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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十六章 迫る影
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30

「どうした・・・?」


 急に大声を出すから驚いたじゃないか。


「ちょっと来なさい!!!」

「お話があるかな!!」


 アキの問いかけには答えず、鬼のような形相で首根っこを掴まれた。そして少し離れた場所へと引きずられ、エリザとイリアに問い詰められる。あまりに鬼気迫っているのでちょっと怖い。ちなみに木の実もひっきりなしに飛んできているので、ルティアもご立腹のようだ。


「・・・話はあとでいいだろ?お姉さんを待たせてるんだ。早く天国・・・じゃなくてお姉さんのお店にいかないとな!」

「今天国って言ったわね!?」

「気のせいだろ。」

「嘘おっしゃい!!」


 絶対に行かせないわとエリザが睨みつけてくる。


「エリザよ、男には行かねばならん時があるのだ。」

「何かっこよく言ってるのよ!この変態!!」


 一応アキはエリザの婚約者だ。変態とは酷いのではないだろうか。


 確かに声をかけてきた娼館のオーナーの店に惹かれたのは事実。「もふもふパラダイス」とかいう夢の国が待っているのだと心が少々ときめいてしまった。だがアキはあくまでサルサドールの情報収集の為にお店に行きたいだけだ。下心なんてこれっぽっちもない。


「酷いなエリザ。俺は話を聞く価値があると思っただけだ。夢のく・・・じゃなくて娼館に遊びにいくわけじゃない。あくまで情報収集が目的だ。俺の曇りなき眼を見てくれ。」

「何が曇りなきよ!?濁ってしかいないわよ!!」

「何故信じてくれない?」

「心に手を当てて今までの行いを考えて見なさい!」


 どうやらアキは全く信頼されていないらしい。


 うん、まあそうだろうな。もふもふの事になると我を忘れる自覚はさすがにある。というかいくらうちの子達がチョロくても、さすがに適当にすっとぼけただけでは誤魔化せないか。


「エリザ、大丈夫だ。信用してくれ。」

「まったく信用できないのだけれど!?」

「ちょっとモフるかもしれないけど、それくらいだ!」

「だからそれが駄目だっていってるんでしょうが!」

「よく考えて欲しい。お金を払えばそれが許されるお店だからセーフだ。」

「何開き直ってるのよ!?アウトに決まってるでしょ!!」

「まあまあ、落ち着け。」


 そもそもその娼館が「もふもふパラダイス」と言うだけで、獣人専門の娼館とも限らない。まあそんな店名しておいて獣人がいなかったら暴れるが。


「色んな意味で落ち着けないわよ!ね!イリアちゃん!」

「本当だよ!これに関してはアキは信用出来ないからね!!」


 うーむ、散々な言われよう。


「エリザやイリアも一緒に来るんだし、2人で俺を見張っていればいいだろ?」

「アキ君は見張っていても勝手に暴走するでしょうが!」

「・・・否定はできん。でもサルサドールの情報を得られそうだから行くしか選択肢はないと思うんだ。」

「そんなのはわかってるわよ!!」


 どうやら行かせてはくれるらしい。多分こうやって前もってアキに釘を刺しておくことで、変な行動に走らないようにする作戦なのだろう。


「そうだ!アキ君!」


 名案を思い付いたとエリザがピーンと猫耳を立てる。


「なに?」

「帰ったら私やリオナちゃん、セシルちゃんを好きなだけ愛でていいからお店では我慢しなさい!おねーさんとの約束よ!もし破ったら・・・暫く尻尾とか触らせてあげないから!」

「なんだと!俺としてはお店でも帰ってからもモフモフしまくりたいんだが!」

「馬鹿なの!?」


 正直に言っただけなのに、「駄目」だと一蹴された。


「いいからお姉さんと約束しなさい!!そしたら行かせてあげるわ!」

「・・・わかった。」


 ただ本当に店がもふもふパラダイスならそんな約束忘れそうな気がしなくもない。というか絶対に忘れる。だが娼館のオーナーをあまり待たせるわけにもいかないし、ここはエリザの提案に乗るとしよう。


「これで少しは安心ね・・・しかし自分の婚約者と娼館に行く日が来るなんてさすがに思わなかったわ・・・」


 エリザが疲れた表情で呟く。


「それは同感だ。」


 アキもさすがにうちの子達を連れて娼館に行くとは思わなかった。


 とりあえず話はまとまったので、お姉さんの元へ戻るとしよう。

挿絵(By みてみん)

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