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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十六章 迫る影
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「おお!!あの子とそのもふもふを・・・いやもう全員で頼む!」

「こらっ!!アキ君!!何をバカな事を言ってるの!!」

「エリザ!なんだここは!パラダイスか!!」

「パラダイスなのはあなたの頭よ!!!」


 何とも酷い言われようだ。


 ちなみに何でこんな事になっているかだが・・・まあもふもふのせいだ。


 一応娼館に入ってからの事を順を追って話そう。


 アキはエクレールに連れられ、彼女の娼館「もふもふパラダイス」へ入った。中がどうなっているのかは想像つかなかったが、入ってみると意外に普通の屋敷でちょっと拍子抜けだった。というより入った途端に幾人もの娼婦達が待ち構えていると思っていたので、アキが勝手に身構えていたせいだ。実際には受付がポツンと1人立っているだけだったのだが。


 店に入ってからはエクレールが簡単に娼館の案内をしてくれた。まず入り口には受付があり、その左右にはちょっと豪華なリビング。来店した客はそこで軽食を取ったり酒を飲んだりして、娼婦の準備が出来るまで時間を潰すらしい。


 ちなみに娼館の内装は豪華の一言だ。立派なシャンデリアが上から吊るしてあったり、高そうな壺や絵画が飾ってあったり、どこかの王室に置かれていそうなテーブルやソファーが待合室におかれていた。正直豪華すぎて落ち着かない。


 ただ高級娼館に待合室なんて必要なのだろうか。こういう高級店に来るような客は一見ではなく、上流階級の貴族連中だ。店側からしたらちゃんともてなす必要があるだろうし、予約を取って予定をちゃんと組んでいるはず。


 だがエクレールに理由を聞いて納得した。当然この店は予約は取っている、というか完全予約制らしい。だがそれでもあえて待合室で軽食や酒を用意して、そこで敢えて客を待たせるのだとか。理由は「急に部屋に案内してもムードも何もない」からだそう。待合室で客を待たせ、いつ女の子が来るかのドキドキを楽しんでもらうのもサービスの一環らしい。アキからしてみればよくわからないシステムだが、娼館のいろはも知らない自分が文句を言っても仕方ない。エクレールが「そういうもの」だというならそうなのだろう。


 とりあえずこの娼館は、基本的には紹介制で一見さんはお断りだ。エクレールに招待されるか、客に紹介されないと、入れない。そして店に来たら、まずは女の子を一通り紹介される。そこでお気に入りの子を見つけるというわけだ。2度目以降はその子を指名するなり、他の子を指名するかは客の自由。新しい娼婦が入ったらその都度紹介もしてくれる。


 以上が娼館「もふもふパラダイス」の説明だ。つまりそのシステムに則るなら、アキは「この店にエクレールの招待で来た初回の客」という位置づけになる。


 というわけでこの店の女の子たちを全員紹介してもらう事になった。アキ達はエクレールに連れられ、店の奥にある特別室に案内された。まあアキ達は少々特殊な客なので、あくまで紹介してもらうだけだが。


 そしてエクレールが女の子を連れて部屋に戻ってきたあたりで、頭がパラダイスだとエリザに罵られた。


「ふふ、うちの女の子たちは可愛いでしょう?」


 エクレールが自慢げに語る。


「最高ですね!」


 即答する。


 エクレールが連れてきた娼婦達はほとんどが獣人だった。様々な種族の獣人たちがいて、どの子も美人で可愛かった。そして何よりもふもふだ。最高の一言。エクレールがこの店を「もふもふパラダイス」と頭のおかしい店名をつけたのにも納得した。まあ一部普通の人族がいて、よくわからない獣耳カチューシャのようなものをつけもふもふを気取っているふざけた子もいたが、それは見て見ぬ振りをしておいた。


「貴方がよければこの子達におもてなしさせるわよ?」

「是非!!」


 断る理由が見当たらない。むしろ頭を下げてでもお願いしたい。


 まあおもてなしと言っても当然変な意味ではない。アキはこれからエクレールと色々話す事があるので、その間この子達がお酌をしておもてなししてくれるというだけ。いわゆるキャバクラ的なやつだ。


 ただ娼館の女の子たちにそんな稼ぎにもならないような事をさせていいのかと気になったが、エクレールがアキの素性をいつの間にかばらしていたようで、みんなやる気満々だ。というか「上手くやればアキの妾になれるかもしれない」「愛人にする人を選びに来た」とかエクレールが適当な事を言ったせいらしい。余計な事を・・・と思わなくもないが、そのおかげで沢山もふもふ出来そうなので文句は言うまい。


「じゃあどの子にする?さすがに全員だとこの部屋は手狭になるから数人選んでね。」

「それじゃあ・・・!」


 アキがどのもふもふにしようかと目移りしていたら、エリザやイリアに両耳を抓られた。

 

「こら!アキ君!まちなさい!」

「ちょっと待った!」


 痛い。というかこの2人、秘書と護衛という自分の立場をすっかり忘れている気がする。連れて来たのは間違いだったかもしれない。

挿絵(By みてみん)

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