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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第十六章 サルマリア王国・王都リスルド
257/1143

11

 アキ達が連れてこられたのは、これまた王族が使っているとは思えないような屋敷だ。エスペラルド王家もそうだったように、どこの国もこのような密談用の屋敷をいくつか持っているのだろうか。


 馬車を降り、そんな事を考えながら玄関に近づくと、扉が開いて執事のような格好をした男性が出てくる。


「お待ちしておりました。アイリーンベル王女殿下、そしてアキ様。私はサルマリア王家執事のティーゼと申します。それではこちらへどうぞ。」


 ティーゼと言われた執事に続いて屋敷の中へと入る。さすがに昨日のメビウスと会談した屋敷とは違い、廃墟ではない。ある程度の家具や装飾品が廊下に並んでおり、そこそこな上流階級の屋敷であるという事が伺える。ティーゼは廊下奥の部屋のとある扉の前で立ち止まる。


「こちらでサルマリア国王陛下、王妃殿下、王女殿下がお待ちです。私はここまでと言われておりますので、アイリーンベル王女殿下とアキ様でご入室くださいますようお願い申し上げます。」


 そう言うとティーゼは一礼して扉の前をアキ達に譲る。


「それではアイリーンベル王女殿下、よろしいですか?」

「ええ、アキ。行きましょう。」


 久々の「王女様」とのやり取りが楽しい。ベルはその呼び方は嫌いって顔をしているが……。


 アキは早速扉を開けて中に入る。中はエルミラと会談した時のような簡素な部屋で、必要最低限のソファーやテーブルが置いてあるだけだ。密談にしか使わないのであれば、豪華にするのは税金の無駄使いということなのだろうか。


 そして部屋の中央にあるソファーに白髪交じりの男性が座っている。そして左右に女性が2人。王妃と王女だろう。向かって右の女性の方が若いので、こちらが王女という事になる。


 いざ入室したはいいが、アキから挨拶していいものか迷っていると、ベルがお願いしますとそっと背中を押してくれる。どうやら完全にアキを自分より上の扱いにしたいらしい。まあベルが構わないのであればそれでいい。


 アキは一歩前に出ていつもの口上を述べる。


「イルベルン・サルマリア国王陛下、そして王妃殿下並びに王女殿下。エスペラルド王国所属Sランク冒険者のアキと申します。本日はお忙しい中、私共の為にお時間を頂戴してしまい、申し訳ございません。一介の冒険者故、ご無礼を働く事があるかと存じますが何卒ご容赦くださいませ。」


 深々と一礼する。そしてアキに続いてベルが隣で優雅にカーテシーを行う。


「イルベルン国王陛下、そしてミリアステラ王妃殿下、ステラベル王女殿下、お久しゅうございます。本日は貴重なお時間ありがとうございます。いつもお父様がお世話になっております。」


 アキ達の挨拶が終わると、それを待っていたかのように、イルベルンがおもむろに立ち上がり自己紹介を始める。


「アキさん、初めまして。サルマリアの国王であるイルベルンです。適当にイルとでも呼んでください。そしてアイリーンベル王女殿下お久しぶりです。相変わらずお美しいですな。」


 そんな気軽に呼べるかと突っ込みたいのを必死に我慢する。どうしてこの大陸の王族はこんなにフランクなのか。まあベルが美しいと褒められたのは嬉しいけど。


 ちなみにイルは白髪交じりの黒髪で、人当たりのよさそうな50代後半の中肉中背の男性だ。物腰柔らかい雰囲気を感じるが、王としての威圧感ははっきりと感じる。きっとエルミラ同様優秀な統治者なのだろう。


「初めまして、アキさん。この人の妻のミリアステラです。ミリアとでも呼んでくださいね。アイリーンベル王女殿下、こちらこそお久しぶりです。」


 だから呼べません。王妃を渾名で呼べません。


 そんなミリアステラは長い亜麻色の髪をしており、それを優雅に背中に流している。瞳の色は薄い青色をしていてとても美しい。こちらもイルと同じように、人当たりがよく、物腰柔らかい人物という感じだ。


「最後は私ですね。ステラベルと申します。ステラでもベルでも好きに呼んでくださいね。アキさんにはお会いしたかったんですよ?あら、アイリーンベル王女殿下もお久しぶりです。いらしたんですね。」


 何故か少し喧嘩腰のステラベル。


 彼女はミリアステラと同じ亜麻色の髪をしている。そしておそらく王妃くらいの長さはあるのだろうが、髪の毛をアップにしてお団子の様に可愛く後ろで纏めている。瞳の色も母親と同じ薄いブルーで、ミリアステラの若い頃はステラベルそっくりだった事が伺える。お淑やかな雰囲気だが、どこか気の強そうな一面を感じる。ベルへの態度を見てもそれは明らかだ。


 そしてそのベルはアキの隣で笑顔を引き攣らせている。


「皆さんご丁寧にありがとうございます。ステラベル王女殿下は私などの事をご存知なのですか?」

「ええ、知っていますよ。あと王女殿下という呼称入りません。」

「そうそう。イルと呼べとは言いません。せめて堅苦しい呼称は無しにしましょう。アキさんの事はエルミラ陛下から聞いているんですよ。だから口調も崩してください。2人の事は聞いています。」


 エルミラは多分メビウスだけでなくイルにも似たような手紙を出していたんだろう。まあそれであればベルと王女様ごっこする必要はない。


「とりあえずお座りください。」


 イルが座るように勧めてくる。


「ありがとうございます。」


 アキはソファーに腰掛けようとするが、ベルが引きつった笑顔のまま動かない。そんなにあのステラベルが苦手なのか。ここまで硬くなっているベルは初めて見る。


「ベル、早くおいで。俺の隣に座れ。」

「は、はい。」


 アキに「ベル」と呼ばれてやっと我に返ったらしく、いそいそとアキの隣に座る。


「あら、アキさんはアイリーンベル王女殿下の事を『ベル』と呼んでらっしゃるんですか?」


 ステラベルが少しだけ驚いた表情で尋ねてくる。


「ええ、本人の希望ですので。」

「では私の事もベルとお呼びください。」


 早速とんでもない提案をしてくるステラベル。


「待ってくださいステラベル王女殿下。何をおっしゃっているんでしょうか。アキさんにそのような事を強要しないでください。」

「あらアイリーンベル王女殿下。強要ではなくお願いですよ?さあ、アキさんベルと。」

「ベルは私ですので、ご遠慮いただけないでしょうか。」

「私もベルですので、アイリーンベル王女殿下がリーンに変えてくださりませんか?」

「そのようなひき肉みたいな呼び方は嫌です。ステラベル王女殿下こそテラちゃんとかでいいのではないでしょうか。」


 子供か。


 とりあえず止めないと終わる気がしないので、ベルの頭を叩く。


「やめんかこの馬鹿ベル。リーンと呼ぶぞ?」

「そ、それは嫌!」


 ベルが口を尖らせてすっかりへそを曲げてしまった。仕方ない、ここはうちの王女様を立ててやろう。


「ベルはこの子なので、ステラさんで勘弁してくださいませんか?」

「うーん、しょうがないですね。それでいいですよ。」


 ステラが楽しそうに微笑む。絶対この王女で遊んでいやがる。


「ありがとうございます。そしてイル陛下とミリア殿下でご勘弁を。」


 ちなみにイルとミリアは、王女2人のやり取りを楽しそうにみていた。あの様子から見るに多分いつもの事なのだろう。


「まあ、そうですね、それが妥当でしょう。」

「あら、私の事はステラではありませんの?ふふ、冗談です。ミリアで大丈夫です。」


 どうやらサルマリア王家は少しお茶目な人達らしい。ちなみにベルは自分の愛称を取られなくて本当に安堵しているようだ。この子はアキにだけは絶対「ベル」と呼ばせたいらしい。他の人がベルというと不機嫌になるくせに、アキがそれ以外で呼ぶのは何がなんでも駄目なんだとか。


「心配しなくても、俺にとってのベルはベルだけだから。」

「は、はい!」


 これで少しは機嫌を直してくれるだろう。


「あら、本当に仲がいいんですね。羨ましい。」


 ステラがくすくすと笑いながら見つめてくる。


「そうですね、ベルにはよくしてもらっています。ところでステラさんは俺の事をどこで知ったんですか?」

「はい、闘技大会で拝見したんです。」


 ステラはエスペラルドとミレーの闘技大会を両方観戦しに来ていたらしく、そこで見かけたのだと言う。なるほど、それであれば知っていてもおかしくない。なんせエスペラルドだけでなく、ミレーでもアキは派手にやらかしたのだから。


「ミレー女王陛下をお救いになったのはかっこよかったです!」


 ステラが両手を胸の前で握りしめながらアキの活躍を語る。大絶賛だ。


 しかしアキから見る限り、ステラはとてもいい子に見えるのだが、ベルは何故苦手なのだろうか。


「ステラさんみたいな美しい女性に褒めて貰えるのは光栄です。」


 社交辞令のつもりで言ったのだが、ベルにおもいっきり脇腹を抓られた。そしてそれを見たステラが不敵な笑みを浮かべ、ベルを揶揄い始める。


「あら、アイリーンベル王女殿下は心が狭いんですね?」

「人の物に手を出そうとするステラベル王女殿下程ではありませんよ。」

「あら、アキさんの事を物だなんて!」

「違います!そういう意味ではないです!違いますからね、アキさん!」


 王女同士の口喧嘩はベルが少し劣勢のようだ。アキはぼーっと事の成り行きを見守る事にする。イルやミリアが気にしてないのであればこれを無理に止める必要もないだろう。外交問題に発展するならさすがに止めるが、イル達はどちらかというと娘が同年代の友達と仲良く喧嘩しているのを微笑ましく眺めている感じだ。


「アキさんは私の夫です!それにあと8人います!貴女の入る隙間などないんです!しっしっ!」


 虫を追い払うかのように手を振るベル。


 気付いたらいつの間にかもの凄い方向へ話が転がっている。そしてルティアが既に数に入れられている。彼女を娶ると言った覚えたはないのだが……。まあでもあの子の懐き具合を見ればそう思われても仕方ない。自分でもそうなりそうな予感しかしないし。

 

 しかし流石にそろそろ止めるかとベルの頭を再度引っ叩く。


「お前はなんで人の個人情報を勝手に垂れ流してんだ。」

「だってだって!」


 ベルが涙目で見つめてくるので、とりあえず撫でておいてやる。すると一転して笑顔になり、嬉しそうにするベル。相変わらずチョロい。しかしこんな事他国の王族の前でやらせるな。あとで説教だ。


「ステラさんもあまりベルを揶揄わないでください。」

「ふふ、ごめんなさい。昔からあまり反りが合わなくて。」

「何故ですか?」


 何か犬猿の仲になるような切欠があったのだろうか。世間話がてら尋ねてみる。


「くだらないことですよ?」


 小さい頃、お互いの国を外交訪問した際はよく2人で遊んでいたらしい。まあ子供が為政に参加するわけないので当然の流れだろう。王である父親達は会議、ベルやステラは2人でお遊戯というわけだ。


 そしてある時、おやつをベルがステラの分も食べた事を切欠に喧嘩が始まった。それからベルは常にステラのおやつを取るようになり、今なお続く確執の出来上がりというわけだ。


「それは確かに下らない事ですね。でもベル、人のを取るのは感心しないぞ?」

「アキさん!違います!騙されないで!」


 ベルが反論する。


 彼女の主張としては、小さい頃は会う度に虐められたので、おやつはベルのちょっとした仕返しだったのだそうだ。ベルが虐められていたなんて想像もつかないが、もしかしたら子供の頃は気弱な少女だったのかもしれない。今はすっかり強かな食い意地の張った腹黒王女様になってしまったが。悲しい。


「アキさん?今ものすごく失礼な事を考えていませんか。」


 ベルがジト目でアキを見てくる。無駄に勘のいい王女様だ。


「気のせいだろ。それより本当にステラさんに虐められていたの?」

「あら、そんな事しませんよ。アイリーンベル王女殿下の被害妄想ですね。むしろ会う度におやつを取られていた私が被害者です。」


 ステラが即座に否定する。


「嘘です!私、人の物を意味もなくとったりしないです!」

「でも俺の作るケーキを食べるベルを見ているとな……食いしん坊だからな。」

「あれはアキさんが作るからなの!特別なの!」


 ベルがアキに縋り付くように私を信じてと訴えてくる。


 何が感情的になれないからミルナ達が羨ましいだ。今のベルはすっかり理性より感情で話をしている。それがアキにとっては何より羨ましい。


「うふふ、アキさんはどちらを信じるんですか?」


 ステラが不敵な笑みを浮かべて聞いてくる。


「そりゃベルだけど?」


 ステラはまだ会ったばかりだ。大事な仲間であるベルを依怙贔屓するのは当然だろう。それに仲間だからこそ何があっても最後までベルを信じなければいけないとアキは思っている。


「アキさーん!」


 ベルが嬉しそうにアキに腕を絡ませて甘えてくる。王女が公共の場でそういう事するのはやめなさい。まあ感情の思うがままに話しているベルが微笑ましいので好きにさせてやろう。


「でも本当にベルが悪い事をしたら怒るし、代わりに謝る。それにもし嘘をついていたら許さないけどね?」

「嘘はついてないです!」


 ベルは必死に無実をアピールしてくる。


「うん、信じているよ。でも実際、客観的に見ると難しい問題だよ。」


 ベルがおやつを取ったのは事実だ。先ほどベルも認めたし、誰が見てもわかる事象だ。ただ虐められていたというのはベルの主観になってしまう。ステラが虐めていないと言っている以上、それを証明する方法はない。つまりベルの被害妄想という事になる。


「そんな、アキさん!」

「でもステラさんが虐めるつもりがなくてもベルが虐められていたと感じているならそれは問題だ。ちなみにどんな事をされてたの?」


 アキが2人に尋ねる。


「確かにアキさんのいう事はもっともです。ただ本当に私は虐めているつもりはなかったので、何がそれにあたるのかわかりませんね……。」


 ステラは真剣な表情で意見を述べる。決して悪い子ではないのだろう。ちゃんと人の話を聞くし、客観的に物事を見られる立派な王女様だ。まあステラが本当に虐めていたつもりがなかったのであれば、小さい頃の記憶なんて鮮明に思い出せないのは仕方がない。


「ベルはどうなの?」

「もちろん覚えてます!まずステラベル王女殿下は私に泥団子を食べさせようとしたんです!それに髪を引っ張りました!あと泣き虫とか弱虫とか馬鹿にしたんです!」


 ベルが必死に虐められた内容を説明してくる。本当になんの意味もなくベルが言ったような事をステラがしていたのであれば、行動としては少し行き過ぎていると言えなくもない。


「ステラさん、どうなんです?」


 加害者であるステラの意見を聞いてみる。


「泣き虫と言ったのは鬼ごっこしていて転んだ貴女が延々と泣き続けるからですよ。最初は心配したのですが1時間も泣かれるとさすがにその……。少し疲れてそのような言葉を使いました。すいません。」


 ステラがベルに謝罪する。これはステラは別に悪くないだろう。むしろうちの王女様の泣き虫具合に呆れる。ちょっと可愛いけど。


「ベル?」

「だ、だって!あ、ほら!でも他のは苛められたんです!」

「髪を引っ張ったのは貴女がまた転びそうになったのを必死に支えようとしたからです。また泣かれるのは嫌でしたから。」


 ステラが淡々と説明する。ベルが形勢不利だ。このままでは完全なベルの被害妄想で終わってしまう。本人もそれがわかっているのか、表情が硬い。


「泥団子は貴女が『毒殺された王女様ごっこ』をやりたいとか言ったからでしょう。別に本気で食べさせようとは思っていませんでしたよ?」

「ベル?なんでそんな設定のおままごとやったのかな?」


 まさかの設定だった。一体何に憧れてうちの王女様はそんな遊びをしたかったのだろうか。アキはベルの頭を軽く鷲掴みにして問い詰める。


「あ、その……えっと……な、なんか悲劇のヒロインぽかった……から?」

「うちの王女様はお茶目だな。」


 ベルの頭をぐりぐりと拳で撫でてやる。


「やっ……痛いからっ……アキさん!……それ……痛い……からっ!」


 ベルが頭を抑えながらやめてと涙目になって悶えている。


 どうやらベルは虐められていたわけではなく、勝手な被害妄想でステラのおやつを取り続けていたという事だ。それに対してステラも当然不満が募り、ベルにきつく当たるようになったのだろう。


「ベルが一方的に悪いとは言わない。でもベルの方が比率としては大きいよね?」

「うぅ……だってー……。」


 頬を膨らませてさらに拗ねるベル。


「でも子供の時の事だし、水に流せる器量はお互いにあるでしょう、ステラさん?」

「はい、もちろんですわ。でも『おやつを取ってごめんなさい』くらいは欲しいですね。」


 つまりステラはその一言で全て水に流し、恨みは残さないと言ってくれている。


「ベル、ごめんなさいは?」


 ベルがイヤとそっぽを向く。うちのわがまま王女様は意地でも謝るのが嫌なようだ。アキに対してはすぐに謝るくせに。


「それなら私のおやつを取った代わりにアイリーンベル王女殿下の何かを1つ貰いましょう。」

「なるほど、等価交換ですね。」


 それはそれで一つの解決策だろう。

 ステラはなにか名案を思い付いたのか柏手を1回うって微笑む。


「そうですね、ではアキさんを頂きましょう。闘技大会での活躍も見ていますし、聡明な方です。見た目も及第点。私の伴侶としては十分合格です。」


 見た目は及第点らしい。まあ落第じゃないだけいいか。しかし絶対わざとだろう。うちのベルがこんな提案を黙って聞いていられるわけがない。


「だ、だめです!アキさんは私のなの!絶対誰にもあげないんだから!」


 ベルは王女である事をすっかり忘れて、立ち上がって大声で叫んでいる。こんなベルが見られるとは新鮮だ。意外な一面どころではない。


 とりあえずベルに落ち着くように注意する。


「あっ……。」


 アキに指摘され、自分の取った行動に気づいたようだ。ベルは顔を真っ赤にしてアキの隣にストンと座り、両手で顔を覆ってしまう。


「ステラさん、嬉しい申し出だけど、俺はこの子が好きなので。」


 ステラが本気ではないのはわかっているが、ベルの手前、ちゃんと断っておく。


「あら、残念です。結構本気でしたのに。」


 食えない王女だ。


 それにステラはなんだかんだベルの事を嫌ってはいない。同年代で同じ立場の女の子。気軽に話せる相手としてベルの事は嬉しく思っているはずだ。


「ベルはいい子だからこれからも仲良くしてやってくださいね。」


 ベルを優しく撫でながらステラにお願いする。


「はい、私からもよろしくお願いします。」


 アキの頼みに快く頷くステラ。


 近い将来、サルマリアはステラ、エスペラルドはベルが統治する事になる。だからこの2人は良好な関係であるべきだ。まあアキが偉そうな事を言わなくても、この王女様達は優秀なのでそんな事はわかっている。こんなのは年頃の女の子同士の可愛いじゃれ合いだ。多分……。


「ベル、わかってるだろ。」

「うん……。」


 顔を隠したまま素直に頷くベル。未だ自分の痴態が恥ずかしいようで、アキの方を見ようとしない。顔を上げるように言っても「恥ずかしいからやだ」と言われる。


「今のベル、俺は好きなんだけど。普段からそれがいい。」

「むり……でもちょっとずつなら……頑張る。」

「そうか。でもミルナ達のように出来てるじゃないか。今のベル、俺は羨ましい。」


 ベルが指の隙間からチラチラとアキの方を見てくる。


「ほんと?」

「ああ。それにベルを恥ずかしがらせた仕返しはしておいてやるから。」

「……?」


 ベルが不思議そうに首を傾げる。


「まあ見てろ。さて……ステラさん。」

「な、なんでしょう。」

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