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「・・・と言う訳だ。だから客として娼館に・・・」
「にゃー!!!」
アキの説明を黙って聞いていたエリザだが、話し終えた途端、猫のような雄叫びを上げる。まあ猫のようなではなく、この子は猫そのものなのだが。
「どうした、猫。」
「猫って言うな!難癖つけて駄目って言おうとしたのに、その理由が思いつかないのよ!!!」
難癖付ける気だったらしい。まあ知ってたけどな。
「正直なのは良い事だぞ。」
「そういう問題じゃないの!アキ君はそういうお店に行っちゃ駄目!」
「俺も行きたいわけじゃないけど、しょうがないだろ。他に良い案があるならそっちでいいぞ。」
「ないから困ってるのよ!」
「エリザは知的なお姉さんじゃなかったっけ?」
「う、うるさいわね!!!」
もう知らない、好きにすればいいじゃないとエリザが部屋の隅で丸まってしまった。可愛い。
「あはは・・・ねえ、アキ?他に方法はないのかな?」
イリアが苦笑いを浮かべて聞いて来る。
「ない事もないけど・・・」
アキが娼館に客として行く以外に方法がないわけではないが、正直その方法はあまり使いたくない。
「なになに?」
「イリアを娼館に売り飛ばす。」
「・・・はい!?な、な、ななな何を言っているのかな!?」
イリアがあわわと慌て始めた。
「わ、私はアキのお嫁さんになるつもりなんだけどっ!それなのに娼婦になるのはちょっと嫌かな!?大体私が娼婦なんか・・・って私にそもそもそんな事をさせるのはどうかと思うんだよね!!!」
取り乱しているイリアは面白い。こういう感じで聞いてもいないことをペラペラと勝手に話し始めるからな。
「落ち着け。イリアを売り飛ばすというのは、娼婦として店に潜入して情報を集めてもらう為だ。終わったら戻って来てもらうつもりだから安心しろ。」
「なーんだ・・・って安心出来る訳ないかな!?潜入してる間にお客さんを取ることになったらどうするのさ!!ねえ、アキ!!!」
「イリアは美人だからそうなるだろうな。」
「そ、そんなのは駄目だよ!!!」
イリアが涙目になりながら「やだやだ」とお願いしてくる。
まあ当然イリアにそんな事をやらせるつもりはない。この方法を使いたくないのもそれが理由だ。というかうちの子達に娼婦をさせるくらいなら、アキが客として店に行った方が絶対にいい。
「だから俺が行くんだろ?」
「う、うん・・・それならしょうがないかな?」
イリアが安堵の表情を浮かべながら呟く。
とりあえず上手くイリアを説得出来た。半ば脅迫だった気がしなくもないが、まあいいだろう。
「おーい、エリザ。いいよな?エリザに娼婦の真似事なんてさせたくないし。」
「にゃー・・・」
エリザがか弱い声で鳴く。この返事は「しょうがないけど、いいわ」と言う事だ。
ただアキが客として行くと、後が面倒だ。エリザやイリアはいいとして、他の子達に何を言われるか考えるだけで恐ろしい。まあ他に良い案もないので、とりあえず客としてサルサドールの娼館へ行くしかないのだが。
「女の子を買う事になっても、抱いたりしないから安心しろ。話を聞くだけだ。」
アキも男なのでそう言った事に興味がないわけではないが、さすがにうちの子達がいるのに、そんな事は出来ない。そもそもそんな目的でショルダードへ来ているわけではない。
「アキ君・・・」
エリザがとぼとぼと戻ってきた。丸まっているのに飽きたらしい。
「よしよし。」
とりあえずぽんぽんと頭を撫でてやる。
「にゃ。」
目を細めて満足そうに喉を鳴らすエリザ。
最近のエリザはすっかり所作が猫に成り下がっている。冗談で地球から取り寄せた猫缶も「これ・・・意外に美味しいわね」と普通に食べていた。エリザ、本当にそれでいいのか?
まあそれはともかく、とりあえず客として娼館へ行く方向で決まりだろう。
「ん、アキ。」
そんな事を考えていたら、ルティアが急にアキを呼ぶ。彼女が会話にいきなり入ってくると言う事は、周囲の状況に変化があったからだ。
「戻ってきた?」
「ん。」
どうやらアキの事を調べていた連中が戻ってきたらしい。多分アキの事をさらに調べるよう依頼主に言われたのだろう。
「エリザ、おいで。」
「え、ええ・・・よろしくね・・・?」
この後の行動はもう決まったので、これ以上余計な話をする必要はない。わざわざ情報をくれてやる理由はないからな。というわけで打ち合わせ通り、エリザを愛でる事にする。こうなった時はそうするとエリザとは打ち合わせ済みだ。秘書官という立場でつれてきているエリザを可愛がっていれば、「あいつらはああいう関係なのか」「部屋に戻るなりお盛んだな」と勝手に勘違いしくれるだろうという計画。まあ愛でると言っても、実際にはエリザをモフるだけだ。ただ部屋の外で声を聴いている連中にそんな事はわからない。




