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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十六章 迫る影
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10

「アキ、あれがショルダード。」


 小屋を出て森の中を進むこと数十分、 何もない開けた場所に出た。特に草木が生い茂っているわけでもなく、草原というよりはただの平地と言った感じの場所。そして遠くに巨大な壁が見える。きっとあれがショルダードなのだろう。軍事都市というだけあり、街全体が強固な防壁に囲まれているらしい。


「話に聞いていた以上にでかい街だな。」


 まるで地平線のように巨大な防壁が建ち並んでいる。まだ遠くにしか見えないが、あの防壁を見るだけでかなりでかい街だというのがわかる。街が円形に作られているにしろ方形に作られているにしろ、防壁の一部しか見えない時点で巨大な都市だ。エヴァグリーンの王都であるイニステラを見た時もその大きさには驚いたが、ショルダードの衝撃も中々のものだ。


「ん、大きい。」

「しかし・・・見晴らしが良すぎるな。」


 ショルダードを見た第二の感想がこれだ。街の周囲には本当に何もない。雑草すら生えておらず、ごつごつした岩場がある訳でもなく、本当に何もない平地だ。


「もしかして敢えてこういう風にしてるのか?」


 ここまで平坦で何もないと、物陰に隠れるとか、罠を仕掛けるとか出来ないだろう。敵が近づいてきたら一目瞭然でわかる。やはり隣国の侵略に備えて敢えてこういう造りにしたのだろうか。


「ん、多分そう。」


 ルティアが頷く。昨日街に潜入した際、「見渡せるから監視が楽。」という兵士の話を聞いたのだと教えてくれた。


「なるほどな。」


 確かに防壁の上には監視塔のようなものがある。あそこから見渡せば街に近づく人間は直ぐに発見できるだろう。


「でも・・・ルティアは大丈夫か?」


 まだ完全に森から出たわけではないので、監視塔からアキ達の姿は視認できないだろう。だが一歩でも平地に踏み出たら間違いなくすぐに発見される。しかも物陰がないから隠れる事は不可能だ。まあアキ、イリア、エリザは堂々と街に入る予定なので別にそれでも問題はないのだが、ルティアはどうするのだろう。


「ん?」


 どういう意味だと不思議そうに首を傾げるルティア。


「いや、一緒に歩いて街へ入る?さすがにこれじゃ隠れられないよね?」

「余裕。昨日もやった。」


 ドヤ顔でピースをしながらルティアが宣言する。


「え、まさか昨日もこの状況で姿を隠して街に入ったのか?」


 いくら影が薄くて隠密が得意なルティアとは言え、この状況ではさすがに姿を隠せないと思っていたが、そんな事はなかったらしい。だがよく考えれば、ルティアの言う通り、昨日この状況をどうにか出来たからこそ街の下調べが出来たのだ。もしどうにもならなかったらルティアは断念して相談しに来ただろう。何故ならルティアは人見知りだからだ。彼女の人見知りを侮ってはいけない。アキの前ではこうして普通に姿を見せてくれるが、ルティアは基本的には誰にも姿を見られたくないと思っているのだ。


「ん。」


 何でもないと言わんばかりに平然と頷くルティア。


「どうやるの?」

「・・・な、ないしょ。それより早く行く!ここにずっといるのは不味い!」


 慌てて話を逸らすルティア。教えてはくれないらしい。


 だが確かにルティアの言う通りだ。ここでずっと立ち話をしていたらいつかは見つかるだろう。その際、立ち話をしていたと言い訳するには不自然過ぎる。早めに移動した方がよさそうだ。


「まあとりあえず街へ入るか。」

「ん。それがいい。」

「で・・・入り口はどの辺にあるんだ?」


 まだ遠目だから見えないだけかもしれないが、街へ入る門がどこにあるのかわからない。どこを見ても一面の防壁。平地を見渡しても街へと続く道があるわけでもないし、それを頼りにするのも難しい。


「このまま真っ直ぐ歩く。壁に到着したら右に歩くと門がある。真っ直ぐ向かうと面倒な事になるから気を付けて。」


 ルティアがそう注意してくる。


 どうやら敵襲に備え、街の入り口を分かりにくくしているらしい。つまり街へ日常的に出入りしている商人や旅人であれば門の場所はわかっているが、初めて街へ訪れるアキが迷いもせずに門へ一直線に向かうと、怪しい人物に見られてもおかしくはないと言う事だ。


「了解。」

「じゃあ街の中で合流しよ。何かあったらすぐ呼んでね。」


 そう言ってスッと姿を消すルティア。


「俺達も行こう。」

「はーい!」

「ええ。」


 イリアとエリザに声を掛け、アキ達も街へと向かう。

挿絵(By みてみん)

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