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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第八章 真実
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3

 冒険者協会から帰宅すると、屋敷にはここ数日アキの迎えに来ていた王家の馬車が停まっていた。馬車の側にベルーリが立っており、アキの姿を確認すると丁寧にお辞儀をしてくれた。


「アキ様、突然のご訪問申し訳ございません。アイリーンベル王女殿下からお話があるということでして。」

「申し訳ないですがこれから大事な打ち合わせがありまして、屋敷を離れるわけには……。」


 アキがそう言いかけたところでベルーリが頭《かぶり》を振る。


「申し訳ありません……アイリーンベル王女殿下は既にアキ様のお屋敷でお待ちです。アキ様の従者であるアリア様とセシル様、そしてSランクのエリス様がご対応してくださっております。」


 どうやらベルがアキの屋敷内で暴れているらしい。王女権力的な意味で。果たしてアリア達は生きているだろうか。早く行ってやらないとさすがに可哀そうなので、足早に屋敷のリビングへと向かう。扉を開けて中に入ると、セシル、アリア、エリスが助かったと言わんばかりに安堵の表情を浮かべる。


「生きてるか、セシル。耳が垂れ下がってるじゃん。」

「だって、だってー!」


 近寄ってきたセシルを撫でてやるアキ。気持ちいいのか、兎耳がぴくぴくと動く。やはり兎はとても可愛い。


「アリアとエリスは別に大丈夫だっただろ?」


 残りの2人にも声を掛ける。

 

「ええ……ですが前もって言って頂けると……。」

「私がこういうの苦手なの知ってるだろ!アキ!遅いのだ!」


 まあ、とりあえずアキが帰宅するまでなんとかなったようだ。ともかくこの惨事の元凶である銀髪王女様の後ろ姿が見える。さっきからソファーに座ったまま一向にこっちを向こうとしない。なんか癪なので、アキ達の会話に一切反応しない王女様の背後に近づき、軽く頭を殴っておく。


「いたっ……・アキさん、酷いです。」

「帰って来たんだからこっちを見るくらいしろ。」

「ふーんだ。しりません。」


 ベルは何故か少し不機嫌だ。


 しかし2人のやり取りをミルナ達が冷や汗を垂らしながらこっちを見ている。いったいどうしたのだろう。


「え、みんなどうしたの?」

「アキさん、王女様!その人王女様ですわよ!なに私達の頭殴る感覚でやっちゃっているんですの!」


 ミルナが必死に突っ込む。


「だって、セシル泣かせた。王女だかなんだかしらんが許せん。」

「いいから!別に私は大丈夫ですからあああ!」


 今度はセシルが必死に止めてと訴えてくる。


「セシルも殴っとく?」

「むりむり、むりだから!」


 このままでは一向に話が進まなさそうなので、アキはベルの対面のソファーに座る。話も長くなりそうだし、とりあえずミルナ達にも座るように指示する。


「で、ベル。急にどうした?」

「依頼の確認を……と思いまして。それなのにアキさんいないし、可愛い兎耳まで飼っているし、綺麗なメイド迄いるし、さらには金髪美少女騎士まで装備しているとかどれだけですか!」

「え、それで不機嫌なの?」

「し、しりません!」


 ベルが拗ねたようにそっぽを向く。困った王女様だ。


「まあ、彼女達が慕ってくれているのは光栄だけどね。あ、兎耳だけはやらん。あれは俺の耳だ。」

「あれって捥げるんでしょうか?」


 アキの発言を聞いてベルが不思議そうにセシルの耳を眺める。


 多分今ベルに突っ込めるのはアキだけだろう。全員、王女というベルの存在に委縮してしまい、何も言えないようだ。兎耳の危機にあるセシルですら声を出すのを必死に我慢している。


「まあ、その話は後にしよう。まずはミルナ達への説明からだ。せっかくだしベルも付き合って行くといい。時間は大丈夫か?」


 ベルは同席させても問題ない、むしろ都合がいい。


 アキが異世界から来たことは実は既に彼女に話してある。話す事はしばらくないと思った次の日に話す羽目になるとは思わなかった。ただアキから話したというより、既に見抜かれて白状させられたと言ったほうが正しい。アキの魔法の使い方が特殊過ぎたことで「もしや」と思ったらしい。最初からやたらフランクに話して来たからおかしいと思ったが、そういう事だったのかと納得した。この世界での礼節や常識を会話で確認する為に、敬語を使わせずベルと呼ばせた。まあ、異世界人であれば、ベルが何も気にせず、気軽に話せる友達になるかもしれないと期待していたのもあるらしいが。ちなみに異世界の事に確証を持ったのは、アキが提案した為政や代替案を見たときだと言う。あれでアキがこの世界の人間ではないと確信したとの事。


 心配だったのは、闘技大会で他の王族にもアキが異世界出身だという事実に気づかれたかもしれないという事。ベルが気づいたのだから当然の帰結だ。だがベル以外の王族、他国も含め、は特に疑問に思っていなかったから安心していいとベルが教えてくれた。ベルがそう言うのであれば大丈夫だろう。


「ええ、今日は1日空けておきました。」

「王女って暇なのか?それに護衛もつけずに1人で来て大丈夫か?」


 ふと疑問に思っていたことをついでに聞いておく。


「ふふ、秘密です。でも1人なのはいいんです。あくまで私はただの王女で、女王ではありません。それにこれはプライベートですから。この国が平和だからこそプライベートの際は自由に出歩けるんですよ?」


 知っているでしょとベルが目で訴えてくる。


「ああ、なるほど。」


 前置きはもういいだろう。アキは一呼吸おいて、ミルナ達を真剣な表情で見つめ、彼女達に告げる。


「ミルナ、ソフィー、エレン、レオ。今からイリアに関わる重要な話をする。聞いたらおそらく引き返せない。各国、王家を敵に回すかもしれない。それでも聞く?」

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