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「それでアキさん、何故お客様がいらっしゃるんですの?」
ミルナが不機嫌そうな顔で睨みつけてくる。
怖い。
だがまあミルナが文句を言うのもわかる。今日はユーフレインで用事を済ませたらベルフィオーレでのんびりする予定だった。ミルナ達と買い物に出掛けたりしようと思っていた。それなのに何故かこの場にユキがいる。
「アキ、お茶はまだなの?」
そしてまるで自分の家にいるかのように寛いでいる。
ちなみに何故こうなっているのかというと、まあ説明するまでもないと思うが、ユーフレインから戻る時にユキがついてきたからだ。
孤児院の話し合いについては問題なく進んだ。視察した元貴族の屋敷の感想をユキに伝え、2人でどの屋敷を流用するか決めた。基本的には貴族街の外れにある屋敷を
孤児院のとして使う事になり、少し区画整理をすれば問題ないだろうと助言したところ、ユキも「それがいいわ」と賛成してくれたので、話し合いは滞りなく進んだ。
そして打ち合わせが終わり、ベルフィオーレに戻ろうとしたところ、ユキが「私も行く」と言い始めたのだ。適当な理由で断ろうと思ったのだが、「どうせ今日は暇なのよね?」とアキの予定が無い事を見抜かれ、ユキはユキで「仕事は片付けておいたから今日は自由なのよ」と準備万端で、断るに断れなかったのだ。当然一緒に同行していたベルには「ばか。あほ。女の敵。」とちくちくと嫌味を言われ続けたのは言うまでもないだろう。そしてベルフィオーレに戻ってからはこうしてミルナ達に詰め寄られているというわけだ。
「それでアキさん、説明をしてくださるんですわよね?」
「説明も何も見ての通りなんだが・・・」
「それで私が納得するとでも?」
ちなみにそんな状況を作った元凶であるユキは紅茶を啜りながら楽しそうにアキが説教されているのを眺めている。
「相変わらず大変そうね。」
「・・・ユキのせいなんだが?」
「しらないわよ。私を巻き込まないでくれる?」
だがユキは我関せずと言わんばかりにどこ吹く風だ。
そっちがその態度ならこっちにも考えがある。
「まあミルナ、そう怒るな。俺にも考えがある。」
「あら、そうなんですの?」
「ああ、ユキは放っておいて俺達だけで出掛けよう。」
自分の家のように我が物顔で居座っているのだから、ユキの事は放っておいても大丈夫だろう。ベルフィオーレならそうそう問題にも巻き込まれないだろうし、1人にしても問題ない。
「・・・それならいいですわ!」
しばし考え込んだ後、ミルナが納得したように頷く。隣にいるベルやソフィーも「いい考えです!」と同意してくれている。
「ちょっと!?私を放っておくとか何言ってるのよ!」
だがユキだけは納得いかなかったらしく、ティーカップをバンっとテーブルに叩きつけ、叫ぶ。
「今日はミルナ達と遊ぶ予定だったんだよ。ユキに構ってる暇なんぞない。」
「ねえ、それはさすがに酷くない!?」
ユキが文句を言ってくるが、何も酷くはない。そもそもベルフィオーレに招待したわけでもなく、ユキが勝手についてきたのだから自業自得だ。
「今日はミスミルドで行きたいカフェがあるの!」
以前ユキにミルミルドの街を案内した際、どうやらお洒落なカフェを見かけたらしく、今日はどうしてもそこに行きたいのだとか。
「知らんがな。勝手に行け。」
「なんでよ!案内してよ!1人で行けっていうの!?」
「そうだけど?」
カフェくらい1人でいけばいいだろう。まあ1人だと入りずらいとかあるのかもしれないが、別に1人でカフェに行っては駄目というルールなんてない。行きたいなら勝手に行けばいい。アキはミルナ達と遊びたいのだから。
「鬼!悪魔!変態!」
「・・・変態は関係ないだろ。」
いわれのない誹謗中傷は止めて欲しい。
「なんで1人じゃ駄目なんだよ。」
「だって・・・寂しいじゃない!!」
思ったより可愛い理由だった。王女を1人にするなとか、歓待しろとかそういう偉そうな理由かと思ったら、ただただ寂しいだけらしい。
「じゃあうちのメイドを付けるから。」
折衷案だ。とりあえずユキの世話する人間を付けておけばいいだろう。
「・・・え?貴方のお世話しかしないそこのメイド・・・?」
不満そうな顔でアリアを見るユキ。アリアはアリアで眉をピクっと動かし、無言で「嫌です。何で私がそんな人のお世話をしなければならないんですか。絶対嫌です。」とアキに圧をかけてくる。
「そんなわけないだろ。アリアも俺の大事な人なんだから今日は俺と出掛けるんだよ。他のメイドを付ける。」
「あ、そう・・・まあ、それならいいわ。」
アキがそう言うと、アリアは満足気に小さく頷き、ユキも渋々ではあるが、納得してくれた。
「じゃあそう言う事で。ナギ、ジーヴス、いるか?」
というわけでうちのメイドと執事を呼ぶ。




