14
どうやらこの門兵、イリアの事を護衛としては実力不足だと思ったらしい。アキが彼女を連れているのは、「女として」使う為だと。
まあショルダードは夜の店が大繁盛していると言っていたし、イリアをそう見られるのは仕方ない事なのかもしれない。だがさすがにうちの子をそういう風に言われるのは少々不快だ。確かにイリアは見た目麗しいが、実力もちゃんとある。変な護衛なんかよりはずっと頼りになる。
だがここで目くじらを立てて噛みついても良いことはないだろう。それに実力が分からないというなら、それを証明するだけだ。
「その意見はごもっともです。ただ彼女は・・・」
そう言いながらイリアに目配せする。
「ん?これを見せればいいのかな?」
アキの言いたい事を察したのか、イリアは懐からハンター証を取り出し、くだんの門兵に見せる。
「・・・なるほど、ランクIVのハンターだったのか、失礼した。」
イリアのハンター証を見てすぐさま謝罪する門兵。ただイリアに謝罪したと言うよりはアキに対してだ。「護衛をちゃんと連れていないと言って申し訳ない」と言う意味の謝罪だ。だがそんな事は正直どうでもいい。アキとしてはイリアを娼婦扱いした事に対して謝罪が欲しい。
「いえいえ、ご理解いただけたようで。」
ただせっかく穏便に終わりそうなのに、変に事を荒立てる必要はない。グッと文句を言いたい衝動を堪える。
「しかし勿体ないな・・・その子なら娼婦として人気が出そうなものだが・・・」
ハンター業をするより娼婦をした方が稼げると言いたいらしい。
「よかったな、イリア。」
「ええー・・・?喜ぶところなのかな?」
「美人って意味だと思うぞ?」
「それはわかってるけど・・・」
イリアが苦笑いを浮かべる。まあイリアが微妙な気持ちになるのはわかる。アキも似たような気分だからな。女性に対して「娼婦になったら人気になるレベルの美人」という褒め言葉は正直どうかと思う。まあこの門兵はそういう性格なだけで、他意はなさそうだが。
「そろそろ行ってもいいですか?」
だがさすがに気分のいい物ではないので、さっさと話を切り上げる。
「そうだな・・・その女が護衛なのは理解した。問題ない。だが最後に教えろ。そこの猫人族は何者だ?」
門兵がエリザを値踏みするような目で見る。
そう言えばエリザの説明はしていなかった。この門兵、口は悪いが、仕事はちゃんとするタイプらしい。いくらユキの書状があるとはいえ、1人1人の確認をするつもりのようだ。
「彼女は私の秘書官です。」
「・・・なるほど。商談で来たと言っていたな、承知した。」
アキがそう言うと、門兵は納得したような表情を浮かべ、頷く。
「通ってよし。問題は起こすなよ。」
そしてショルダードへ入る許可が出る。
「はい、失礼します。」
許可が出たなら長いは無用だ。アキはそそくさと門を後にし、ショルダードの街へ入る。
だが無事街へ入れたと安心したのも束の間、門から離れて門兵の姿が見えなくなった瞬間、うちの猫が騒ぎだした。
「にゃー!!!アキ君!ねえ、アキ君!どういうことなのよ!!!」
「どうした、エリザ?」
「どうしたじゃないわよ!!さっきのは何よ!!!」
だが何故エリザが騒いでいるのかわからない。多分さっきの門兵に対して文句があるのだろうが、エリザは何も言われていない。娼婦扱いされたイリアが怒るならまだわかるが、何故エリザが不機嫌になっているのだろう。
「アキ君が私を秘書官だと説明した時、『そうか、良い仕事にありつけてよかったな。結婚は駄目だったかもしれないが、仕事くらいは頑張れよ。』って目をしたのよ!!あいつは私を年増扱いしたのよ!!!」
尻尾の毛を逆立てながらエリザが不機嫌そうに叫ぶ。
さすがにそれは深読みし過ぎではないだろうか。
「そんな事はないだろ?」
「あるわよ!イリアちゃんは『娼婦として人気出る』と言われたのに、私は言われなかったのよ!それが何よりの証拠なの!つまり私が年増で見た目麗しくないからなのよ!!」
「いやいや、娼婦に間違われて嬉しいのか?」
普通は嬉しくないと思う。先程のイリアも微妙な顔をしていたしな。
「言われたいわけないでしょ!でも言われないのは不服なの!言われたいけど言われたくないの!わかるでしょ!」
うん、全くわからん。
無視しよう。
「よし、ルティアと合流するか。」
「ちょっと!アキ君!無視しないで!!!」
「うるさいぞ、猫。」
「猫じゃないわよ!!!」
「ほら、行くぞ。」
「にゃー!!!」
とりあえずこのにゃーにゃーと五月蠅い猫を引きずり、アキはルティアとの合流地点へと向かう事にした。




