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「もしかして貴女は娼館のオーナーですか?」
とりあえずこの女の素性の確認からだ。先程彼女は自分で娼婦ではないと言っていた。その上で「私の店」ときたら・・・答えはこれしかないだろう。
「ふふ、正解。聡明な子は好きよ?」
「それはどうも。でも貴女のお店に行くメリットはなんでしょうか。」
この女はアキが王女御用達の商人であると知って声をかけてきた。目的はなんだろう。単にアキに取り入って王女との繋がりを作ろうとしているのであれば、この人についていく価値はない。だがサルサドールに関連する人間なら話を聞くべきだ。
その辺を見極めなければならないが、下手な事を言う訳にはいかない。あくまで声をかけて来たのは向こう。会話の主導権はアキにあるはずなので、そこを上手く活かしていかないと駄目だ。
「そうね・・・可愛い女の子がいっぱいいるわよ?」
さすがにそう簡単には本音を言ってはくれないか。
「可愛い子はこの2人で足りてますので。」
「ふふ、じゃあどうしてこんな場所へ来たのかしら?」
まあそう返されるとは思っていた。女性を求めていないのに花街へ来ること自体おかしいからな。だがちゃんとその答えは用意してある。
「ただの観光ですよ。この街は花街が盛んだと聞いたので見聞を深める為にこうして足を運んだわけです。何か新しい商売のヒントにでもならないかと思いまして。」
「なるほどね?それなら尚更うちのお店に来たらいいじゃない。実際お店に入らないと何もわからないわよ?それとももう行くお店は決めてあるのかしら。」
この女、最初から油断ならないと思っていたが、やはり頭の回転が速い。
アキの勝手なイメージだが、こういう街で働く女性は下心満載の男を毎日相手にしているから、強かで人心掌握はお手の物だと思っている。まあそれが本当なのかはわからないが、この女を相手にしていると、やはりそうなのかという気分になる。
一言で言うなら、うちの子達のようにチョロくない。面倒だ。
「いえ、決めていませんが。」
「じゃあうちに来なさい?サービスしてあげるわよ?」
「そうですね・・・それもいいかもしれません。私も1軒くらいは行ってみようと思ってはいたので。ですが今日はこの子達を連れていますから・・・」
イリアとエリザを連れて娼館に行くのはさすがに駄目だ。それに店側としても女性を連れて店に来られても困るはず。まあだからこの子達を連れているというものあるのだが。体よくこういう勧誘を断れるからな。
「あら、別に連れて来てもいいわよ?何ならその子達も交えて楽しめばいいわ。」
引き下がってくれるかと思いきや、平然と言い切られた。
「な、何を言っているのよ!そんなのは駄目よ!」
「あら、やっぱり子猫ちゃんなのね?」
アキが何かを言う前に、エリザが顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「・・・あまりうちの秘書を苛めないでください。」
とりあえずエリザでは勝ち目がないので、助け船を出してやる。
「ふふ、ごめんなさい。可愛いからつい。まあみんなで楽しむは冗談よ。お酒でも飲んでお話するだけだからうちにいらっしゃい?それならいいでしょ?」
「まあそれなら・・・」
だがこの女の目的が分からない以上、正直あまり乗り気にはなれない。
そう考えていたら、女が妖艶な笑みを浮かべながら言う。
「サルサドールの事なら知ってるわよ?」
「・・・そうなんですか。」
何故アキがサルサドールを調べようとしている事を知っているのか・・・と焦ったが、ちょっと頭の回る人間ならわかって当然かもしれないと気付いた。アキの情報が筒抜けのように、きっとサルサドールの情報も出回っているに違いない。彼がイニステラに行った際、王女に謁見した事が噂になっているのであれば、王女御用達の肩書を持ったアキがショルダードに来た時点である程度の予想は付く。
「ええ、彼には色々と思う事があってね。」
「それで私に近付いたと?」
「そうよ。貴方を取り込んで味方にするのがお姉さんの計画。」
どうやら嘘を言っているわけではなさそうだ。それならサルサドールの情報を貰う代わりに、彼女に協力するのも悪くないかもしれない。
「では・・・お伺いさせて頂きます。」
とりあえず話を聞く価値はあると判断した。
「じゃあこの先に私の娼館『もふもふパラダイス』があるからついてきてね。」
「え?・・・はい!」
今何かもの凄く素晴らしい単語が聞こえた気がした。
とりあえず情報収集の為に娼館に行くとしよう。そう情報収集の為に。
「「ちょっとまったあああああ!!!」」
エリザとイリアが声を揃えて叫ぶ。




