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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第七章 闘技大会
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19

 アキ達は屋敷に戻り、リビングのソファーに腰掛ける。アリアとセシルは既に帰っており、到着するなりアキ達を祝ってくれた。正確には「アキを」だったが。2人ともやはり完全にアキ絶対主義らしい。あの事件のわだかまりを無くすにはまだ時間が掛かりそうだ。エリスはエスタートのところに用事があるとかでまだ帰ってない。


「アキさん、かっこよかったです!耳触る?ご褒美。」


 セシルが積極的に耳を差し出してくるのは珍しいので遠慮なく愛でておく。


「アキさん、お疲れ様です。アキさんにお仕えできることを誇りに思います。」


 アリアも嬉しそうに称えてくれる。


「長い1日だった……とりあえず無事Sランクになったしいいか。終わりよければすべてよし。」


 満足して目を瞑るアキ。


「アキさん?わかってる癖にわざとらしいですわよ?」

「お話でーす!」


 ミルナとソフィーが元気よくアキを叩き起こす。


「やだ。」

「アキ!ほんとにあんたは!そこに座りなさい!」

「僕は悲しいよ?いや……僕もさすがに怒ってるよ?」


 エレンだけでなくレオまで完全に敵にまわったようだ。


「皆さん今日はどうされたんですか?」


 アリアが尋ねる。


「一言で言うとアキが王女様落としたのよ!」


 エレンが簡潔に説明する。


「詳しく聞きましょう。」


 アリアが即答する。ミルナ達が、アキが王女をベルと呼んでいた事、敬語無しで仲良く話していた事、明日デートする事を、説明する。それを聞いたアリアはいつの間にかアキの背後に立っており、いつものように肩を押さえてつけてくる。セシルもちょっと拗ねているようで耳をぴくぴく動かしている。


「あれ、アリア?セシル?」

「折檻が必要なようですね。」

「アキさんなんてしりません。耳もしばらく禁止……は可哀そうだから……1時間だけ禁止です!」


 2人にも拗ねられた。セシルの拗ね方はアキに気を遣い過ぎで逆に可愛い。


「これ俺が悪いの?」

「当たり前ですわ!表彰式で言った事を速攻で実行しないでくださいませ!」


 ミルナがアキの前で仁王立ちして威嚇してくる。


「ミルナ、俺も驚いている。今後の為に王家と繋がっておきたいとは思ったけど、まさかすぐに実現するとは。俺には言った事を現実にする力があるのかもしれないな。」

「今後の為にやってくださっているのは感謝します……けど何か腑に落ちませんわ。あとそんな力はありません。」

「いや、意外にあるのかも?今まで言ったこと全て実現しちゃってるし……。」


 アキが意味深に呟く。どうにか話を逸らす為にくだらない話をしてみたが、さすがに誰も騙されないだろうと思う……。


「でもそう言われればそうなのよね……」


 エレンがこんな話題にも真面目に答えてくれる。やっぱめっちゃ良い子だ。


「発言には気を付けたほうがいいな。」

「そ、そうね!もしアキが本当にその力があるとしたら、願いってあるのかしら?」


 エレンが興味深そうに聞く。


「あるよ、皆1人1人に対して。」

「そ、それはちょっと興味ありますわ……。」


 ミルナも話に乗ってくる。そして他の子達も聞きたいという顔をしている。うまい具合に話が逸れてくれたのでエレンには感謝だな。このまま忘れてもらおう。


「リオナ。早くずっと女の子でいられますように。」

「あ、それは……アキ……嬉しい、ありがとう。」


 レオが嬉しそうに微笑む。


「ソフィー。暴走が治りますように。治っても慕ってくれますように。」

「大丈夫です、それは心配ないです!あと暴走は気を付けますー……。」


 さすがに自覚しているらしい。気を付けると宣言してくれたのでよしとしよう。


「アリア。これからもずっと優秀な側仕えでいてくれますように。」

「勿論です、これからもアキさんのお望みのままに。」


 アリアはアキに向かって一礼する。


「セシル。耳があと10本くらい生えますように。癒し倍増。」

「なんでええええ!そんなに生えたら困るから!癒し別に増えないからあああ!」


 セシルが半分涙目になりながら自分の耳を守るように握っている。

 

「冗談だ。これからも優秀な秘書でいて欲しい。」

「はい!もちろんです!」


 表情が一転し嬉しそうな笑顔をアキに向ける。


「エレン。ずっと断崖絶壁万歳。あ、これは冗談じゃなく本気。」

「ぶころおおおおす!今すぐしねええええ!」


 エレンが飛びかかってくるので受け止めてやる。


「まあ、エレンはエレンのままがいいってこと。恥ずかしいから言わせんな。」

「うん……それならいい。」


 エレンはアキの腕の中で嬉しそうに頷く。


「最後にミルナ。」

「はい!」


 オチはエレンでついたと安心しているようだ。


「ミルナの詠唱が無くなりませんように、誘惑が上手くなりませんように、毎日下手な誘惑しに来ますように。後、下着を散らかすな、部屋片づけろ、少しは料理しろ、エロい知識が壊滅的。大気をもやせー。ばーか。」


 とりあえず思いついた事を全部並べる。


「それ願いですの!?最後の方は命令だし、最終的にはただの悪口になってますわ!」


 ミルナが涙目になりながら必死に叫ぶ。あながち間違っていないのを自覚しているのか、反論はしてこない。


「つまりポンコツかもしれないけど、俺はそんなミルナがいいって事。無理に変わろうとしなくていい。そんなミルナが可愛くて仕方ないんだ。」

「は、はい……。」


 はっきり言ってやる。ミルナが赤面して俯いてしまった。まあ、喜んでいるようだしこれで大丈夫だろう。


「終わりよければすべてよし。風呂行こう。」


 無事に「お話」を回避できたと思い、ソファーから立ち上がろうとするが、アリアに再び押さえつけられる。


「え、なに?」

「アキさん、これはこれ、って言葉知っています?」


 アリアがにこやかに微笑む。


「うまく話し逸らして終わる流れでは?」

「そんなわけないです!あれはあれなのです。お話は別ですー。王女様が言っていた秘密についても話してもらいまーす!」


 ソフィーが笑顔近づいてくる。


「それにSランク戦の時にエリスさんの事も口説いていましたわ。ちゃんと覚えていますわよ?」

「僕達が真剣に戦っている時に酷いよアキ。」

「覚悟しなさい!」


 ミルナが黒い笑みを浮かべている。レオとエレンも迫力ある顔で威圧してくる。この子達はアキに説教する時、基本笑顔なのが怖い。

 

 そこから3時間拘束された。さすがにベルとの秘密については口を割らなかった。それに明日の彼女との約束も「デート」のままにしておいた。図書館でこの国の秘密についてベルと話す事はまだ伏せておきたい。

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