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「そう言えばミルナちゃん達は今日はどうするのかしら。」
ショルダードの街を歩きながらエリザが聞いてくる。
現在アキはエリザとイリアを連れ、街の商店が集まる地区へと向かっているところだ。アキ達が泊っている宿は経済中枢圏域と言われる街の中心部にあり、周辺には何もない。生活必需品が売っているような店も、食事処も全くと言っていいほどないのだ。まあそもそもそこは貴族や商人達以外立ち入りが制限されているので、何もないのは仕方ないだろう。
ただそのおかげでベルフィオーレからの転移はしやすかった。勿論監視されている可能性はあるが、さすがに部屋の中にまで入ってはこない。覗き見されたり盗み聞きされないように対策をちゃんと打っておけば、ベルフィオーレから宿へ直接転移出来る。まあ念には念を入れ、ルティアを先に送り込んでおいたのだが。ルティアであれば誰にも察知されず街へと忍び込めるので、彼女をショルダードの街の外れに転移させ、街へ侵入、宿の安全を確認してもらってからアキ達が転移した。
「ミルナ達は冒険者協会へ依頼を受けに行くっていってたよ。ベルは王城へ国務しに行ったし、セシルやアリアは買い出しと屋敷の掃除をしておくってさ。」
「あら、みんな真面目ね。」
てっきり遊びに行くと思っていたわとエリザ。
それはアキも思った。ミルナ達に留守番させたことで、不貞腐れてショッピングにでも行くとばかり思っていたが、みんなそれぞれに「やることをやっておく」と出掛けて行ったのだ。
一応気になって理由を聞いたところ、「当然お留守番は嫌ですわ」と不貞腐れてはいた。だが「アキさんが遊んでいるわけじゃないのに、私達だけ遊ぶのは違いますわ」とミルナに言われた。正直ちょっと見直した。
「ちなみにエリザは学園の方は大丈夫なのか?ずっと俺に付き合ってくれてるけど・・・」
うちの猫は他の子達とは違い、定職に就いている。ミレー王国魔法学院の学院長だ。エリザが一緒に住むようになってからも週に2~3日程度行かなければならないと言っていたので、よくミレーへ転移で送迎していた。だが最近ではすっかり学院へ行かなくなった。「休みを取ったの」「仕事を片付けておいたので大丈夫」と言ってずっとアキのお手伝いをしてくれている。
「・・・だ、大丈夫よ。」
そう返事するエリザだが、一瞬間があった。
これは多分何かある。
「で、本当は?」
「うー・・・にゃんでわかったの・・・」
エリザが猫耳をペタっと下げながら聞いてくる。図星のようだ。ただその態度を見ればバレバレだ。というかうちの子達は感情表現が豊かだからわかりやすい。
「お、怒らない?」
「内容による。早く言え。」
「怒らないって言ってくれないと言いにくいじゃない・・・!」
まあアキが十分に稼いでいるから仕事を辞めたのとか言わない限り怒りはしない。ただアキが稼いでいるのは事実なので、エリザが仕事を辞めても全然大丈夫ではある。ただ相談もなくそれをするのは駄目だろう。まあエリザはそんな事はしないと思うので心配はしてないが。
「とりあえず言ってみて。」
「さ、最近はアキ君のお手伝いする事が多かったし・・・その・・・ミルナちゃん達のようにアキ君とずっと一緒にいたかったから・・・」
「うん。」
「学院長を他の人に任せたの。」
「辞めたって事?」
「や、辞めてはいないわ。まあそれでもよかったのだけれど・・・皆に引き留められたから名誉学院長になったのよ。」
「もっと偉くなった?」
「ううん。名誉とは言ってるけど、困った時にお手伝いするだけの雑用係みたいなもの。学院へは緊急時に行けばいいだけよ。後は気が向いた時にくればいいって言われたわ。学院の事が心配じゃないと言ったら嘘になるけど、私はアキ君といられるから丁度いいかなって。」
どうやらエリザはアキとの時間を作る為、そして手伝いをする為、一線から退いてくれたらしい。これはさすがに怒れない。まあ相談くらいはして欲しかったところではあるが、アキの為にしてくれた事だから感謝しかない。
「ありがとな。」
「う、うん!」
怒られないとわかったのか、エリザが嬉しそうに尻尾を揺らす。
「ちなみに誰に学院長の椅子を譲ったんだ?」
「アキ君も知っている人よ。エリって覚えてる?」
当然それは覚えている。エリことエリアーミ先生。アキが学院の先生の仕事を引き受けた際、色々とお世話になった人だ。




