17
「じゃあ、次はベル。」
いつまでも夢見心地気分でいるわけにもいかない。アキの報告も未だだし、話さなければいけない事は山積みだ。とりあえずベルに今日の報告をお願いする。
「はい。といっても私の方も有力な情報は今のところありません。」
ベルは一日王城でアイリスと会議をしていたようで、特に新しい情報は無いと言う。為政には興味はないし、国務の内容を知る必要もないだろう。アキが聞けばベルは教えてくれるとは思うが。
「ただ、その……アキさんすいません。」
ベルが頭を下げて謝ってくる。
アキに関する事だと謝りまくっているうちの王女様だが、彼女がそれ以外の事でここまでするのは珍しい。ベルは良識がある子だから滅多にミスをしない。だからこそ必然的に謝る機会は減る。頭を下げて謝るベルが一体どんなミスをしたのか逆に興味が湧いて来た。
「どうしたの?」
アキはとりあえず説明するようにベルを促す。
「はい……その……アイリス女王に話してしまいました!ごめんなさい!」
ベルが目をギュッとつむって、意を決したように叫んだ。
なんでも国務の後、アイリスと2人で雑談しており、その時に魔獣制度について色々とベルの考えを話してしまったのだと言う。さらにはアキがその事実を知っているという事も話したらしい。アイリスであれば大丈夫だと思い、協力を得る為にベルは魔獣政策廃止案を彼女に伝えた。そしてアイリスはその話に興味を示し、改めてアキを含めた3人で話せる場を設けて欲しいとベルに告げたとの事。
「わ、私の判断で勝手にすいません……アキさん、ごめん。ごめんね?」
ベルが上目遣いで何回も謝ってくる。王女の仮面もすっかり外れている。アキに怒られると思ったのかもしれない。ただアキにベルを怒る理由なんて何一つない。それにそんな表情で謝られたら怒るに怒れないだろう。可愛すぎる。
「ベルがそう判断したのなら何の問題もない。信頼してると言っただろ。」
「でも……。」
「あの女王なら問題ないと俺も思う。それにベルが協力を仰げると判断したから話したんだろ?なら何も問題もないよ。話し合う日や場所が決まったら教えてくれ。」
「は、はい!アキさん……ありがとう!」
怒られないとわかって安心したのか、アキの信頼が嬉しかったのか、ベルは花が咲いたような微笑みを浮かべながら両手を胸の前でそっと握り占めている。
「解き放たれた猛獣だったら怒ってたけどな。」
「ちょっと!アキ!私を変なとこで巻き込むんじゃないわよ!」
急に話題に引きずり込まれたエレンが猛獣の如く吠える。
「あれ?エレンは解き放たれた猛獣なの?」
「ぐっ……ち、違うわよ!」
「じゃあエレンが怒ること無いよね。」
「え、ええ。そうね。間違えただけよ!」
怒ると自分が猛獣だと認めた事になるので、エレンはなんとか言葉を飲み込んだようだ。
「だからベル、大丈夫だ。エレンという解き放たれた猛獣だったら怒ってたけど。」
アキがエレンの名前を付け足してわざわざ言い直した事で、うちの猛獣が顔を真っ赤にして「もうぶっころす!」と飛びかかって来た。躱した方が面白いかなと思ったが、最近エレンを余り構えてなかったので、そっと受け止め、優しく抱きしめて撫でてやる。アキに抱きしめられたエレンは直ぐ大人しくなって、頬を染めながら嬉しそうにアキの胸に顔を埋めてくる。
相変わらず素直じゃないなと苦笑いするアキ。
「エレンのおかげで和んだし、次は俺の報告ね。」
エレンを隣に座らせ、アキは話を続ける。
「まず魔法学校と魔法組合についてだが、特に裏は無く、俺の魔法に興味があっただけの可能性が高い。明日からもう少し探っては見るけどおそらくその線で間違いなさそうだ。」
エリザとのやり取りの一部始終をミルナ達に説明する。
エリザと話して、裏がある人間には思えなかった、というのがアキの感想だ。多分エリザ自身は魔獣政策の事は何も知らないだろう。他の組合の人間についてはわからないが、女王とも懇意しているエリザなら疑う必要はないとアキは判断した。
「アキさん、何故アイリス女王が学園長さんと懇意にしているとわかるんですか?」
ベルが首を傾げる。もっともな疑問だろう。今日のエリザとの打ち合わせではアイリスの話は1回も話題に上がってない。
「それはアイリス女王が俺の依頼の事を知っていたからだな。もし女王が魔法学校講師依頼の事を何も知らないのなら疑ったけど、知っている時点でこの依頼に裏はないと言える。」
魔法組合がよからぬ事を考えているのであれば、魔獣政策を管理している王族であるアイリスにアキの依頼の件を話したりはしないだろう。秘密裏に事を進めるはずだ。
「でもアイリス女王が独自に情報を仕入れただけでは?学園長さんから聞いたとは限らないのではないですか?」
「確かにベルの指摘は間違ってない。でもそれならアイリス女王は間違いなく俺にエリザさんの事に関して注意してくれるだろう。魔法組合が何か怪しい動きをしているのであれば、あの女王なら絶対してくれる。だからアイリス女王はエリザさんから聞いたのだと考えられる。確定ではないがその可能性が高い。一応アイリス女王との関係を今度探ってみるけどね。多分俺の予想通り間違いなく仲良しだ。」
しかも今日、ベルはアイリスに魔獣政策廃止案について話している。彼女は魔獣政策の件をアイリスに話してしまった事を謝ってきたが、むしろ逆だ。ある意味称賛に値する。アキの推測の裏付けに繋がったのだから。
「それを聞いた女王はベルに何か注意したか?」
「い、いえ……してません。なるほど、さすがアキさんです。」
ベルが納得したように頷く。
つまりアイリスはアキの講師依頼の件、アキ達が考えている魔獣政策廃止の件、両方について知っている事になる。そんな彼女が何も注意喚起をしてこない時点で魔法学校の依頼については問題がないと言える。そして依頼に裏が無いという事は、魔法組合についても問題ない組織だという可能性が高まった。確定ではないが。ただ少なくともエリザに関しては問題ない、大丈夫だ。
「今日エリザさんに会ってそれが確証に変わったよ。」
依頼の打ち合わせの場にエアルとミリーを同席させていたし、何よりあの猫さんはアイリス女王のように真面目な人だ。そんな印象をアキが受けたのだから間違いない。自分の観察眼には自信があるのだから。
「総括すると、現段階でミレー王国に関して怪しい点はないと言えるね。」
アキは簡単に話を纏める。だらだらと話したが、結論はそういう事だ。
「イリアに関しても、魔獣政策関連に関しても、手詰まりですわね……。」
ミルナが少し悲しそうな表情で「どうすればいいですか?」と見つめてくる。多分アキの報告を聞いて、イリアの事で何も進捗が無いから落ち込んでいるのだろう。だがアキの考えは違う。手詰まりどころか大きく前進だ。今の一連の話には重大な事実が隠されている。
「ミルナ、わからない?ベルは?」
「わ、わかりませんわ……。」
「はい、私もピンときません。ごめんなさい……。」
2人はちょっとだけ悔しそうに首を横に振る。
「謝ることはないよ。えっとね、話がおかしいんだよ。こう言えばわかるかな。結局イリアに指名依頼したのって誰なの?」
ミルナとベルは目を見開く。どうやら矛盾に気づいたようだ。
「かみ砕いて説明しよう。」
他の子達がさっぱり分かっていないようなので、情報を整理しつつ、分かりやすく説明してやる。
まず、国がミレー王国は月夜の森での魔獣討伐依頼を発行。その月夜の森は立ち入り禁止エリアで、魔獣召喚・転送を行っている秘密がある。そして国はその魔獣制度の情報を隠蔽・秘匿している。秘密を知った人間は当然処分しなければならないので、国としては育成が難しいSランクを派遣したくない。だからAランクであるイリアに指名依頼が入り、それを受託した彼女が月夜の森へ魔獣討伐に向かった。
これがイリアへ入った指名依頼の背景と一連の流れだ。
だが、ミレーの闘技大会で観察した結果、各国王族は真面目な人間で、魔獣制度自体を快く思っていない可能性が高い。特にベルやアイリスは間違いなくそうだと言える。そして2人はエスペラルドとミレーの王族だ。つまり、イリアに依頼を発行した国というのはどこの国なのか、という疑問が芽生える。
「ベルやアイリス女王が国としてイリアに依頼するか?母親がそこで命を落としたからイリアなら依頼を受けるって画策して依頼を出す人間だと思うか?」
「思わないわね。確かに、不自然だわ。」
「うん、僕もおかしいと思うよ。」
エレンとレオがうんうんと納得したように頷く。
「ミルナ、1つ確認させろ。イリアの依頼は国からだと言ったよね、どこの国?」
「ミレーですわ。」
「それは冒険者協会で正式に確認したか?それともイリアから聞いただけか?」
「き、聞いただけですわ。」
ミルナが強張った表情でアキの質問に答える。アキが言わんとしている事がわかるのだろう。果たしてポンコツお姉さんのミルナが本当に分かっているのかは甚だ疑問だが。まあそれは今はおいておこう。
今度はベルに質問を投げ掛ける。
「ベル、その依頼調べてくれたよな。依頼は未達成。正式に確認したのか?」
「いいえ、それでは調べている事がバレてしまうので、各国の依頼遂行中リストを、冒険者の実情を把握したいという理由をつけて、協会に見せてもらっただけです。」
「そこに記載があったと?」
「はい、イリアさんのお名前がリストにありました。依頼難易度は当然S。依頼遂行中のリストには名前と依頼難易度しか書かれていないので、わかるのはそれだけです。依頼主などもわかりません。ただ『長期間無報告の為、未達成扱いとし、別の冒険者を派遣予定。このまま無報告が続けば冒険者資格は剥奪』という注意書きはありました。前に報告した通りです。」
やはりそうか。この情報の中のどれかが虚偽の情報だ。それは間違いないだろう。嘘の情報を掴まされているとも言える。
可能性としては3つ。1つ。イリアがそもそも依頼内容を偽っている、又はその依頼以外に何かを隠している。2つ。ミレーが依頼を偽っている。そして3つ。冒険者協会が何かを隠している。
「多分この3つのどれかだろう。もしかしたら全部かもしれない。」
「2つ目に関してはアイリス女王に聞けばいいのではないでしょうか。」
ベルがアキに提案する。
「そうだね、2つ目はそれでいい。だがその前に幾つか確認しておきたい。Sランク依頼は国か協会なら指名依頼として発行できる。」
「「はい。」」
ベルとミルナが声を揃えて頷く。
「例えばミレー王国の冒険者協会支部がSランク依頼を発行した場合、依頼主はどうなる?王家が発行したらミレー王国、協会が発行したらミレー王国冒険者協会となるのか?」
この質問にはベルが答えてくれた。
「そ、それは……ぜ、全部ミレー王国として処理されます。なのでどちらが発行したかまではわかりません……。」
ベルの表情が硬い。まさかと言った表情だ。
しかしやはりその辺りは明確に記されてない。ならばとアキは追加で質問をする。
「じゃあ次の質問。冒険者協会は立ち入り禁止エリアや魔獣制度についてどの程度まで知っている?」
「王家から漏れる事は無いと言えるでしょう。なので協会は一切知らないと言えます……いや、言いたいです。元Sランクがその事を知っていて協会に情報を流した場合や情報を握っている元Sランクが協会上層部にいる場合は……その限りではありませので……。」
ベルが祈るように目を伏せ、静かに告げる。王女としては国家機密が漏洩してるなんて信じたくないのだろう。ただ協会がクロだと決まったわけではないので、そこまで悲観的になる必要はない。
アキは顎に手を置き、情報を整理する。
「結論を出す前にもう1つ。ベル、立ち入り禁止エリアや魔獣制度については王族が直属部隊をつかって管理しているのだろう?つまりそのエリアでの強大な魔獣発生は王族しか知りえない。発生から討伐依頼発行までの流れを教えてくれ。」
「は、はい。」
ベル曰く、国によって違う可能性はあるが、エスペラルドでは、まず強大な魔獣発生の報告があがってくる。それを受けて王家が討伐依頼を発行するように協会に命じる。国が冒険者を指名する場合もあるが、基本的には協会に人選を任せる事が多いそうだ。人選を含め、全て協会に任せてしまう方が手間も掛からないのだろう。王家が信を置いている冒険者がいる場合は国が直接依頼するらしいが、それは稀との事。
「私には心から信頼出来るアキさんがいるので直接依頼を出しますけどね。」
少し頬を染めながら最後に自分の意見を添えるベル。恥ずかしがるくらいなら言わなければいいのにと苦笑してしまう。
まとめると、立ち入り禁止エリア内の強大な魔獣は討伐する必要があるのでSランク以外の冒険者に仕方なく依頼をする、という感じのようだ。協会か国が依頼を発行するかはケースバイケースということになる。まあ基本は国の報告を受けた協会が発行すると考えておけばいいだろう。
「で、合っているか?ベル。」
「ええ……SランクではなくAランクの方に依頼しているのも不承不承の決断です。私は幸いにもまだ王女なので、魔獣制度関連の判断はした事がありません。全部聞いただけの知識です。でももし自分が判断する立場だったらどうするでしょう……正直わかりません。」
気にするなとベルの頭を軽く撫でてやる。
「アキ……よくわからないよ。」
「ち、ちゃんと説明しなさいよね……!」
「うぅ・・頭が痛いですー……。」
「アキ!ほら!小鳥が飛んでいるのだ!」
レオ、エレン、ソフィーは一連の会話が全く理解出来なかったようで、頭の上に「?」マークを浮かべている。エリスについては……言うまでもないだろう。ちゃんと理解しているのはベル。次いでアリア、セシル。少し怪しいのが……ミルナ。ある意味ミルナに関しては「全部完璧に理解出来ていますわ!」と誤魔化そうとするので一番質が悪い。まあ確かに情報量が多すぎて、少し難しかったかもしれない。要約してあげた方がいいだろう。
アキはイリアの事についての重要な点だけを総括し、ミルナ達に説明する。
「一番筋が通っている説明としては、アイリス女王が強大な魔獣発生の報告を受け、渋々ながら依頼を発行する決意をした。ただ立ち入り禁止エリア内なので、Sランク以外で適切な人選を、と冒険者協会に依頼し、協会がイリアを派遣。イリアが依頼を受けて討伐に向かった。」
ただこれはあくまで全ての情報を真実として考えた場合の話だ。つまりアイリスに依頼を発行したか確認することが先決だ。もしアイリスがその事実を認めたら、この予想が正しいだろう。
「どちらにしろ協会は何か知っていると思うよ。Sランク以外の冒険者に立ち入り禁止エリア内の魔獣討伐を依頼する時点で普通はおかしいと感じる。」
Sランクや王家しか立ち入りを許されていないエリアにわざわざSランク以外の冒険者を派遣する。以外と言っても難易度Sの依頼を受けられるのはAランクだけなのだが。まあ普通の感覚であれば間違いなくおかしいと感じる。だから協会も独自に調査している可能性が高い。それに立ち入り禁止エリアの依頼を遂行した冒険者から協会上層部に情報が流れていると考えるべきだろう。
「魔法組合やミレー、エスペラルド王家は白。冒険者協会はグレーだと思う。他国は……まだわからない。まあ、あくまで俺の勘だからあてにしないで。」
アキの説明にミルナ達が感心したように頷いている。どうやらちゃんと理解して貰えたようで一安心だ。
「ミルナ、俺の予想を言っていいか。」
ここからは完全にただの推測だ。何の根拠もない。
「はい、お願いしますわ。」
「多分イリアの依頼はミレー王国からではない。」
「そ、そんな……!つまりイリアが依頼を受けた理由だけじゃなく、依頼内容まで私達に嘘を言っていたと!?」
ミルナが口に手を当てて驚く。
「これは俺も先入観でミレーだと勝手に思っていた。だが情報をこうやって書き出すだけでおかしい事に気づくはずだよ。」
アリアから紙を受け取り、イリアの情報を箇条書きにする。
・イリアはミレー王国の要人救出の依頼を受けたと言った。行先は月夜の森。
・イリアの本当の依頼は魔獣討伐。エスタートの情報にて確認。
・月夜の森でイリアの母親が命を落としている。エスタートの情報にて確認。
・依頼は受託しているが、遂行中のまま行方不明。ベルが書類にて確認
その紙をミルナやベル、そして残りの子達にも見せる。
「こう書くとわかりやすいだろ?」
「はい……。イリアの依頼がミレーのものだと言う確固たる証拠は一切ありませんわ。」
ミルナが肩を落としながら呟く。
爺さんの情報は、イリアの母親が月夜の森で命を落としているという事、難易度Sの指名依頼で魔獣討伐に行ったという事、この2つだけだ。ミレーや月夜の森に行ったという事実は無い。そしてベルが調べた情報は、イリアが難易度Sの依頼を受けて未達成という事だけだ。ミレーの依頼だという証拠はどこにも無い。
「つまり俺達は先入観だけでイリアの依頼はミレー王国からの依頼だと決めつけていた。ただよく考えるとミレーに行くという情報はイリアの言葉だけだ。」
「ちょっと!アキはイリアが嘘をついているというの!」
隣に座っていたエレンが不満そうな声を上げる。
「エレン、落ち着け。イリアを貶しているわけじゃない。多分エレン達を巻き込まない為の嘘だ。エレンやみんなから聞いたイリアは優しい子だからな。」
「そうね……うん……アキごめんなさい。」
素直に謝るエレンの頭をぽんぽんと軽く撫でてやる。
「俺がイリアでもそうする。ミルナ達が追って来ても危険に晒さない為にね。イリアは依頼自体は受けた。ただミレーではなく他国のものだろう。多分サルマリアかリオレンド。エスペラルドであればベルが把握してないとおかしいからね。ミレーはイリアのカモフラージュじゃないかな?」
つまりアキの予想は、イリアは何か知っていて、何かを隠している。そして冒険者協会も同様に何かを知っていて隠している。
「とりあえずこれ以上はアイリス女王と話してみないとわからないな。ベル、女王との話し合いを出来るだけ早く調整してくれ。」
「はい、わかっています。明日、早速打診します。」
「アイリス女王との会合が終わるまではミルナ達は今日と同じ行動で頼む。」
全員がわかったと同意してくれた。
打ち合わせはもうこれくらいで十分だろう。今日は相当話した。長い一日だったなとアキは一息吐く。ゆっくり風呂にでも入って早めにベッドでゴロゴロしたい。
「アキさん、ところで先生のお仕事はいつからになったんですかー?」
ソフィーが手を挙げて尋ねてくる。確かにその話はまだしてなかった。
「明日からになった。だから明日から1週間だね。」
「そっか。アキ先生、頑張ってね?」
レオが尻尾を可愛く振りながら応援してくれる。
「アキさんは魔法学校で今大人気なんですよ。女子生徒が皆アキさんの事を見ていました。可愛い子達ばっかりです。明日から楽しみですね、アキさん?」
「女王を助けたとかで女子生徒のヒーローです。学園長も猫の獣人さんだし、明日からアキさんやりたい放題ですね?」
アリアとセシルが余計な事を付け加えてくれたおかげでうちの子達がいつもの笑顔に変わる。せっかく平和に終わりそうだったのに……。
「2人のせいでまた長い夜になりそうなんだが。どうしてくれるんだ。」
「覚悟してください、自業自得です。」
「学園長の件でお話はするっていいましたよね?」
アキ絶対主義の2人なのに冷たい。味方してくれない。
「あらあら、アキさん、朝言った事はお忘れですの?」
「アキさんと今夜もお話ですー!」
「こ、こ、この変態!相変わらず節操がないんだからっ!」
「アキ、僕は悲しいよ?僕の尻尾じゃそんなに不満?」
うちの子達がいつの間にかアキを取り囲んでいる。お話する準備万端だ。
「ベル、エリス助けて。」
無駄とはわかりつつも、うちの王女様と我が騎士に助けを求めてみる。
「うふふ、アキさん。本当にしょうがないお人。首輪でもつけましょうか?」
「アキ、お前はいつもいつも!逆に私の物にしてやるのだ!」
ベルなら本気で首輪をつけてきそうだ。恐ろしい王女様だ。そしてエリスは意外に独占欲が強い。というよりうちの子達は全員独占欲が強いので、すぐにやきもちを妬くし、嫉妬する。まあ……アキもそうなので人の事はいえないが。
しかし彼女達は毎晩毎晩何かしらの理由を見つけて「お話」してくる。よく飽きないものだなと呆れてしまう。でもミルナ達の幸せそうな表情を見られるから言う程悪くない。それにアキもなんだかんだ楽しんでいる。彼女達との時間は居心地がよくて最高だ。必要とされている、自分の大事な居場所だと思えるから。