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「私はメアリって言います。この今にも潰れそうなレストランで働いてます!」
どうやらこの店員はメアリと言うらしい。それより自分で「今にも潰れそう」とか言っていいのだろうか。厨房のほうで料理長らしき人物がもの凄い形相でメアリを睨んでいるが・・・多分あれが店主だ。まあ何も言ってこないところを見ると、店主にも料理が不味いという自覚はあるのかもしれない。
「メアリね。よろしく。」
ちなみにこのメアリだが、ミルナと同じ水色の淡い長髪をしている。そして雰囲気もどこかミルナに似ている。つまり何かポンコツな匂いがぷんぷんする。さっきからやたらと親近感が沸くのはそのせいかもしれない。
「年は16歳ですー!この店の看板娘です!あ、そしてあそこでこっちを怖い顔で睨んでいるのがパパですよ!あの人がゴミみたいな料理を作ってるんです!」
聞いてもいないのに自分の情報をぺらぺらと話し始めるメアリ。
さっきからやたらと自分の店の料理を酷評すると思ったが、店主の娘だったようだ。それなら遠慮なく意見出来るのにも納得できる。ただ「ゴミ」は流石に酷い気がするが・・・こっちを睨んでいた店主が今度は泣きそうな顔になっているしな。まあ娘にそこまで言われたら悲しくもなるだろう。
「そんなに酷いとわかってるなら改善すればいいのに・・・」
「それは無理ですね。パパは料理のセンスがないので。」
溜息交じりにメアリが言う。どうやら今まで改善しようと色々と頑張ってきたが駄目だったらしい。
「じゃあなんでレストランなんかやってるんだ?」
「ここは元々ママがやっていた店だったんですよ。でもママが亡くなって・・・この店まで無くなるのは寂しいのでパパと2人で頑張ってるんです!」
なるほど。ここは母親が残していった大事な店というわけだ。それを父親と娘で守り続けているんだな。
「悪い事を聞いたな。」
「大丈夫ですよー!」
「でもいい話だ。」
「えへへ、そうですか?でも確かによくそう言われます!」
きっとこの親子の頑張りを応援したい客がこの店に通い続けているのだろう。だから料理が不味くても潰れないのだ。きっとアキもこの親子の事情を知っていてこの街に住んでいたら、同じことをする気がする。まあ不味い料理を食べ続けるのは精神的に苦痛なので、そこは改善させるとは思うが。
「でもさ、お父さんが料理得じゃないならメアリが料理すればいいんじゃないの?」
髪の色や雰囲気だけでなく、顔もどこかミルナに似ている。つまりメアリは美少女だ。間違いなく誰に聞いても可愛いと言うだろう。そんな彼女が作る料理なら、例え不味くても店は繁盛するのではないだろうか。それにこの親父さん以上の料理を作れる人はそうはいない気がする。誰が作っても「多少はましな味」になるはずだ。
「えへへ・・・私に出来ると思います?あの人の娘ですよ?」
そうでもないらしい。多分メアリも相当料理が苦手なようだ。
「でもお母さんは料理上手だったんだよね?」
「私の料理はパパ譲りらしいんですよね・・・」
「それでも女の子が作った方がお客さんが来るんじゃないかな。」
「やっぱりそうですよね!私もそう思ったんです!だから試しに作ってみたんですけどね・・・常連さんに二度と料理しないでほしいと泣きながら言われました!」
残念ですと可愛らしい笑みを浮かべるメアリ。
どうやら彼女の料理は父親譲りではなく、父親以上らしい。
「なるほど・・・とりあえずこのお店の事はわかった。陰ながら応援してるよ。」
これ以上は聞くまい。変に色々聞いて「じゃあ私の料理を試食してみません?」とかなったら全力で逃げるしかなくなる。
「ありがとうございますー!お客さんいい人ですね!それでこの街の何を聞きたいのです?気分がよくなったので何でも答えちゃいますよー!」
幸いにもメアリの機嫌は上々のようなので、このまま本題に入るとしよう。




