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――翌日
アキはルティア、エリザ、イリアを連れてショルダードへ転移した。予定通りのメンバーだ。出発前にミルナ達がギャーギャー騒いでいたが、まあいつもの事なので特に語る必要はないだろう。うちの恒例行事だしな。
転移先はルティアが見つけてくれたショルダードから少し離れた場所にある廃屋だ。元は狩人の休憩所として利用されていた場所だったようだが、今は放棄され、人の出入りはないらしい。何故放棄されたのかはわからないとルティアは言っていたが、彼女が「誰もこない、絶対大丈夫」と断言しているので、問題はないだろう。
「これって一度行った事ある場所ならどこへでも転移出来るのかな?」
転移を終え、小休止していたタイミングでイリアが聞いてきた。
「基本的にはそうだな。」
「でも今まではアキが行った事がある場所じゃないと無理だったよね?以前私をユーフレインへ飛ばしてくれた時は魔法陣を利用してたと思うんだけど、何時の間に他人の記憶の場所へも飛べるようになったのかな?」
「ああ、それはね・・・」
イリアの疑問はもっともだ。その辺の説明はしてなかったしな。以前は確かにアキが行った事のある場所にしか転移出来なかった。魔方印を利用すればその限りではなかったが、他人の記憶を頼りに転移するなんてのは不可能だった。
だが今ではそれが可能だ。ルティアに単独調査を許したのも、それが出来るようになったからだ。実はエリザと共同で魔法の研究を行っており、他人の記憶を頼りに転移する方法を編み出した。まあ頼りにと言っても、他人の記憶を読み取るとかそう言った事はさすがにできない。自分の指定した場所に転移していたのを、「転移先を他人の指定した場所」と魔法を修正しただけだ。
これだけだと単純に聞こえるかもしれないが、「他人の指定した場所」というのが中々に曲者だ。その人が何を考えているかなんてわからないし、発動した際に邪念などが混じっていれば、上手く魔法が発動せず大惨事になる可能性もある。だからこの魔法は少々危険が伴う。まあうちの子達であればその辺は信頼できるので、問題ないのだが。
「・・・ということだ。」
「なるほどね!」
アキの説明を聞いてイリアが納得したように頷く。
「つまりアキに頼めばどこへでも行けるんだね!」
「うん、まあそうなんだけど・・・俺を移動手段にしないでくれ。」
別にイリアの頼みならどこへでも連れていってやるが、そういう言い方されるのは乗り物扱いされているみたいで何か微妙な気分だ。
「そ、そんなつもりじゃないかな!?」
慌てて否定するイリアが可愛い。勿論彼女にそんな意図がないのはわかっている。
「アキ、そろそろ行く?」
そんな雑談をしていたら、ルティアが聞いてきた。さっきから暇そうにしていたので痺れを切らしたのだろう。
「そうだな、行こうか。イリアもエリザも大丈夫?」
「うん、いいよ!」
「大丈夫よ。行きましょう。」
問題ないと頷く2人。
「じゃあ出発しよう。あ、それとその服、似合ってるよ。」
今日のイリアは長袖長ズボンを着て、厚着している。いつもはホットパンツを履いて生足を惜しげもなく露出させているのだが、ショルダードの街ではそれは不味いとアキが止めた。最初は訝し気な顔を浮かべていたイリアだったが、理由を説明したら素直に了承してくれた。
そしてエリザはいつも通りスカートにタイツを履き、上には長めのブレザーを羽織っているのであまり代わり映えはしない。ただ目立たないように魔法学院の制服ではなく、地味な色のものにしてくれている。
「アキ君、この服装を褒められても嬉しくないわよ。」
お洒落してるわけじゃないんだからとエリザが苦笑いを浮かべる。
まあ確かにその通りだ。
「何を着ても可愛いって言いたかっただけだよ。」
「あ、あらそうかしら?それなら、うん、ありがとね・・・」
嬉しそうにはにかむエリザ。
「ねえアキ!私は!私はどうかな!」
イリアがぴょんぴょんと跳ねながらアピールしてくる。
「いつもと違って新鮮だと思う。イリアの綺麗な足が見えないのは残念だけど。」
「えへへ、やっぱりそうだよね!私のチャームポイントが見えないのは駄目だよね!まあ今日はしょうがないけど!」
アキが褒めると花が咲いたような笑顔で喜ぶイリア。彼女は足に自信を持っているらしく、足を褒めると滅茶苦茶喜ぶ・・・というのを最近学んだ。ホットパンツを好んで着用しているのもそれが理由らしい。
「・・・アキ。早く行く。」
ルティアが仏頂面で文句を言ってきた。そろそろルティアが本気で怒りそうだし、
とっとと出発するとしよう。




