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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ここだけの話

作者: 桜川小京

俺の仕事はレストランの厨房。

所謂(いわゆる)シェフという職業。

朝早くからその日の仕込みをして開店を待つ。

料理長補佐なんてもんになっている為、帰りは大体日付けが変わるギリギリ。

別に好きで就いた仕事だし、遣り甲斐もあって苦ではない。

新しいメニューを考えるのも楽しい。

帰り際に発注の確認をして鍵を閉める。

料理長はオーナーの幼馴染みだそうで、大抵は営業時間が終わると二人で飲みに行きやがるから、最後は俺。

今日も俺が最後で、セ〇ムの確認をして鍵を閉めて帰路に着く。

「あの~…」

時々女が出待ちをしてて、俺に話し掛けてくる。

が、俺には嬉しくない事象。

俺は男しか愛せない人間なんで、ハッキリ言って迷惑極まりない。

だが、お客である場合が多いので、やんわりと、でもお断りしている。

俺ってば良い奴。

さ~て、そろそろ…。

そう思ったのと同時に、俺の携帯がなる。

これも何時もの事。

なので家に着くまでは放置している。

どうせまた下らない事で、あの人がメールして来ただけなのだから。

外見は俺とは正反対の童顔でハニーフェイス。

背も180越えの俺と違って、160にも満たしていないのではないかと思わせる。

髪は少し癖っ毛のあるフワフワ和毛(ねこげ)で、初めて見た時はホイップクリームを連想させた。

とても可愛い人である。

同じアパートに住んでいて、出会いはゴミ出しの時だった。

下のカートにゴミを棄てていた際、何故か上から俺に目掛けてデカいゴミ袋が降ってきた。

涙目で謝りながら、小さい体を何度も何度も折っていた。

プルプル震えて、デカい俺にしてみたら、小動物にしか見えなかった。

何度か出会う内に俺達は仲良くなり、今では恋人と呼べる仲だと思う。

あの人の事を考えながら家路を急ぐ。

こういうのは俺にとって日課になっている。

笑顔が見れたらいいな…なんて考えながら。

家に着いて荷物を置き、入ったメールを開く。

今日はどんな内容なんだろうか。

『お疲れ様』なんて可愛いメールなら俺のテンションも、モチベーションすら舞い上がる。

…が、あの人にはあまり常識が通じないのかもしれない、なんて思わせるくらいの天然ぶりだ。

凄い内容のメールなんだろう…と、目に入ったメールには…。

『怖い怖い怖い怖い怖い…』

と言う文面が約8行くらいに渡って入っていた。

「…はぁぁぁぁ…」

これのが怖いだろ…。

午前0時を目前にしてこのメールとは…。

急いで部屋を飛び出して、あの人の部屋へと向かう。

どうせ鍵は開いてんだろう。

天然な為、抜けている。

走って部屋の前まで行って、力任せにドアを開く。

駆け込んだ部屋には、腰でも抜かしているのか、床に経たり込んでいるあの人が…。

康生(こうせい)君がやっと来たぁぁぁぁっ」

と、叫びながら泣いていた。

深く長い溜め息を吐きながら、しゃがみ込んで頭を撫でる。

「…あのねぇ、京太郎さん」

そして耳を思い切り引っ張って怒鳴る。

「たかがホラー映画であんなメールを送らんで下さいっ」

瞬時に耳を押さえる京太郎さん。

「だってぇぇぇぇ…」

こういう人である。

惚れた弱味か、こういう所も可愛いと思ってしまう。

テレビを切ってキッチンへと向かう俺。

その跡を追って俺のシャツの裾を摘まみながら着いてくる京太郎さん。

遅い夜食。

料理をする俺に後ろから抱き着いて、背中に顔を擦り付けてくる。

「何で苦手なホラーなんて、一人で観てたんすか」

「だって…少しでも康生君の好きな物を理解したかったんだもん」

こうやって可愛い事を躊躇いもなく言ってくる。

俺の可愛くて愛しい恋人。

俺より10歳年上の、真鍋京太郎39歳(♂)。

唯の自慢話である。

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