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「では私の正直な気持ちをお話します。正直このお店の事が無ければショルダードに私はいないと思います。男の人にとっては・・・天国のような場所かもしれませんが、私みたいなただの街娘には居心地が悪いです。」
やはりショルダードには色々と思うところがあるらしい。
「まあそうだよね。」
まあこんな花街しか観光名所がないような街が女の子にとって住みやすいわけがないだろう。さらにショルダードは辺境にある軍事都市だ。つまりいつ隣国との小競り合いに巻き込まれてもおかしくはない。メアリにとってショルダードは娯楽がなく、危険しかない場所というわけだ。戦闘狂で遊郭遊びが大好きな男でもない限り、こんなところに誰が好んで住みたいと思うだろうか。
「ですです。さっきお客さんが『王都においで』って言ってくれたじゃないですか。滅茶苦茶心が揺れましたもん。」
ここだけ聞くとアキがナンパしたように聞こえるが、そんな事はしていないと断言しておく。あくまでメアリの身に危険が迫るような事があったら王都でかくまうという話をしただけだ。この辺をはっきりさせておかないと、滅茶苦茶説教し始める子達がうちにはいるからな。余計な事を言われる前に後でエリザとイリアにちゃんと言い聞かせておこう。
「他にはある?」
メアリが今言ったのはあくまでショルダードの街に対する文句。サルサドールに対しても色々あるはずなので、アキとしてはその辺を聞きたい。
「まー・・・その・・・あとはサルサドールさんですかね・・・」
どこか言い辛そうにメアリが言う。やはりサルサドールはこの街では相当な力を持っているのだろう。
「その辺詳しく聞きたいんだけどいい?俺が王女殿下御用達の商人としてショルダードに来ているのは知ってると思うけど、その商談相手が実はサルサドールなんだよね。」
アキの商談相手がサルサドールだと知っているのは一部の人間だけ。エクレールやサルサドールのようにある程度情報を握っている人物であれば、アキの目的は容易に推測はできるだろうが、一般人にはアキがショルダードへ来た理由なんてわからないだろう。せいぜい王女殿下御用達の商人が街に入ったとしか知られていないはずだ。
そして情報を持っている人間なら、アキの目的をわざわざ明かしたりはしない。何故なら王女殿下とのつながりを持つため、アキを利用しようと考える連中は多いからだ。その情報戦で優位に立つなら尚更他人に広めたりするわけがない。
「そうだったんですね・・・!」
「うん、だからメアリが協力してくれると助かるな。」
「ふむふむ・・・それならこのメアリにお任せください!」
メアリは何かを悟ったのか、胸をドンと叩いて宣言する。
多分アキに話しても大丈夫だと安心したのかもしれない。というかむしろアキの味方をしておいた方が良いと判断したのだろう。
だが実際その通りだ。アキの背後にはユキがいるからな。いくらこの街を取り仕切っているサルサドールと言えど、一国の王女に適う訳が無い。
「何でも言ってくれ。俺はメアリの味方をするよ。」
「やった!じゃあ全部話すので何とかしてくださいね!あの人は本当に面倒なんですよ!!!」
メアリが嬉しそうにぴょんと飛び跳ねる。
彼女の反応を見るに、サルサドールに対して相当溜まっているものがあるらしい。話の展開が予想外だったが、丁度いい。この際メアリには全部吐き出してもらうとしよう。それを聞けば彼の評価もおのずと見えてくるはずだ。




