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「・・・次。男1人に女2人か・・・この街へ来た理由はなんだ。」
ショルダードの街に入る為、入り口の門に並ぶこと1時間、ようやくアキ達の番が来た。
街の周辺にはほとんど人の気配がなく、閑散としていてちょっと心配だったが、門の前は街に入ろうとする人で賑わっていた。どうやらアキ達がいた森からショルダードへは人の行き来がないだけのようだ。そしておそらくほとんどの人はショルダードに来た事がある人達なので、街の入り口がどこにあるか知っており、最短距離で門までやって来ているのだろう。
「この街へは商談に来ました。」
とりあえず門兵に来訪の理由を聞かれたので、あらかじめ準備していた答えを言う。
「商人という事か。」
「はい、こちらをご覧ください。」
ユキに頼んで特別に発行してもらった商人証を見せる。
このエヴァグリーンで商人は一種の免許制だ。国から認可を得た人物だけが商人になれると言っていい。まあ街で小さな店を開く程度なら誰でも自由に出来るので、完全な認可制ではないのだが。ただ他の街で商売したり、他国へ貿易したりと、いくつもの店舗を抱える商会になる為にはこの商人証が必須だ。これがあれば他の街や他国への行き来が自由になる。そしてこれは国から認可されているという証明なので、非常に信用されやすい。土地を借りたり、取引をしたりする際にはとても有利に働く。
ちなみにこの認可証だが、取得するのにはかなりの金が必要だ。賄賂というわけではないが、心付けという意味で多額の寄付を国に納めなければならない。そしてある程度の人脈がなければならない。簡単に言えば貴族や一流商人からの推薦だ。
基本的にこの2つがあれば、誰にでも商人としての認可は下りる。これだけ聞くと一見簡単に見えるかもしれないが、この条件を満たすのは相当難しい。特に推薦を得る事が現状はほとんど不可能なのだ。まあ新規参入なんて許すと既存の商人の利益が下がるのは明白なので、彼らは推薦なんてまずしない。そしてどこかの貴族が誰かを推薦しようとしていたら何が何でも阻止するからだ。
ただアキの場合、王女であるユキと繋がっているので、何も苦労しなかった。ユキに「ちょうだい」と言ったら「いいわよ」の二つ返事でもらえた。苦労して認可を得た商人達には申し訳ないが、実際商売をするわけではないので許してほしい。
「ふむ、商人証は確認した。ではどのような商談があるのか説明をしろ。」
さすがに商人の認可を得ているからと言って「どうぞお通りください」とはならないようだ。だが問題はない。それについてもちゃんと準備はしてある。
「こちらの書状をどうぞ。」
「書状だと・・・いや承知した、拝見しよう。」
口で説明しなかったのが気に食わなかったのか、書状を読むのが面倒だったのかはわからないが、門兵は一瞬嫌そうな顔をした。ただ書状の封蝋をみてすぐさま受け取った。まあエヴァグリーン王家の紋章の封蝋がしてあれば受け取らざるを得ないだろう。
これもユキにお願いして準備してもらったものだ。中には「アキに美術品の買い付けを一任している。出来る限り便宜を図るように」とユキの直筆で書かれている。つまりあの書状があれば、アキは王女御用達の商人になれるというわけだ。
「なるほど、貴殿は王女殿下の命でこの地にやってきたというわけか。」
書状の効果だろうか、門兵からの圧が無くなった。
やはり事前にユキに相談して、色々と準備したのは正解だった。これが小説なら「街に入るだけなら何とかなるだろ」くらいの気持ちで来て面倒事に巻き込まれるのがお約束なのかもしれないが、そんなのはお断りだ。事前情報で厄介事が起こるとわかっているなら、ちゃんと準備して回避すべきだろう。
「ええ、その通りです。」
「そうか。特に問題はなさそうだな・・・と言いたいが、1つ忠告しておこう。」
「・・・なんでしょう。」
問題は起らないと思ったのに、これは一悶着あるのかもしれないと身構える。
「王女殿下の御用達の商人なのであればちゃんとした護衛を付けろ。そこの護衛の少女は見た目麗しいから旅では色々と便利なのだろう。だが実力が伴ってないと意味が無い。王女殿下の顔に泥を塗るつもりか?」
門兵がイリアを一瞥し、そう告げてくる。
「なるほど・・・」
そう来たか。イリアに護衛のような格好をさせていれば変に絡まれないだろうと高を括っていたが、そう取られるとは思わなかった。だが一理ある。




