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「ん、アキ?もう大丈夫だよ?」
ルティアが教えてくれる。
――もふもふ
「・・・アキ君?」
――もふもふもふ
「ね、ねえアキ君?ルティアちゃんがもう大丈夫って言ってるわよ・・・」
――もふもふもふもふ
「アキ君ってば!!」
「うるさいぞ、エリザ。俺は今忙しいんだが。」
監視の目を欺く為、エリザをモフる事約1時間、どうやらもう監視していた連中はいなくなったようだ。まあアキがずっとエリザとイチャイチャしていたので飽きれて帰ったのだろう。計画通りだ。
「意味が分からないわよ!?」
エリザが叫んでいるが、何故だ?確かにアキ達を監視する連中はいなくなったかもしれないが、アキは別にモフモフに満足したわけではない。それならモフモフし続けるのは当然だろう。
「つまりまだまだこれからが本番という事だ。」
「なんでよ!?・・・ってこら!尻尾を触るのやめなさい!!!」
「えー・・・」
「『えー』じゃない!大体アキ君はまだやる事あるでしょ!そういうのは帰ってからにしなさい!」
仕方ない、言質は取った事だし、今は諦めよう。
「帰ったら好きなだけモフっていいんだな!」
「・・・え!?」
「いいんだな!!」
「う、うん・・・別にかまわないわよ・・・?」
「よし、わかった。」
ベルフィオーレに帰ってからもエリザをモフれるとわかれば、ショルダードでの活動も頑張れるというものだ。素晴らしい。
「はぁ・・・アキ君はそういうところがね・・・」
呆れた様子で溜息を吐くエリザ。
もう諦めてると言った感じの顔だ。イリアも苦笑いを浮かべているし、ルティアも可哀そうな人を見るような目でこちらを見ている。最近うちの子達にはよくこの顔をしてくる。どうやらミルナ達の間で「アキの獣人好きは病気、諦めよう」という結論が出たらしく、いつも生暖かい目で見てくるのだ。
ミルナ達にそういう目を向けられるのは何か癪だが、それでモフモフが好きなだけ出来るのであれば、それくらい喜んで受け入れよう。まあなんだかんだうちの子達はこんな自分を大事にしてくれているのだから今更変に自分を偽っても仕方ないだろう。
「エリザ、ありがとう。照れるな。」
「別に褒めてないわよ!!!」
さて無事アキ達の事を調べていた連中も撤収したようだし、そろそろ本格的に動くとしよう。まずは観光がてらショルダードを見て回るつもりだ。
「・・・うーん、やっぱりなんか落ち着かないな。」
あれから数時間かけて一通り街を見て回ったが、やはりどこへ行っても兵士だらけだ。アキ達の宿がある経済中枢圏域は貴族や商人しかなく閑散としていたが、そこを一歩でも出ると、あちらこちらで兵士達が騒いでいる。
そして落ち着かない理由はもう1つある。すっと誰かに見られているような感じがするのだ。商店街、職人街、住宅街とほとんどの場所を見て回ったが、どこへいってもアキ達を誰かしらが監視している。しかも後を着けてくるとかではなく、行く先々で異なる視線を感じるので、街全体に見られている気がして少々気味が悪い。
「うー・・・なんかもの凄く見られてるかな・・・」
イリアが疲れた顔で呟く。さすがに精神的に疲れたらしい。
まあイリアは美人だから彼女に視線が集まるのは仕方ない。ただ彼女の場合、素性がどうこうというより、門兵が言ってたように『どこの娼館の娼婦だ?』と言った感じで見られている気がする。一方でアキやエリザに対する視線は完全に「監視」だろう。
「一度どこかでルティアと話そう。あまりに色んな人に見られてて、どう判断すればいいかわからない。」
単純にイリアを美人だから見ているのか、アキの素性を調べようと監視しているのか・・・まあ両方だとは思うが、どの視線に注意すればいいのかさっぱりだ。ここはうちの影に一度相談すべきだろう。
「ええ。」
「じゃあ人気のないところに行こう。経済中枢圏域の裏路地あたりでいいかな?」




