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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第九章 ミレー王国・王都レスミア
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2

 アキは言われた通りベルの隣に腰掛ける。するとベルが嬉しそうに腕を絡めてもたれかかってくる。彼女の綺麗な銀色の髪から優しい甘い香りが漂う。ミルナ達しかり、ベルしかり、女性の髪は何故これ程いい匂いがするのだろう。ドキドキして思考が纏まらなくなるからそんなに密着するのは止めて欲しい。


 しかしこれでは確かに爺さんに王女を落としたと言われてもしょうがない。アキはベルの行動をみて溜息を吐く。ベルは美人だし、いい子なので慕ってくれるのは勿論嬉しい。だがその反面、自分は節操がないのかと改めて思ってしまう。


「久々に道中が楽しいです。いっぱいお話してくださいね?」

「いいよ。でもそんなにくっつく必要あるか?」

「うふふ、いいじゃないですか。アキさんは私のお気に入りなんです。」


 この表情をしているベルには何を言っても無駄なので彼女の好きにさせる。きっと彼女には心を許して色々と話せる友人がいなかったのだろう。それに加えてアキには異世界の知識があり、ベルの好奇心を擽っている。どちらかと言うと慕われているというより、彼女の言う通り、気に入られているのだろう。


 アキはとりあえず座ったが、他の子達がまだだ。流石に王女様の許可なしで勝手に動く訳にも行かず、ミルナ達はベルの指示を待っている。


「セシルさん、アリアさんはいつも通りで大丈夫です。エリスさんもアキさんの騎士として待機していてください。」


 ベルがアキに会釈する。後はアキの好きにどうぞと言ってくれているのだろう。


「アリア、セシル、俺の近くに適当に座って。色々ベルと話すからいつも通りお願い。エリスは好きにしてていい。」

 

 アキが遠慮なくアリア達に指示を出す。


「わかりました。」

「はい!」

「了解なのだ!」


 アリア達は即座に返事をする。


 さすが頼りになるアキの従者達だ。アキが大事な話を誰かとする時、セシルはいつもアキの会話から重要な情報だけを抜き取りまとめてくれるし、アリアは必要に応じてその都度、紙やペンだったり、飲み物だったりを準備してくれる。そしてエリスはアキ達の邪魔にならないようにいつも静かに待機してくれる。


 アリア達に関しては許可を出したベルだが、ミルナ達については何も言わない。ただずっと立たせているのも可哀そうなので、アキがベルを見つめると、彼女は不敵な笑みを浮かべてくる。


「あれ?他の皆さん、まだいるんですか?邪魔なので馬車の外にでもへばり付いておいてもらえますか?」


 相変わらずこの毒舌王女様はさらっととんでもない事を言いやがる。というか依頼開始早々うちの子達に喧嘩を売らないで欲しい。相手がベルだからミルナ達も文句を言うに言えず、全員が不満そうな顔でアキを睨んでくる。とりあえず面倒なのでベルの頬を引っ張る。


「やめろ、この腹黒王女。うちの子達を苛めるなと言ってるだろう。」

ひゃひれす(いたいです)!やっ……!もう!私にそんな事するのはアキさんくらいですよ!」

「されたくないならそういうことすんなよ。」

「……ふふ、じゃあされたいのでこれからもしますね。」

「はぁ……。好きにしろ。」


 駄目だこの王女。自分の立場をいいことにミルナ達で遊んでいる。


「アキさん、助けてくれないです?」


 ソフィーが不満そうに尋ねてくる。アキが助け舟を出さない事が納得いかないらしい。ミルナやエレンもちょっとだけ口を尖らせて可愛らしく拗ねている。


「心配するな。ベルは本気でいっているわけじゃないからね。もし本気でミルナ達を乏しめてたら俺がとっくに殺している。」


 アキ殺す発言に焦るうちの子達。


「アキ、そ、そこまで言わなくてもいいわよ……・?」

「うん……だって、ほら王女様なわけだし。」


 エレンとレオが心配してくれるが、アキにとって彼女達は特別なので何ら問題はない。当然の事だ。


「関係ない。ミルナ達が貶されたら誰であろうと殺す。まあ……それにベルがこんな事で怒るわけがない。俺が気に入った子だぞ?」

「うふふ、しょうがないお人。でもそこまで言ってくれるからこそ私達は慕っているんですけどね?」


 ミルナがくすくすと嬉しそうに微笑む。


「卒が無さ過ぎてつまらないです。少しくらいは取り乱してください。」


 今度はベルが口を尖らせて拗ねる。


「ベル、いいから座らせてやれ。」

「ふふ、はい、アキさん。では皆さん、お好きにしてください。」


 座る事を許され、少しは落ち着いたのか、座席に腰かけるミルナ達。人間関係という意味でまだまだ波乱がありそうな道中だが、それはそれで楽しそうだ。アキはまだ見ぬミレーへと思いを馳せる。何が待っているのか。また一つ、別の国を物見遊山出来る。着々と夢が叶いつつあるなと柄にもなくわくわくしてしまう。

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