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「ここが・・・花街なのね?」
「なんか緊張するかな・・・」
「はっ!イリアちゃん!堂々としてないと駄目よ!」
「そ、そうだった!目立たないようにしなきゃ!ありがとエリザ!」
うん、エリザとイリアが面白い。
アキ達は花街があるであろう通りへと足を踏み入れたのだが、エリザとイリアは落ち着きのない様子でキョロキョロとあたりを見回している。口では「堂々としないと駄目!」とか言っているが、傍から見たから完全な不審者。目立たないようにしようとしているらしいが、逆に目立ちまくっている。
「おい、あんまりキョロキョロするな。目立ってるぞ。」
「わ、わかってるわよ!」
たかが花街に来ただけなのに何故そこまで緊張しているのか。これから娼館に入るというならともかく、ただ観光がてら歩いているだけなのに、初心過ぎるにもほどがあるだろう。
「それにそんな調子だと、声をかけられるぞ?」
アキがエリザとイリアを連れて歩いているのは一目瞭然。そしてそんな2人が落ち着きのない様子でいたら、傍からは完全に「これから娼館に売られる女達」に見える。このまま歩いていたら確実に声をかけられそうだ。
「そ、それは困るわ!?」
「あ、でもそれはそれでありか?」
情報を収集すると言う意味では、勘違いされて声をかけられた方がいいかもしれない。色々と手間が省ける。
「なんでよ!全然ありじゃないわよ!」
そんなのは駄目とエリザが猫耳をピーンと立てて抗議してくる。
まあエリザからしてみれば嫌だろう。「君、娼婦なの?」とか「うちの娼館に是非来てくれ」とか言われるだろうからな。まあスカウトされるのはエリザではなくイリアだと思うが・・・それは言うまい。だがアキから声をかけるより、向うから声をかけてくれたくれたほうが好都合ではある。その方が色々と交渉も有利に進められるしな。まあとりあえずどうやって情報収集するかは追々考えるとして、まずはこの花街を観光するとしよう。
「悪くない。」
実際に足を踏み入れてみた花街は、意外に落ち着いた雰囲気がする。外から見ていた感じだと、立派な建物やぼろい掘立小屋のような建物が雑然とならんでいて歪な街だという感じしかしなかったが、中から見てみると意外と調和が取れている。
そして通りを行き交う人々も、男ばかりではなく意外に女性も多い。ただ女性は全員どこか色気溢れる露出が多い服を着ており、一般人という感じはしない。多分、女はほとんどが娼婦なのだろう。どうやらこの花街は娼婦自身が客引きをしているのかもしれない。
「しかしみんな滅茶苦茶美人だな・・・」
てっきり客引きをしている娼婦はあまり人気のない子が客を取る為に頑張るものだと勝手に思っていた。だが先程からすれ違う娼婦らしき女性は全員美人だ。うちの子達程ではないとは思うが、それでも10人男がいたら10人全員が美人だと間違いなく言う。そんな子達が客引きのような事をしているのには驚きだ。
「ふーん、確かにみんな美人よね?よかったわね、アキ君?」
エリザがどこか拗ねた様子で言う。
「ここで拗ねるな。後にしろ。」
「あ・・・うん、ごめん。つい・・・」
ちょっと強めに注意したら、耳をペタンと垂れ下げ、しょんぼりした様子で素直に謝るエリザ。可愛い。だがそこまで凹まれると、さすがに罪悪感を覚える。
「いや、俺も悪かった。」
「大丈夫、でも後で構ってね。」
「ああ。しかしそれよりこの状況・・・どうするかな。」
サルサドールはこの花街を取り仕切るような娼館の経営者だ。その辺の娼婦を捕まえてもそんなトップの情報がおいそれと得られるとは思えない。行くなら高級娼館だろう。そこなら上流階級の人間が集まるはずだし、何かしらの情報がある気がする。だが正直どの店に入ればいいのかさっぱりわからない。こちらから適当な娼婦に「高級娼館を探してるんだけど」と声をかけるのも中々に憚られる。
「あら、お兄さん?お困りなのかしら?」
そんな事を考えていたら、背後から声をかけられた。




