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ショルダードの娼館だが、街のあちらこちらに点在しているわけではなく、すべて1ヶ所に集められ、花街を形成している。法律で定められているのか、偶々なのかはわからないが、地球でもそういった店は同じ地区に集まることが多かったので、やはりどこの世界も似たり寄ったりなのかもしれない。
まあ商店街や住宅街のど真ん中に孤立してポツンと娼館があるのも正直不自然だ。そんな場所に店があったら、変に悪目立ちするだろう。というか客からしてみれば、「あいつ今娼館に入ったぞ」と周囲にはバレバレになるし、間違いなく入りづらい。だが花街のように娼館が1ヶ所に固まっているのであれば、全員同じ目的でそこに来ているのだから、周囲の目もそこまで気にならないはずだ。もしアキが娼館通いをしていたら、そう感じるだろう。そして店からしてみても、商売敵は増えるが、同業店が近くにある方がメリットの方が多い。「花街撲滅運動」のような問題が起こったりしたら孤立しているより固まっていた方が何かと安心だしな。まあアキは娼館通いも経営もしたことがないので、全部ただの予想だが。
「で・・・花街はどこにあるんだっけ?」
「そんなの知らないわよ。そもそも女の私に聞かないで欲しいのだけど。」
エリザが呆れた様子で言う。正論だ。
「失礼。まあ多分あそこだろ。」
「え?アキ君わかるの?」
花街がどこにあるのか調べてはいないが、先ほど街を散策した際、ここだろうという目星はつけてある。確証があるわけじゃないが、多分間違いないはずだ。
「なんか不思議な雰囲気の通りがあっただろ?」
「そういえばあったわ。商店街の片隅に宿屋が並んでいた通りね。」
「うん、多分そこだよ。」
その時は素通りしただけで、通り自体には入ってはいないが、異様な雰囲気を醸し出していたのを覚えている。この世界でよく見る宿屋らしき建物がズラーっと並んでいたのだが、何かおかしかった。
「だからなんでそこだとわかるのよ。」
「エリザは何かおかしいと思わなかったか?」
「んー・・・そうね・・・質素な宿から豪華な宿が入り混じって建っていたわ。普通は別々の場所に建っている事が多いのに。」
「そうだろ?高級宿と安宿が入り混じっているのがおかしい。」
アキ達が今まで訪問した街では、安宿は庶民が行き交う地区に、そして高級宿は上流階級の人々が集う場所に建てられていた。ショルダードのように雑然となんの法則性もなく同じ場所に建っている事は絶対にない。
「まあそうね?でもなんでそこが花街だってわかるのかしら。」
「宿に高級店があるように、娼館にも色々とグレードがあるってことだよ。」
一般庶民が通える娼館、そこそこ値段の張る娼館、そして上流階級の人しかいけないような高級娼館と、夜の店にも色々種類がある。その結果、花街は自然と歪な感じになるというわけだ。
「ふーん・・・なるほどね。アキ君は色々と詳しいのね?」
エリザがジト目で見てくる。何やら娼館通いを疑われているらしい。
「知識として知ってるだけだ。行ったことはないぞ。エリザもそれは知ってるだろ?」
「どうだか。私の知らないところで行ってたりするかもしれないじゃない。」
「そんな事をする勇気はないんだが・・・」
ミルナ達に殺されるからな。
「へー・・・でもここで行くつもりなのよね?」
「まあ、うん・・・でも仕方なくだけどな?」
「あ、そうなの?『仕方なく』なの?アキ君の事だからどうせウキウキで行くんだとばかり思っていたわ。」
駄目だな。これは何を言っても勝ち目のない戦いだ。もういっそ開き直って「そうだよ、可愛い女の子と楽しんでくるわ」とか言ってやりたい。だがそれは罠な気がする。それを言った瞬間、「やっぱりそうなのね!!」と大変な目にあわされる気しかしない。
「エリザ、あまりいじめないでくれ。」
「・・・そうね、ちょっと意地悪だったわ。ごめんなさい。」
エリザといつものようにじゃれ合っていたら、いつの間にか花街がある通りに到着した。鬼が出るか蛇が出るか、何事もなく平和に終わるのかはわからないが、いよいよ花街観光開始だ。




