がこの世で唯一欲しいのはもうここにあります。それ以外は何もいりません。お金も地位もなにもいりません。」
ベルはそう言うとアキの手をそっと握ってくる。なんでこんなににいい子が自分を好いてくれているのか本当に疑問だ。いつも自分に自問自答してしまう。
そんなアキを見てベルがそっと微笑む。
「アキさんじゃないと嫌なんです。アキさんがいいんです。ずっとお側においてくださいね。」
「俺の表情から考えを読むのはやめなさい。自信なくなるから。」
「ふふ、まあ……それが出来るのは私達だけなのであきらめてくださいね。」
アキはベルが握ってくれた手をそっと握り返す。小さくて柔らかい彼女の手は温かくてとても落ち着く。意識して女の子の手を握っているからだろうか。少しだけ緊張してしまう。まあ今までミルナ達と手を繋いだ時は大抵どこかへ引っ張っていく時だけだったからな……。
「そろそろいいですか?」
ベルとの一時は名残惜しいが、そろそろ話を進めよう。
「うむ。そうですね、大丈夫です。」
イルが問題ないと頷く。
話は理解したので自分達に何を頼みたいのか遠慮なく言って欲しいとの事だ。質問があればその都度するので好きに進めていいらしい。
「わかりました。それでは何かを聞く前に、まずはこちらの資料をご覧ください。アイリス女王やエルミラ陛下にも見せた、新たなる政体の草案と魔獣政策の代替案です。」
「拝見しましょう。」
イルは書類を受け取り、目を通し始める。ミリアとステラもイルが見終わったものをそれぞれ黙読していく。
今回もあれを頑張って書き出した。うちの子達の「遊んで遊んで」の誘惑を振り切りながら必死に書き出した。しかしいい加減毎回書き出す作業に対して何かしらの報酬をもらってもいいのではないだろうか。
「なるほど……ミリアステラよ、どう思う。」
「ええ……そうですね。理にかなっています。」
少しだけ悔しそうな表情を覗かせるイルとミリア。おそらくエルミアやアイリスと似たような感情を抱いているのだろう。
「アキさん!すごい!アイリーンベル王女殿下、やっぱアキさんください!」
「ダメっ!絶対ダメっ!」
ステラに関しては素直に感心してくれているようだ。そしてベルはアキを取られるものかと必死にアキの服を掴んでいる。
さっき王女はベルだけだと宣言したばかりなのだが。どれだけ必死なんだ。
「さて……ではまず1つ目の質問です。サルマリアとしての立ち位置を教えてください。あと現状をどう思っているのかを。」
おそらくエルミラやアイリスと同意見だろうが一応聞いておく。まあステラの表情を見れば聞くまでもないのだが……ちゃんと明確な言葉を聞いておきたい。
イルはコホンと咳払いを一つして宣言する。
「サルマリアは全面的に協力する事を約束します。ミレー、エスペラルドと同じと考えてください。そして現状のこの制度については当然納得していません。」
ミリアも凛とした表情で頷く。これが王妃としての顔だろう。
「王家としてとても申し訳なく思います。なによりこの子にこのまま国を渡したくはない……何か出来る事があればしておきたかった。そして出来る事が見つかりました。」
エルミラ達と同じように、今の国をそのまま受け継ぐのはやはり心苦しいようだ。まあ親としては当然だろう。汚点があるなら片付けたい。綺麗な状態の国を子供に残してやりたい。きっとそう言う事だ。
「アキさんの案、本来であれば私達が立案して施行しなければいけない。それが出来ない私達は統治者として失格です。きっとエルミラ陛下も同じ気持ちでしょう。」
苦虫を嚙み潰したような表情で言葉を紡ぐイル。確かにベルの両親もイルと同じ事を言っていた。だがそれは仕方のない事だ。アキの世界とこの世界は違う。異なる政体案を思いつかなくても当然だ。まあ統治者としては「仕方ない」で済ます事が出来ないのかもしれないが。
「ちなみに王族襲撃については?キーリについては……どう思いますか?」
「今はアキさんのお仲間でしたね?私達には何も言えません。むしろ謝れるなら国を統べる統治者として謝りたい。キーリさんがそうなったのも我が国の依頼が原因なのですから。」
イルが情けない事ですと呟く。そして同意するように頷くミリア達。
ちなみにミリアとステラは王であるイルの判断に異論はないのか頷くだけで会話には一切入ってこない。まあ妻や娘であったとしても、王を差し置いて判断をするわけにはいかないのだろう。
「わかりました、ありがとうございます。それだけ聞ければ十分です。では早速そのキーリに関連する事からです。サルマリアのオリハルコン、消えましたよね?」
「はい。」
イルが頷き、ことの成り行きを説明してくれた。
消えたオリハルコンは全部で6本。連絡を受けた当時は驚いたが、王家としては仕組みを止めるわけにいかないので、保管していたオリハルコンで補填。そして捜査はすぐに打ち切ったのだという。そんな対応でいいのかと思ってしまうが、まあオリハルコンなんて使い方がわからなければただの薄汚い金属だ。イルの対応も仕方ないと言えば仕方ない。
「この話を聞いた後だったら、イル陛下ももっと必死に探していたかもしれませんね。」
「ええ……確かに。でもアキさんの世界に飛んでいたのであれば多分問題ないですよね?わしも一安心です。」
アキが迷い人だという事は先ほどしておいた。そしてアキの世界に転送されたオリハルコンは6本確認されている。つまりサルマリアから消えた本数と一致する。
そしてイルの言う通り、アキの世界に転送されたのであれば悪用の心配はない。地球には魔素などないし、研究者によって今でも厳重に保管されているはずだ。必要であればアキの召喚魔法でこちらの世界に戻せばいいが、特にその必要もなさそうだ。むしろこの世界にあれは無い方がいいだろう。
「これはちょっと気になるから追加で聞いておきたいんですが、何故この国のオリハルコンに他国の紋章が入っていたんでしょうか。」
アキはタブレットで地球に転送されたオリハルコンの写真をイル達に見せる。初めて見る機械に興味津々の彼らだったが、すぐに意識を切り替え、写真に写っているオリハルコンを確認してくれた。
地球に漂流したオリハルコンにはエスペラルドやリオレンドと言った様々な国の紋章が混ざっていた。たいした理由はないのかもしれないが確認しておきたい。
「そうですね、昔この制度を施行した際、オリハルコンに紋章を刻んで各国で交換したらしいです。290年も前の事なので理由はわしもわかりませんが……。」
「この罪は全ての国で背負う。そういう盟約の為に交換した……でしょうか?」
アキが言葉を被せるように推察を口にする。
「わしもそう思います。そんなところでしょう。」
「なるほど、では後2つだけお伺いしたい事があります。そしてお願いしたいことが1つあります。」
何でもどうぞと頷くイル。
「イリアやキーリに何故依頼したんですか?予想はついてますが一応教えてください。そしてイリアの事は何か知っていますか?」
当然の質問ですねとイルが前置きして、依頼について教えてくれた。
ある日、イルはサルマリアの立ち入り禁止エリアである十六夜の洞窟に強大な魔獣が発生したとの連絡を受けた。その報告によると、命令付与の後、周囲の人間に襲い掛かってきたので、命令付与が出来てないと判断、転送を中止した。そして王家はいつもの手順に乗っ取り、冒険者協会にSランク以外の冒険者で魔獣討伐を依頼。立ち入り禁止エリアの依頼難易度はSになるので、Sランク以外でその依頼を受けられるのは当然Aランク。そして協会、おそらく支部長長であるアイリ、が手配したのがイリアだったという事だ。
やはりアキの想像通りだった。協会やサルマリアが全うな組織と国なのであれば、ベルが以前説明してくれた手順通り、魔獣処理を行うだけだ。そして実際その通りに処理が実行され、イリアへ魔獣討伐依頼がいった。
だがその依頼途中、何故かイリアは姿を消した。
「そしていつまで経っても依頼完了報告が来ない冒険者協会は新たに冒険者を手配した。それがキーリという事ですね?」
イルの説明にアキが付け足す。
「そういうことです。キーリさんが依頼放棄後、痺れをきらしたメビウス協会長が無理矢理冒険者復帰して討伐してきたと報告を受けています。」
何してんだあのおっさん。相変わらず無茶しやがる。おそらく引退した冒険者はSランクといえど、そう簡単に復帰はできないはずだ。それを無理矢理アイリあたりに手続きさせたのだろう。本当にアイリが可哀そうになってきた。今度あの兎を労いにいってやろう。
「そしてイリアさんの事ですが……。元サルマリアの冒険者だったとしか。それ以上はわかりません。」
なんでもイリアはBランクの頃に拠点変更申請を提出したらしい。そしてそれが受理され、エスペラルドに移った事を覚えているとイルが告げる。
何故そんなBランク冒険者程度の事を覚えているのか不思議に思ったが、そもそも拠点変更申請自体が結構珍しいらしく、処理した際は冒険者協会から王家に報告が上がってくるので、意外と記憶に残るらしい。さらにイリアは実力がある冒険者として注目されており、いつかSランクまで登り詰めるだろうとサルマリアの冒険者界隈で噂されていたので尚更だったとの事。
「優秀な冒険者だったので申請を却下すべきだとの声はあったようです。ただAでもSでもないので認めるしかないだろうと、最終的に申請が通りました。決定的だったのは、彼女が数年間ずっとBランクだったことですね。」
ミルナ達から聞いているイリアの実力で、数年も彼女がBランクに留まっていたのはおかしい。つまりわざとランクを上げてなかったと考えられる。今イルが言ったように、Aになってしまうと拠点変更申請が通りにくくなる。Sになればまず通らない。自由に国境は移動できるようになるがSランクは目立つ。もし国を目立たずに移動したいのであればBランク以下でいるべきだ。拠点変更申請でBランク以下なら容易に国を変える事ができるのだから。そう、イリアがしたように。
不可解な点は他にもある。ミルナ達と合流してイリアはAランクになったと言っていた。だがミルナ達の実力のおかげでAに上がったわけではない。彼女と出会った時、既に相当な実力者だったとうちの子達が語っていたのだから。ではイリアは何故急にAになる気になったのか。そしておそらくAに上がったせいでエスペラルドに拠点変更したにも関わらず、サルマリアからイリアに立ち入り禁止エリア内での魔獣討伐依頼が入った。そしてそれを彼女は受けた。母親が月夜の森で命を落としたからだろうか。それとも何か他に理由があるのか。
とりあえず総括すると、イリアはわざとランクを上げずにBランクで活動し続けた。ある時拠点をサルマリアからエスペラルドに変える。そこで偶然ミルナ達と出会い、Aランクになった。そして立ち入り禁止エリアの依頼を何故か受け、ミルナ達の前から姿を消した。
「なるほどなるほど。」
「アキさん何かわかったんですか?」
ベルが教えて教えてという顔で見つめてくる。
「可能性は3つくらいに絞り込んだ。でも考えが纏まらないからまだ秘密。」
上目遣いで「どうしてもだめ?」と見つめて聞き出そうとしてくる。可愛い。でもダメだ。
口では3つと言ったが、本当のところアキが考えている可能性は1つだ。そしてそれが合っている自信はある。今までの情報を統合するとこの可能性がもっとも高い。ただ確証はないし、話したところでイリアと邂逅する方法も未だない。だから誰にも言うつもりはない。
「わかりました。」
アキが本気で教える気がないのがわかったのか、ベルは素直に引き下がってくれた。時がきたら話してくれると信じてくれているのだろう。うちの子達もアキが「ダメ」と言ったらそれ以上は絶対に追及してこない。アキとしてはそれが非常に助かる。
この子達に教えないのは意地悪とかではなく、彼女達をぬか喜びさせたくないのが1つ。そしてもう1つは彼女達が冷静な判断を失って、危険を顧みずに突っ走ってしまう事を避けたいからだ。ミルナ達はすぐ暴走するからな。
「イル陛下、それでは後はお願いだけです。」
「ふむ。なんでしょう?」
「はい、サルマリア王国が所有している許可証発行装置を調べたいのです。」
あらかじめベルに装置の呼称を聞いておいてよかった。円滑に話が進められる。
「ああ、なるほど。魔法印解析の為ですね?勿論です、協力しましょう。いつにしますか?」
「そうですね……あ、その前にこれらの書類を処分してもよろしいですか?」
テーブルの上に置いてある政体草案の書類を指差す。
「もちろんです、この部屋から出すわけにもいきませんしね。」
イルが苦笑しながら頷く。
アキはいつもの炎魔法を使い、書類を灰にする。しかし毎回必死に自分で書き出して、毎回自分で燃やしているのが少し悲しい。仕方ない事ではあるが。
それはさておき、話の続きだ。
「それで許可証発行装置ですが、今からではダメですか?」
「わしは構いませんが。」
イルが同行しますと快く承諾してくれる。だがアキには別の考えがある。
「ステラさん、お願いできませんか?」
「わ、私ですか?」
急に指名されて驚いたのだろう。ステラが慌てて返事をする。
「こら、ベル。拗ねるな。」
「ふんっ……しりません!ばかっ!」
本当にうちの王女様はすぐに拗ねる。
「ステラさんにうちのベルをサルマリアの視察と称して案内して貰いたいのです。私はベルの側仕えにでもすればいいでしょう。それでしたら装置を確認をしに行っても別段不自然ではありませんよね?そして用事が終わったらうちに遊びにきませんか?他の子達とも是非仲良くしてあげてください。」
ステラにベルやミルナ達と仲良くなる切欠を作ってあげたかった。だから丁度いい機会だと思い、この提案をしたのだ。
ステラもアキの意図に気付いたようで、嬉しそうに頷く。
「はい!私がアイリーンベル王女殿下をご案内したいです。」
「ありがとうございます。ベル、いいだろ?」
「そういうことなら仕方ないです。特別に案内する許可をあげます。」
ベルはまだ少し不機嫌そうだが、渋々同意してくれる。しかし何故そんな偉そうなのか。アキの前ではすぐ下手に出るくせに。
「いい子だね。さすが俺のベル。」
「えへへ、当然です。」
この素直さというか可愛さを他人にもふりまけるようになりなさい。まあ……それは未来永劫無理そうだ。ベルだけじゃなくうちの子達全員。
「改めましてイル陛下、ミリア殿下。貴重なお話ありがとうございます。今後とも何卒よろしくお願いします。」
2人とはここで別れる事になるだろう。礼を述べて一礼する。
「いえ、こちらこそよろしくお願いします。わし達に何かできる事がありましたら遠慮なく言ってください。この国、そしてこの世界をお願いします。不甲斐ないわし達の代わりに。」
イルが深々と頭を下げる。本当に心から改革を願っているのが伝わってくる。そしてミリアがイルの言葉に付け加える。
「ついでにうちの娘をよろしくお願いします。不束な娘ですけど。アキさんなら私をお義母さんと呼んでもいいですよ?」
何故かステラを娶らせようとしてくるミリア。やめて欲しい。
「勘弁してください。俺なんかより素敵な伴侶はいくらでもいます。それに俺にはもうベルやうちの子達がいるので……。」
この母親、なにがなんでもステラを押し付けようとしてくる気がするので早めに手を打っておいたほうがよさそうだ。油断しているといつのまにか外堀を埋められる気がする。ベルの時のように。
「残念です。うちの子にもそろそろ夫を見つけてあげないといけないのですが……。」
ミリアがうふふと不敵な笑みを浮かべる。どうやら諦めていないらしい。そしてステラは何故か少し嬉しそうだ。
うちのベルが段々とまた不機嫌になってきているので本当に勘弁して欲しい。




