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「それではごゆるりとお過ごしくださいませ。」
宿の支配人らしき男性が丁寧にお辞儀をする。
アキ達は予定通り、貴族と商人専用の宿とやらに到着した。宿に入る際、滅茶苦茶厳重な身元確認をされたのだが、商人証とユキの書状を提示したら手のひらを返したかのようなVIP待遇をされた。色々と不思議に思い、宿の人に詳しく聞いたところ、色々と面白い事実がわかった。
まず、この街の中央付近には貴族や商人しかいないのはルティアも言っていた事だが、実際にその通りで、というかそもそも兵士や一般人はこの周辺は立ち入り禁止らしい。まあ別に検問などがあるわけではないから入ろうと思えば入れるのだが、もし身分確認をされて貴族や商人ではないと判明したら、兵士なら軍を除籍、一般人なら多額の罰金刑という重い罰がある。どおりでこの周辺は閑散としているわけだ。
さらにこの街の中央にあるこの場所だが、通称「経済中枢圏域」と呼ばれているらしい。ここで貴族達が街の治安や流通について話し合ったり、商人が商談をしたりと、有権者が街の事について色々と取り決めをするところなのだとか。そしてこの宿は街の外から商談に来た商人や視察に来た貴族が宿泊する為にあり、基本的にこの街の人間は利用できない。
こうして街の中で住み分けが出来ているのは非常に面白い。今まで訪れた街ではこういうのはなかったので新鮮だ。
「いい部屋だな。」
「そうね、広いし快適に過ごせそうだわ。」
アキ達に用意された部屋は非常に広く、清潔感があって何の文句もつけようがない。もしかしたらユキの書状を持っていたから最上級の部屋を割り当てられたのだろうか。何にせよ、これは好都合だ。部屋の鍵は内側からしっかり掛かるし、宿の人間にも「御用が無い限り、お部屋を訪問する事は絶対にありません」と言われた。部屋も宿の最上階にあり、外から覗かれたりすることはなさそうだ。そしてこの最上階にはアキ達の客室が1つだけしかない。完全に密談をする為に用意された部屋なのがわかる。
ただ油断はできない。何故ならユキの書状を持ったアキを監視する人間がいても不思議ではないからだ。ただアキの動向を調べるのは、アキをどうこうすると言うよりは、王女であるユキに取り入る為だろう。アキの素性に関しては誰もそこまで興味がないはずだ。
「ルティア、おいで。」
とりえずルティアを呼ぶ。彼女であれば何か掴んでいるかもしれない。
「ん。」
ルティアはすぐ姿をみせ、トテトテと近づいてアキの膝の上に座ってきた。
可愛い。
「俺の事を調べようとしている奴はいるか?」
「ん、いる。」
やはりいるようだ。まあユキの書状を門兵や宿の連中には見せたので、その情報がもう回っているのだろう。
「どっちから漏れた?」
「両方。」
「そうか。まあ当然だな。」
別にこれに対して思うところはない。情報は最大の武器だ。この街の商人や貴族達が突如ショルダードに来た王女殿下御用達の商人であるアキの情報を集めるのは当然の事だし、どこぞの人間を使って情報を集めていてもなんら不思議はない。アキでも同じことをする・・・というか既にルティアでしているしな。
「きにしない?」
ルティアがコテンと可愛らしく首を傾げながら聞いてくる。
「気にならないといったら嘘になるけど、俺も同じ事してるだろ?」
そう言ってルティアの頭をくしゃくしゃと撫でる。
「ん!」
気持ちよさそうに目を細めるルティア。
「ルティア、とりあえず周囲に人の気配はあるか?」
「まって!みてくる!」
アキ成分補充完了したし元気いっぱいと意味不明な事を口走りながらルティアが元気に消えていった。
「・・・うん、言いたい事は色々あるけど、まあ本人が嬉しそうだからいいか。」




