表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第十二章 魔法学校Ⅱ
192/1143

11

 今日も1日の〆である風呂に入った後、アキは自室へと戻る。


 自室のテーブルにはアリアが用意してくれたであろう水の入ったピッチャーがおいてあった。いつも彼女はアキが風呂に入っている間に準備してくれている。こういうのを見ると、メイドがいるっていいなとしみじみ思ってしまう。ただうちのメイドはあまりにも甲斐甲斐しく世話を焼きたがる。下手をすればアキはなんもしなくていいレベルでお世話してくる。それはさすがに不味いので、アリアに甘えすぎて堕落しないように、気を付けなければいけない。


 アキはコップへ水を移し、早速喉を潤す。風呂で失った水分を体が欲しがっていたかのように、全身に沁みわたっていく感じで冷水がとても美味しい。ちゃんと冷やしてあるあたり、さすがアリアだ。しかもピッチャーの中にはレモンのような果実のピールが浮かべてあり、ちょっとした果実水になっている。うちのメイドのささやかな気遣いだ。おかげで程よい酸味があり、何杯も飲んでしまう。


 「うちのメイド最高だな。美人だし、可愛いし、気遣いも出来るし、色々世話焼いてくれるし……。このままダメ人間になってしまいたい。」


 そんなどうでもいい事を呟きつつ、アキはソファーに腰を下ろし、だらだらとここ数日を振り返る。






 昨日今日で状況が素晴らしく進展した事にアキは満足している。まずミレー王国を味方につけられた。アイリスを引き込めたのは本当に大きい。これで全国家の50%がアキを支持してくれている事になるので、情報は大概手に入るだろう。さらにはエリザ、魔法組合の支援も取り付ける事が出来た。ミレーに本拠地をおく魔法組合、そこの支部長であるエリザは間違いなく組合内で発言力を持っているはずだ。そしてあの猫さんは素直で真面目。それでいて情報の取捨も確実に出来る。だからこそ信用し、色々任せられる。


 続いて、黒幕に邂逅出来るかもしれないという爺さんからの情報。このまま順調に進めば3、4日程で接触出来るだろう。それまでにアイリスやエリザと内密に一度話しておく必要がある。ベルに察知されると不味いが、エリザ経由で連絡すればアイリスの事だし上手くやってくれるはずだ。


 そして黒幕に接触し交渉と説得。何をお願いするかは既にある程度決めてある。ただ結局は向こうが持っている情報次第というところもあるので、実際は臨機応変に対応する必要がありそうだ。一番の難題は、黒幕に話を聞かせる方法だが、なんとかなるだろう。計画はある。王族襲撃方法を見る限り、黒幕である外套の人物の性格は予想出来る。


 本当に人脈に恵まれているなとアキは改めて思う。アイリス、ベル、エスタート、そしてエリザ。収集出来ない情報は無いだろうといっても過言ではない。セシル、アリア、エリスといった有能な従者や騎士もいる。そしていつも側で力になってくれるミルナ達。本当にアキにはもったいない子達だ。


「こんな俺の為にみんな頑張ってくれているからな。」


 アキは基本的に腹黒で碌な人間ではないと自分では思っている。皆の好意を利用している部分も少なからずある。夜独りでこうやって物思いに耽っている時、いつも少しだけ後悔する。だからこそミルナ達の為にイリアは必ず見つけなければならない。必ず解決する。そしてベルの為、制度の改革を。アリア、セシル、エリスの為に安心して楽しくくらせる国を。


 自分の居場所を作ってくれたミルナ、ソフィー、エレン、レオ。こんな自分に付き従ってくれるアリア、セシル、エリス。自分の事を慕ってくれ、国を捨ててでもついて行くと言ってくれたベル。この世界に来てよかった、変わることが出来てよかったと改めて思う。いや、ミルナ達の言う通り変わってはいないのだろう。本当の自分に気づかせてもらえたと言ったほうが正しいのかもしれない。


 だからこれはそのお礼。アキの力でどこまでできるかわからないが彼女達の望みは必ず叶える。


「自分のやりたいことはその後でいい。」


 そして彼女達がアキといる事を望むなら全員受け入れるつもりだ。複数人を養える甲斐性なんてあるかわからないが、彼女達がそれを望むのであれば喜んで受け入れる。イリアの事が終わってから、とはぐらかしてきたが、あれだけはっきりと好意を口にしてくれているし、態度でも自分を好いてくれているのがわかる。

 

 だからこそアキとしてもちゃんと返事をしてやるべきだ。あの子達を大事にする覚悟はとうに決めた。ただ一度も言葉にしてはっきりとは伝えてはいない。女性に気持ちを伝えるなんて人生で一度もした事がないから少し後回しにしていたのだ。だがそれもそろそろ終わりにして、あの子達を受け入れる覚悟があると、ちゃんと言葉にして伝えてあげる必要がありそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ