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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十六章 迫る影
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「エクレールさんの計画に協力するのはやぶさかではないのですが、私はサルサドールが実際にどういう人間なのか知りません。」


 何かを提案するにしても、サルサドールの性格を知らない事には何も言えない。


 サルサドールに色々と怪しい部分があるのであれば、それを利用すればいい。真人間な商売人なのであれば、搦め手を使わなければならないだろう。まあアキとしては誠実な商売をしている人間を貶めるのはあまり気が乗らないが・・・別にそれをしたところでアキやミルナ達に何か被害があるわけでもない。そもそもサルサドールとは赤の他人。つまるところ、彼がどうなろうが正直どうでもいい。それにこの世は所詮弱肉強食だ。油断すれば喉元を食い破られる。だから競争に敗れ、潰れるであればサルサドールに商才がなかったというだけの話。


 ただエクレールの話を聞く限り、真っ当な商売人には見えない。色々と黒い噂もあるはずだ。その辺を上手く利用してエクレールに協力するのがいいだろう。


 とりあえず何を判断するにしても、サルサドールの情報が必要だ。


「それもそうね。じゃあ彼の噂や人柄について話してあげるわ。その代わりに何か良い案を言わなききゃだめよ?」


 情報を先払いするのだから見返りはよろしくねと念を押してくる。


「努力します。」

「ふふ、合格かしらね?『任せろ』と適当な事を言うより好感が持てるわ。」

「それはどうも。」


 とりあえずエクレールからサルサドールの性格や噂について聞く。


 彼女の話によると、サルサドールは一言で言うなら「金の亡者」らしい。さらに「欲望に忠実」で「他人の気持ちを考えない」人間なのだとか。まあ自分が経営する娼館の娼婦達を道具としか見ていないとエクレールは言っていたし、地位を振りかざして娼婦をお手付きにしようとしていたのだから、納得がいく話だ。別段驚きはしない。


 そして当然そんなサルサドールには黒い噂が絶えないのだという。何をしているのか掴めていないが、色々と怪しい取引をしているとエクレールは断言する。


「サルサドールは新しい娼婦の女の子ををよくわからないルートで確保しているのよね。しかも男に人気が出そうな美人ばかり。」

「つまり違法な人身売買をしていると?」


 この国で人身売買はご法度のはず。まあ奴隷という抜け道はあるので、裏工作をして狙った人物を奴隷落ちさせることくらい、権力と金がある人げならそれほど難しい事ではないだろうが。 


「そうね。奴隷落ちさせ、それを買ってるんだと思うわ。彼の娼館にいる元奴隷の娼婦達も『なんでこうなったのかわからない』と言っている子は多いの。」

「その子達はサルサドールを恨んでいるんですか?」

「いえ、逆ね。感謝している子の方が大多数じゃないかしら。窮地に陥って奴隷落ちした自分を拾ってくれたのだから。しかも彼のお店では普通に娼婦になった子達と、奴隷として買われて娼婦になった子達の待遇は変わらないの。つまり頑張れば今までの生活に戻れるかもしれないと希望を抱いて仕事している子達がほとんどじゃないかしら。」


 なるほど。もしサルサドールになにも後ろめたいところがなく、娼館の経営者として奴隷達を拾いあげているのであれば、確かに救世主と言えるかもしれない。だがどこか胡散臭い。非常にマッチポンプの臭いがする。


 ただ上手いやり方ではある。この方法なら裏工作がバレない限り、誰からも恨みを買わないどころか、感謝されるまである。そして本人は綺麗な娼婦達を手に入れられ、店も儲かる。ずる賢い手口だ。


「裏工作してると思います?」

「思うわ。明らかにおかしいもの。まあ・・・尻尾はつかめてないんだけどね。」

「つまりそれが明るみにでたら・・・」

「娼婦の子達からは恨まれる・・・で済めばいいわね。殺されるかも?」


 だがこれなら協力は簡単だ。サルサドールにそんな噂があるのであればそこから攻めればいい。


「ではまずはそこの裏付けを取りましょう。」

「出来るの?」


 自分が手を尽くしてもわからなかったのに、本当に出来るのかと訝し気な表情のエクレール。


「ええ、問題ありません。方法は秘密ですが・・・すぐわかりますよ?」


 何故ならうちにはどこにも負けない優秀で可愛い影がいるからな。

挿絵(By みてみん)

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