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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十六章 迫る影
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19

「アキ、戻った。」


 しばらくエリザやイリアと雑談をしていると、ルティアが一仕事終えた顔で戻ってきた。しかし思ったより遅かったな。


「おかえり、どうだった?」

「ん。問題ない。ここで話しても平気。」


 ルティアが大丈夫だと言うなら大丈夫なのだろう。あくまで「今」はだが。もし周囲に誰かいるならルティアはすぐに察知できる。本当に問題がなかったのであれば、ルティアはどこかへ行く事なく「大丈夫」だと言ったはず。つまり彼女がわざわざこの場を離れたと言う事は・・・きっとそう言う事だ。


「問題が無かったわけじゃないよね?」

「無いよ?」


 素っ気ない返事をするルティア。だがその態度でバレバレだ。


「ルティアが無かったことにしてくれたんだろ?全部わかってるんだから正直に言いなさい。」

「・・・ん、さすがアキ。そう。」


 観念したのか、ルティアが素直に頷く。


「ちなみに誰が何をしようとしてた?」

「えっと・・・」


 ルティアの話によると、宿の連中がアキの情報を集めようと、この部屋の様子を伺っていたらしい。また、宿屋の外にも不審な人物が複数いたのだとか。


 やはりか。一体誰がアキの事を調べようとしているのだろう。まあこの街の人間であるのは間違いないが、正体が気になる。その為に盗み聞きをしようとしていた連中を捕まえる事も一瞬考えたが、意味はないだろう。そんな連中、所詮は末端の人間だ。捕まえたところで依頼主までは辿り着けない。


「黒幕はわかる?」

「・・・まだ。でもアキの予想通り、商人や貴族。そして1人じゃない。」


 それはそうだろう。下手したらこの街にいる商人や貴族全員が下っ端を使ってアキを調べているのかもしれない。まあ王女であるユキとの繋がりが出来るかもしれないと考えれば、それも当然の事だろう。


 そもそもユキに書状をお願いした段階で、こうなるだろうと予想はしていた。だからアキを調べる連中がいるのは驚きでもなんでもない。むしろ調べたければお好きにどうぞくらいのノリだ。


 というのも、アキを調べたところでベルフィオーレの人間であるアキの事なんて絶対に何もわからない。ユーフレインに来たのも最近だし、こちらで何かをした痕跡は残っていない。というかユキやシズと接触した以外では何も目立った活動はしてないからな。だからアキを調べてわかる事と言えば、「最近侯爵になった人物」「ユキと懇意にしている」「ランクIVのハンター」くらいだろう。


 そのくらいであれば好きに調べてくれて結構だ。むしろ調べて欲しいまである。アキが侯爵であり、王女と懇意している上位ランクのハンターだとわかれば、迂闊に手を出すのは不味いと普通なら思うはず。つまり面倒事に巻き込まれにくくなるだろう。これはアキ達にとっては好都合。うちの子達への余計なちょっかいも減るだろうし、この街で色々と身動きが取りやすくなる。


「ルティア、ある程度の情報はくれてやってもいいぞ。」

「ん、そう言うと思ってそうした。」


 ルティアがふんすと鼻を鳴らす。


 監視していた連中を追い払ってくれたルティアだが、どうやら始末したとか、暴力でご退場頂いたとかではないらしい。多分ルティアは先ほどアキが挙げたような適当な情報を流したのだろう。


「さすがだな。」

「えっへん。」

「でもどうやって情報を連中に渡したんだ?」


 ルティアは人見知りで口下手だ。そんな彼女が連中の前に姿を見せ、情報を与える事が出来るとは思えない。というか今の話を聞くまで、短剣を投げたりして物理的に追い払ったと思っていたくらいだしな。


「ん、上手く利用した。」


 ルティア曰く、アキの事を調べようとしていた連中は、全員単独行動だったらしい。つまりそれぞれが独自の判断で動いており、連携なんてなかった。そこでルティアは、「アキを調べた」という報告書を連中にばらまいた。全員が独自で動いているのであれば、「他にもアキを調べようとしているやつがいる。そして報告書を落とした間抜け。」くらいにしか思わない。そしてさらに「王女殿下と懇意にしている貴族、迂闊に手を出すと不味い」と報告書に書いておけば、連中は指示を仰ぎに一旦依頼主のところへ戻る。その間にアキ達は話し合いをするなり、姿をくらますなりしてしまえばいいというわけだ。


 非常に上手い方法だ。しかも暴力に頼っていないあたり、評価が高い。


「偉いぞ、ルティア。」

「ん!」


 とりあえずルティアのおかげで監視の目はなくなった。だがしばらくしたら戻ってくるだろう。それまでにこれからの行動を決めておかないと不味い。うちの子達と休憩しながら雑談でもしたいところだが、後にしたほうがよさそうだ。

挿絵(By みてみん)

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