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「エリ先生が新しい学院長?それ、大丈夫なのか・・・?」
アキが臨時教師をした際、面倒みてくれたエリ。人柄は朗らかで、人当たりもよく、生徒からの人気も高い。これだけ見ると適任に見えなくもないが、エリはどこか頼りない。というかドジっ子キャラだ。アキが学院にいた時も色々とやらかしていた。だから生徒から人気はあるが、優秀な教師とはちょっと違う気がする。そんなエリに学院長が務まるのか気になった。まあエリザが選ぶくらいなのだから問題はないのだろうが。
「あー・・・アキ君からはそう見えるわよね。」
苦笑いを浮かべるエリザ。
「違うのか?」
エリに関しては本当にドジっ子というイメージしかない。
「ふふ、そうよ。あの子、ああ見えて仕事は早いし、正確なの。」
「エリ先生って滅茶苦茶優秀だったのか・・・」
「ええ。しかもちょっと抜けてるから生徒達からも良い感じに愛されているでしょ?自然と人に好かれる子だから学院長に向いているわ。」
エリザの言う通り、自然と人に好かれるのは才能だ。それでいて仕事も出来るのであれば言う事はないだろう。
「でもただの教師だったエリ先生が学院長に急になって文句は出ないものなのか?」
学院長というのは学院のトップだ。教師や生徒達を導いていかなければならない立場。人に好かれる才能と人の上に立つ才能は違う。エリは確かに生徒や教師たちから可愛がられているが、急に学院長になったら教師からは反感を買いそうだし、生徒からは「大丈夫なの?」と思われそうな気がする。
「まあ生徒達はちょっと不安そうだったわね。」
「エリザとは全然タイプが違うからな。」
「あら・・・そうかしら?」
エリザが何か言って欲しそうな表情でチラチラとこちらを見てくる。
褒められるのを期待しているのだろう。しょうがない、偶には可愛いうちの猫を褒めてやるとしよう。
「エリザはしっかりしているからな。俺の前ではちょっと子供っぽくて可愛いかったりするけど、基本的にはいつも凛としていて頼りになるお姉さん。生徒や教師達からはちょっと怖がられているかもしれないけど、学院長はそれくらいが丁度いいよね。信頼が厚い証拠だと思う。」
「そ、そうかしら!」
アキが褒めるとエリザは上機嫌になって尻尾をゆらゆらと揺らす。効果は覿面だったようだ。というか相変わらずチョロい。
まあ今はエリザの話ではないので、エリザの話はこれくらいにしておこう。
「それで・・・生徒が不安がっていたのにエリ先生にしたのはなんで?」
「まあエリは確かにちょっと頼りないし、まだまだ未熟なところは多いけど、その辺は今後の成長に期待ね。それまでは私がフォローすればいいだけだし。エリは絶対学院長に向いてると思うの。私の後継者はあの子しか考えられないわ。」
「教師達の反発は?」
「多少はあったけど、そこはね・・・?」
エリザが不敵な笑みを浮かべる。うん、多分教師陣はこの猫が力で黙らせたに違いない。まあとりあえずエリザが選んだ人物であれば大丈夫だろう。アキがこれ以上口を挟むことではない。それよりアキはエリザに言わなければならない事がある。
「ありがとな、エリザ。」
「え、な、なに?急にどうしたの?」
「エリザは俺との時間を作る為に学院長の席をエリ先生に譲ってくれたんだろ?」
エリザの行動は全部アキの為を思っての事だ。ちゃんと感謝は伝えておきたい。
「べ、別にそれだけが理由じゃないわよ!そのうちエリに任せようと思ってたもん!だから偶々よ!」
「でも今すぐの予定じゃなかったよね。」
「うっ・・・そ、それはそうだけど・・・」
「だからありがとう。それにこれでエリザはいつでも寿退職出来るな?」
「に、にゃ!?」
「違うのか?」
「ち、違わなくないけど・・・!」
慌てふためくエリザが可愛い。
とりあえずこれからはエリザともっと一緒にいられると言う事だ。仕事でいなくなるのはしょうがないと思ってはいたが、正直少々寂しい部分もあったので嬉しい。
「ねえアキ、そろそろ着くよ。イチャイチャするのはその辺にした方がいいと思うんだけど・・・」
イリアが呆れ顔で言う。
どうやらエリザと雑談していたら何時の間にか商店街に到着していたらしい。まあサルサドールの情報収集に来ているのに、エリザとどうでもいい雑談しているのは駄目だ。ここからは真面目モードで行くとしよう。




