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「アキ君、ここがいいんじゃないかしら。」
適当なレストランを探して商店街を歩いていたら、エリザが良い店を見つけたのか、提案してきた。
「どうしてその店にしたんだ?」
「駄目だったかしら・・・?」
エリザがシュンと猫耳を下げながらアキの様子を伺ってくる。
「いや、駄目じゃないよ。理由が気になっただけ。」
周囲にはいくつもレストランがあり、どの店にしようかと悩んでいたくらいなので、エリザの提案はむしろありがたい。だがどうしてその店を選んだのか気になる。
数多くのレストランからエリザが選んだ店は別に高級感溢れる外観でも、お洒落な見た目でもない。良くも悪くもどこにでもありそうな普通のレストランだ。軍事都市だからか、お洒落な店は確かに少なかったが、それでも多少はあった。それなのにどうしてエリザはこんな普通の店を選んだのだろう。
「ピンと来たのよ!」
「意味がわからないんだが?」
「私の鼻は間違いないのよ?美味しい店は一発でわかるの!」
ドヤ顔でそう語るエリザ。
どうやら「勘」らしい。正直不安だ。この猫は意外に抜けているところがあるし、自信満々な時ほど失敗する傾向にあるからな。
「じゃあそこにするか。」
とはいえ別にどこでも構わないのでエリザの案に乗る。美味しい食事が取れる事に越したことはないが、別にアキ達は美食を楽しみにショルダードに来ているわけではない。あくまで目的はサルサドールの調査なのでとりあえず腹さえ膨れればなんでもいい。ということでここは一つエリザを信じてみる事にする。まあもしかしたら料理は滅茶苦茶美味しくて、サルサドールの情報も手に入るかもしれないからな。
「ふふん!期待しておくといいわ!」
だがこの猫のドヤ顔を見ると外れ臭しかしない。
「はいはい。」
「あー!信じてないわね!見てなさい!すぐに『おねーさんの言う通りでした!ごめんなさい!』って言う羽目になるんだからね!」
本当に店が美味しくてサルサドールの情報も手に入ったら言ってやろう。むしろ土下座しながら言ってやらん事も無い。
「うー・・・まことにもうしわけございませんでした・・・」
エリザが涙目になりながら謝ってくる。
もう何があったかは言うまでもないだろう。料理が滅茶苦茶美味い・・・どころか不味かった。むしろどうすればここまで不味い料理が作れるのかというレベルで不味かった。店や店員は普通だったので安心していたが、料理を口にした瞬間「あ・・・」となった。
まあ我慢すれば食べれなくはないというレベルだったので、文句は言わずに食べていたのだが、エリザの方から謝ってきた。まあレストランなんて当たりはずれはあるし、別にエリザを責めるつもりはなかったのだが・・・本当に期待を裏切らない猫だな。というか逆にここまでの外れを引き当てられるのが凄い。
「別に気にしなくていいよ。腹が膨れればいいんだから。」
「で、でもおねーさんの威厳が・・・」
「そんなものは元々皆無だから安心しろ。」
「か、皆無ってなによ!!!」
エリザが威嚇してくるが、猫耳や尻尾はシュンとしているし、いつもの勢いがない。さすがにこの状況で威張れる程の図太さはないようだ。
ちなみにイリアは「むむむ・・・」と難しい顔をしながら無言で料理を食べている。出されたものは意地でも食べきるつもりらしい。偉い。
「あら、お客さん?お料理はお気に召さなかったです?」
アキ達が悪い意味で料理に夢中になっていたら、いつの間にか給仕係の女性が隣に立っていた。
「・・・んー、あまり?」
今の会話を聞かれていた可能性もあるし、ここは正直に答える事にした。
「あはは、ですよね!私も思いますー!というかお客さん、この街初めてでしょ?」
「よくわかるね。」
「だってそうじゃなきゃうちの店になんて来ないもん!」
気を悪くするかと心配したが、そんな様子は一切なかったので安心した。とういか堂々と言い切ることではない気がする。そもそも不味いと分かっているのか改善すればいいのに。まあとりあえずこの店員の女性は気さくな性格のようでよかった。
「お姉さん、せっかくだからこの街についてちょっと教えてくれない?」
料理の味についてはとりあえずおいておいて、アキ達が初めてこの街に来た事を店員の方から言い当ててくれたのはラッキーだ。色々とショルダードについて聞く切欠が出来たのでこれを利用しない手はないだろう。




