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SLS  特殊海難救助隊  作者: 月城 響
48/113

第13部 消えた巡洋艦 【2】

― 38時間前   1900時 ―



 どんなに嫌がっていても、そこは男の子である。ヘリの中で溜息を付いていたジュードも、嫌だ嫌だと50回以上繰り返していたマックスも、巡洋艦のヘリポートに降り立った時は目がキラキラと輝いていた。


「おい!見ろよ、マックス。あれがMark75だぞ!」(Mark75:62口径76ミリ、単装速射砲の事)


 ジュードが艦の前方についている艦載砲を指差して叫んだ。空へと伸びる長い主砲口を見て、マックスも興奮気味に叫んだ。


「うおおおおっ、本物だ!すっげーっ!」



 シェランとエバ、キャシーの3人は彼等の後ろでくすくす笑い、ショーンは両手を上げてあきれたポーズをとった。


「君達、そんなに騒いだらみっともないだろ?ほら、将校の方々がびっくりして見ておられるよ」

「いいから、お前も来いよ!」


 ジュードはショーンの手を引っ張りながらマックスと共に走り出すと、艦の兵装を指差しながら説明を始めた。


「あれが76口径20ミリCIWS!そしてあれが25ミリであっちが12.7ミリ単装機銃!この下には324ミリ3連装短魚雷発射管が2基ついているんだ!」


(CIWS:イージス艦のエリア・ディフェンスや自艦のポイント・ディフェンスをくぐり抜け、飛来する対艦ミサイルを2~9キロの近距離内において迎撃するシステム)



 ジュードの説明にいちいち「すっげーっ!」を繰り返して感動しているマックスとは対照的に、ショーンは全く訳の分からない顔をしている。彼にとっては巡洋艦など、ただの鉄の塊でしかなかった。だがジュードはつまらなそうな顔をしているショーンを更に引っ張って、艦の後方に連れて行った。



「そしてあの蓋が一杯並んでいるのがMK41VLS(Vertical Launching System)だ。いわゆるイージスBMDで、中の一つが開くとSM-3ミサイルがドカーンと出て来て、短、中距離ミサイルを運動エネルギーによって大気圏外で迎撃するんだぜ!」


(イージスBMD:Aegis Ballistic Missile Defense:イージス弾道ミサイル防衛システムの事)



  

 マックスの「すッげーっ!」の代わりに、彼等の後ろでクスクス笑う声が聞こえた。振り返ると30歳前後の将校が明るいブラウンの髪をなびかせ、透き通るような青い瞳を細めて立っていた。浅黒い肌の中から覗く白い歯がとても印象的で、ヘレンに関わってから色々な海軍将校を見てきたが、これほど深い紺色の制服が良く似合っている男をジュードは初めて見た。



「君、良く知っているね。もしかして兵器マニア?」


 ジュードはてっきりこの艦の上官が注意をしに来たのだと思って、思わず頭を下げた。


「す、すみません。つい興奮して騒いでしまって・・・」

「とんでもない。構いませんよ。こんな海のど真ん中でいくら騒いだって誰も咎める者は居ないからね。それより軍用ヘリで到着したという事は艦長のご親戚かお知り合い?」


「私の知り合いだ」


 ジュードが答える前に、男の後ろから野太い女性の声が聞こえた。


「これはシュレイダー大佐のお知り合いであられましたか。失礼致しました」


 彼が敬礼するとヘレンも敬礼を返した。


「すまんな、アラード中佐。以前ウェイブ・ボートの件で世話になったSLSの訓練生なのだが、何分まだ子供なのでな。許してやって欲しい」


 彼は「無論です」と答えると、ジュード達にさわやかな笑顔を残して去って行った。



 子ども扱いされた上に、ヘレンに睨まれて、この後間違いなく頭の上から怒号が降ってくるだろうと覚悟したジュード達は、シェランの「ヘレン、お招きありがとう」の声に救われた。勿論ヘレンはシェランに対しても怒鳴り散らしてやろうと思ったが、それはこの後のお楽しみに取っておこう。


 彼女はニヤッと笑うと「いやいや、なあに。構わんさ」と言いつつシェランを振り返った。





 チャリティ・パーティまではまだ1時間以上あるというので、ドレスアップに時間のかかるご婦人方以外の男性は(興味の在る人間に限られるが)艦内を案内してもらっていた。


 もちろん興味津々のジュードとマックス、興味は無いが暇なショーンは簡単なボディチェックを受けた後、ヘレンの計らいでアレック・ハワードに巡洋艦を案内してもらえる事になった。



 イージス巡洋艦の主な任務は“艦隊の盾”と言われ、飛来する多数の戦闘機や対艦ミサイルから空母艦隊を守る事である。そこでアレックは、まずイージス武器システムを紹介してくれた。残念ながら艦内にあるUYK43/44コンピューター等の迎撃システムまでは見せてはもらえなかったが、外からの説明だけでジュードは充分満足だった。



「あそこに8角形のレーダーが4基あるだろ?」

アレックが空に向かって伸びるレーダー塔を指差して言った。


「あれが90度ずつ、4基で360度全周をカバーしているんだ。フェーズド・アレイ・レーダーと言うんだけど、4,100個のフェーズ・シフターと呼ばれるアンテナ素子集合体で構成されていて、デジタルコンピューターによって各素子から発射される電波の位相を変化させて電子ビームを好きな場所にスキャンさせるんだ。それによって320キロで200個以上の目標を探知、識別、追尾を同時に行なう。そして・・・・・」



 この後、限りなくアレックの説明は続いたが、目を輝かせて聞いているジュード以外の2人には全く理解できなかった。




 それから一般の人々が見ても支障の無い機関室やミサイル格納庫(ここは外から覗いただけだった)など、アレックの後ろを付いて艦内を見てまわった。しかしジュードは余りにも夢中で周りばかりを見ていたので、いつの間にかマックスとショーンの後姿さえ見失ってしまい、気付いた時には暗く狭い艦の中で迷子になってしまったのだ。



「参ったな・・・」


 妙に歩き回って誰かに見つかり、変な疑いをかけられると、シェランやシュレイダー大佐に迷惑が掛かってしまうだろう。ここはもう一度デッキに出た方がいい。ジュードは記憶を辿りながら、来た道を戻り始めた。





 ジュードが薄暗い艦の中で迷子になっている頃、シェランは今まさに人生最大の危機を迎えていた。ヘレンが用意したドレスはシェランの好きなパールホワイトであったが、胸と背中が深く開いたデザインで、しかもそこを強調するかのように黒地のシフォンが胸元を飾り、肩から背中へと流れるように落ちていた。


「ひどいわ、ヘレン!こんなドレス、絶対に嫌だって言ったのに!」

「私はちゃんと注文したのだが、何故かこれが来てしまったのだ」


 ヘレンはシラッとして答えた。


「他には無いのだから、これを着るしかないだろう?」


 シェランはドレスを握り締めたまま、ぷっと頬を膨らませると、エバの方を振り向いた。


「エバ、交換して。そっちの方がいい」

「駄目です。私じゃ胸のサイズが合いません」

「エバの方が大きいわ」


 2人はだんだん声を小さくしながらヒソヒソ話した。


“教官の方がワンサイズ大きんです。教官・・・(ピーッ)でしょ?私は・・・(ピーッ)なんです”

“ウソ、何で知っているの?”

“キャシー情報です”


 彼女達の話に聞き耳を立てていたヘレンは、急に大声で笑い始めた。


「ほっほっほっほっほっ、いずれにせよ大差は無いねぇ。大丈夫だぞ。寄せて上げて詰めての強力ボディスーツも用意してあるからな」


 泣きそうな顔のシェランを見て、ヘレンは大満足であった。勿論これだけで済ませるつもりはなかったが・・・。


「私は30分ほど席をはずす。その間に着替えておくように」


 ヘレンは命令だけ与えると、高笑いをかみ殺しながら部屋を出て行った。






 方向感覚には自信のあるジュードだったが、いつまで経っても船のデッキに上がる道を見つけられずにいた。


「変だなぁ。敵の目をごまかす為の五感を狂わせる電磁波でも出ているのか?」

 

 そんなはずは無いだろうが、ジュードはだんだん落ち着かなくなってきた。今居る場所が決して一般人の入ってはいけない領域だったら・・・。この不利な状況に、ジュードは最後の手段に出る事にした。


「オレはSLS訓練生の、ジュード・マクゴナガルです。SEALの隊員に案内してもらっている内にはぐれて迷子になってしまいました!誰か助けてくださーい!」


 少し恥ずかしかったが、これなら艦の中を偵察している等と疑いをかけられずに済む。大声を張り上げながら歩いていると、頭の上からくすくすと笑う声が聞こえてきた。


「やあ、また会ったね。ジュードって言うのかい?君」


 さっき艦のデッキで会ったアラード中佐が、天井に通っている鉄パイプに身体を支える二本のベルトを取り付けて、寝そべったような体勢でぶら下がっていた。


「はい。又お会いできて嬉しいです、アラード中佐。ところで、何をしておられるんですか?」


 ジュードの質問に彼は再び笑いながら、身体を支えていたベルトをはずして降りて来た。


「大金持ちのお歴々が集まっているのでね。怪しいものが無いかチェックしていたのさ」


 そろそろパーティの始まる時間なので、彼はジュードを控え室まで送ってくれるようだ。




「私はダスティン・アラードだ。みんなにはディーと呼ばれている」


 歩き始めてすぐに名乗ってくれた彼を見て、ジュードは何故か胸の奥が痛くなるような感覚を覚えた。確かあの人もこうやって親しげに名乗ってくれたのだ。初めてディーに会った時、ふと懐かしい気がしたが、彼は似ているのだ。ウェイブ・ボートで「ああ、俺の事はルイスでいいよ。少佐って言っても万年少佐でね」と笑っていた彼に・・・・。



 “みんなにはディーと呼ばれている”という言い方は、君もそう呼んでいいよという意味なのだが、さすがにただの訓練生が中佐をあだ名で呼ぶのは失礼だろう。


「じゃあ、ディー中佐と呼んでもいいですか?SLSの教官はみんな、教官の前にファーストネームやニックネームを付けて呼ぶんです」

「へえ、それがSLS方式って奴?」


 さわやかに笑う彼の透き通るような瞳は、ルイスのそれとは全く違うのに何故か重なって見える。きっと彼等は雰囲気が似ているのだろう。


「さっきシュレイダー大佐がウェイブ・ボートの事をおっしゃっていたが、君はそこに居たのかい?」


 ウェイブ・ボートの名を聞くと、ルイスの事を思い出さずには居られなかった。ジュードは今打ち消した彼の顔をもう一度思い浮かべた。


「はい・・・」

「それじゃあ、ルイス・アーヴェンにも会ったんだね?」

「彼をご存知なんですか?」


 ジュードは驚いたように尋ねた。


「ノーフォークで2、3度会った事がある。感じのいい男だったが・・・。あんな事件を起こすとはとても思えない。報告を受けた時はショックだったな」


 きっと彼を知る誰もがそう言うだろう。一番近くに居たヘレンでさえ、何も気付かなかったのだから・・・。



「6年前、ある石油採掘場に爆弾を取り付けたと脅迫がありました。970フィートもの深海に。ご存知ですよね」

5THフィフスの事件だな」


 ジュードは彼なりにこの事件を調べていた。それ以外にも“私という名の男”が関係しているらしい事件は全て調べた。だから新聞で報じられている程度の事は全て知っている。


 5THの詳しい話はシェランに聞けば分かるのだろうが、それは彼女にとって大切な人をまた失う事になった辛い思い出のようで、ジュードにはとても聞けなかった。



「シュレイダー大佐は5THの爆弾を取り付けたのはルイスだと言っていました。俺もそう思います。でも変だと思いませんか?あの“私という名の男”は今まで一度だって予告などしてきた事は無い。なのに彼は言ったんです。『取りに行けるものなら行ってみろ』と。


 オレはウェイブ・ボートの事件に関わって思ったんですが、これは彼の言葉じゃない。ルイスの言葉だ。そして当時17歳だった天才ダイバーと呼ばれる少女が呼び出された。それがオレ達の教官、シェルリーヌ・ミューラーです」




 随分子供っぽい青年だと思ったが、どうやら彼は見かけ通りの人間では無いようだ。ディーは黙ってジュードの話を聞いていた。


「ルイスはSEALの中でもトップクラスのダイバーだ。自分のチームの実力は良く知っている。900フィートを超えれば、誰も取りに行けないだろうと踏んでいた。案の定、実力のあるダイバー達も全員さじを投げた。


 ところがわずか17歳の少女が生まれて初めて潜る深さに挑み、たった一人で爆弾を取り除いた。それが彼には許せなかったのかどうかは分かりませんが、ルイスは再び彼女に挑戦してきた。


『お前達は全員海に沈む』そんなサインを送ってまで、彼女を1,200フィートの深海へ潜らせたんです。オレが思うにルイスは余程“あの男”に気に入られてるんじゃないかな。ウェイブ・ボートでも単独行動だったし・・・」



 噂でルイスを追い詰めたのは一般人の青年だったと聞いて、まさかと思っていたが、もしかしなくてもこの青年に間違いないだろう。あのいかつくて他人を寄せ付けないシュレイダー大佐が、何故彼等を呼んだのか、何となくディーには分かった。





 分厚い鉄の防水扉を開けて向こう側へ入ると、もうそこはジュード達が控え室に使っているキャビンの前であった。どうやらディーは近道を通ってきたらしい。送ってくれた礼を言って背を向けたジュードをディーは呼び止めた。


「君はまた彼が、君達の教官に挑戦してくると思っているのか?」


 ジュードは彼の顔をじっと見た。ディーとルイスは全く別の人物だと分かっているのに、やはりルイスの顔をが思い浮かんでくる。


「誰かが彼を、止めない限り・・・・・」







― 2000時 ―



 巡洋艦ヴェラガルフは、マイアミから97キロ南東にあるビミニ島付近を航行中であった。700以上の島々から成り立つバハマ諸島である。コロンブスが『永遠の美』と呼んだ美しい島々と青い海も、夜は静かな波の音と鉛色の海が広がっているだけで、巨大な鉄の塊である巡洋艦にはその海こそがふさわしいかもしれなかった。


 その更に南東にあるベリー島群の中の小さな島から、南下してくるヴェラガルフに向かってボートが5艘、まだ日が暮れる前から出港していた。4艘のボートには黒いドライスーツに身を包んだ男が8人ずつ、最後尾の船には3人の男が乗っていた。



 ボートは夜の7時前に巡洋艦の守備範囲の直前に停船するとエンジンを切り、ボートを操船している者以外は立ち上がった。彼等は酸素ボンベのエア残量を確認すると、レギュレターをくわえ、次々に海に飛び込んで行った。


 その様子をアッサンは船の上に立ち上がり、黙って見送った後、遠くに見える灰色の艦影をじっと見つめた。


「金とはありがたいもんだな、タラト。キューバの一傭兵部隊が世界最強の軍を相手に戦えるんだぜ」




 この男、アッサン・メルガードは反政府ゲリラFARC(コロンビア革命軍)の父を持ち、生まれた時から潜伏、逃亡、戦いの日々を送ってきた。物心ついてから一度として安心して眠った夜は無いし、暖かい家庭のぬくもりもやわらかいベッドも知らない。


 両親が政府のゲリラ掃討作戦で壮絶な死を遂げた後、彼は腹心の部下であるコメルネ・タラトと共にキューバへと亡命してきた。そこでマルクス主義の革命家チェ・ゲバラを熱狂的に指示する若者等に出会い、傭兵部隊を作り上げた。



(チェ・ゲバラ:本名エルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナ  アルゼンチン生まれの革命家。現キューバ国、国家評議会議長、事実上の国家元首であるフィデル・カストロと共に、アメリカによる半植民地支配の傀儡政権であるバティスタ政権をゲリラ闘争により倒した人物。後にアフリカのコンゴで革命を指導。南米ボリビアでアメリカ特殊部隊の支援を受けた政権により捕らえられ銃殺される)



「フィデル・カストロがキューバ革命を成功させた時、革命軍は800人以上いたらしいが、俺達はたったの50人だ。その50人余りの軍隊に手も足も出せずにうろたえる奴等の顔を早く見たいもんだぜ。


 最高の武器、最高の装備、最高の計画。そして俺の最高の部下達。チェ・ゲバラが生きていたら、きっと最高のゲリラ部隊だと褒めてくれただろうさ」


 タラトは黙って彼の言葉に耳を傾けた後、その冷たい瞳を細め、静かに海の中に消えていった。





 ヘレンの部屋で無理やり例のドレスに着替えさせられたシェランは、パーティの始まる時間まで自分のキャビンで待つように言われた。


「じゃ、部屋まで送って、ヘレン」

「ふざけるな」

「だってこの船、まるで迷路みたいじゃない。迷子になっちゃうわ。いいの?海兵隊に捕まってスパイ容疑をかけられても。シュレイダー大佐の命令だって言ってやるから」


 何がスパイ容疑だ。とは思ったが、有り得ない話では無い。ヘレンは心の中で舌打ちすると立ち上がった。高いヒールの靴を履いているシェランは、大股で歩いて行くヘレンの後を追うのが大変だった。


「ヘレン。もっとゆっくり歩いてよ。こけちゃうわ。大体ずるいわよ。自分だけ制服なんて」

「私は任務の途中だ」

「でもウェイブ・ボートでは真っ赤なドレスを着ていたじゃない」

「あれは・・・!」



 思わず後ろを振り向いたへレンは言葉を止めた。あれはメイボート(フロリダに在る海軍基地)のベイカー将軍が「たまには女らしくドレスでも着てみたらどうだ?」などとセクハラ発言をするからだ。


 テールフック事件(1991年。海軍航空隊〈テールフック〉の隊員が上官列席のパーティに於いて、女性に集団猥褻行為を行い、一大スキャンダルになった)以来、セクハラにはうるさい今時の女性将校なら怒り狂って問題にしそうだが、男勝り過ぎるヘレンが上官にセクハラされたと言って騒ぎ立てるのは恥ずかしいものだった。


 だが腹の虫が収まらないので、公費でドレスを借りてやったのだ。それもチームのメンバーもびっくりするような真っ赤な色のドレスであった。私に恐れをなして何か言う者は誰も居なかったし、シェランも着せ替え人形みたいに派手に飾り付けてやったしで、少しは気分がスッキリした。



 ヘレンは後ろに回した首をぐるりと前に戻すと、知らん顔でのしのし歩き始めた。


「あれは・・・の次は何なの?」

「知らん」



 だが、勢い良く歩いていたヘレンは急に立ち止まった。エバやキャシーが彼女の大きな背中から覗いて見ると、廊下の向こうから紺色の制服の胸に沢山の勲章を付けた57、8歳の男が腕を後ろに組んだまま歩いてやって来た。彼は白と紺の帽子の下から見えているグレーの髪をさっと掻き揚げると、ヘレンを見上げてニヤリと笑った。


「やあ、ヘレン。久しぶりだな。2年と・・・3ヶ月ぶりかな」



 ヘレンはその男が側に来るまでかつて無いほど嫌そうに顔を引きつらせていたが、今はもういつもの無表情に戻っていた。


「そうですな、ウォルフ・バトラー大佐。チーム6・・・いえDEVGRUのメンバーは?」

「既に艦内で警戒に当たらせているよ。ところで、そちらのご婦人方は?」


 ウォルフの目がまるで舐めるように3人の女性を見た後、じっと自分の胸の辺りで止まっているのを感じて、シェランは全身の毛が逆立つような気がした。思わず後ろに下がったが、高い靴のせいでよろめいて隣にいたエバに摑まった後、彼女の影に隠れるように立っていた。


「そちらの美しい方は随分とシャイな方のようだ。後ほどお会いできるのを楽しみにしていますよ」


 ウォルフがにやあっと笑うと、エバとキャシーもぶるっと身を震わせた。


 派手好きな上に女好きだったとはな・・・。ヘレンは苦々しそうな顔でウォルフの背中を見送った。DEVGRUのメンバーはとても優秀なのだが、上官に恵まれてないようだ。ヘレンは上着を脱ぐとシェランの肩に掛けた。


「パーティの間は少年と一緒に居ろ。いくら奴でもパートナーの居る相手に手出しはして来ない」


 シェランは驚いたような顔をしてヘレンを見上げると嬉しそうに微笑んだ。ヘレンはシェランを懲らしめてやろうと思っていたが、こんな形で怯えさせるつもりは毛頭無かった。いくら男勝りでもヘレンも同じ女性である。セクハラをする男など、愛用のマグナムで風穴を開けてやる・・・のももったいないと思うほど大嫌いであった。






 行方不明になっていたジュードが先に部屋に戻っていたので心配していたマックスとショーンは半分怒ったが、半分はホッとしたようだ。


 タキシードや靴は全てその部屋に用意されていたので、パーティの時間も迫っている彼等は急いで着替えた。さすがにマックスは長身だけあって黒いタキシードが良く似合っている。ジュードはアスコットタイがうまく結べず、ショーンにやってもらいながらマックスを見上げた。


「良く似合っているじゃないか、生まれて初めてのタキシード」

「そうか?蝶ネクタイって苦しいな・・・」

「サイズ調整できるだろ?お前、首が太過ぎるんじゃないのか?」


 ショーンはジュードのタイを結び終えると、マックスの蝶ネクタイを調整し始めた。




 そろそろパーティの始まる時間なのだが、女性陣はまだやって来なかった。用意が出来たらこちらから行くとエバが言っていたのだ。迎えに行くべきかどうか思案していると、彼等のキャビンのドアを叩く音が聞こえた。ショーンが重い鉄製のドアを開けると、エバが1人で立っていた。


「やあ、エバ。そのオレンジ色のドレス。良く似合っているね」

「ありがとう、ショーン。でもちょっと大変なの。みんなでこっちのキャビンに来て教官を説得してくれない?」

「何だ?教官が何だって?」


 マックスとジュードもドアの所に集まった。


「1人だけ残るって言ってるの。ジュードにも会いたくないって・・・」

「は?何それ」


 名指しで会いたくないと言われるような事をしただろうか・・・。どう考えても思いつかなかったが、とにかくエバの後ろに付いて彼女達のキャビンにやって来た。



「いい?あんた達。何を見ても声なんて上げちゃ駄目よ」


 エバに謎の言葉で厳重注意を受けた後、彼等はエバの後に続いてキャビンに足を踏み入れた。そして本当に声を上げるどころか、大口を開けたまま立ち尽くした。


 キャビンの奥に立っているシェランは、恥ずかしそうに両手を胸の前に押し当ててうつむいたまま立っていた。狭くて暗い部屋の中が、そこだけ光り輝いているように見えるほど美しいのに、シェランはこんな自分を男性の前にさらすのが、たまらなく嫌なようだ。



 これはジュードのような純情ボーイには目の毒だろうなぁ・・・。マックスが前に居るジュードを見ると、やはり目のやり場が無いのか、赤くなった顔を横に逸らしている。




 全く、シュレイダー大佐は・・・。


 ジュードは心の中で呟いた。何かあると思ったが、こんな形でシェランを懲らしめるつもりだったのだ。どうやら彼女もまだ子供のような所があるらしい。


 ジュードは困ったように頭をかくと、うつむいたままゆっくりとシェランの方に歩いて行った。そこでシェランの横に寄り添っていたキャシーは彼女の側を離れてショーンの横に行った。




 エバはぼうっと立っているマックスの袖を引っ張って外に連れ出した。ショーンとキャシーもそろってでてくると、静かにドアを閉めた。


「心配しなくても大丈夫だよ。ジュードならうまくやるって」


 じっとうつむいたままのキャシーにショーンは笑いかけた。


「教官の事は心配してないわ」

「え?」


 キャシーはマックスと腕を組んで、さっさと前を歩いて行くエバをうらやましそうに見つめた。


「私・・・こんなドレスを着て、お、男の人にエスコートしてもらって、パーティに出るのなんて初めてで・・・。それに凄いVIPの人達が一杯来ているのでしょ?何だか緊張しちゃって・・・」


 “深海の魔女”とあだ名される負けず嫌いのキャシーが、頬を赤く染めてうつむいたまま動けなくなっている姿など、訓練生の誰も見た事は無いだろう。


 へえ、キャシーも可愛い所があるじゃないか・・・。ショーンはびっくりした顔をした後、微笑んだ。


「その胸に付いているコサージュ、はずしてくれる?」


 キャシーは一瞬彼が何を言っているのか分からないような顔をした後、ドレスの左胸についている華やかなコサージュを見つめた。彼女の日に焼けた肌にも映える、レモンイエローのドレスと同じ布で作られた小さなバラが沢山ついた物で、キャシーは戸惑ったようにそれをはずして彼に渡した。


「こういうのはね、髪に付けてもいいように出来ているんだよ」


 そういいつつ彼はキャシーの結い上げられた明るいブラウンの髪にそれを差し込んだ。


「うん。やっぱりこっちの方が可愛いよ。これで誰が見たって立派なレディだ。どんなVIPが来たって大丈夫さ」


 キャシーは頬を赤く染めたままショーンを見上げると、にっこり微笑んだ。



「後ろの2人、いい雰囲気だな」  


 マックスがショーンとキャシーを振り返って見た後、ニヤッと笑った。


「中の2人もいい雰囲気かもよ」

「教官とジュードが?それは無いだろう。ジュードはともかく、教官はジュードの事を弟か子供みたいにしか思ってないぜ」


「あら、そうかしら。さっき教官は『こんな姿でジュードには会いたくないの』って言ったのよ。ジュードにだけはね。この意味、分かるでしょ?」


 マックスは首を横にかしげて考えた後、答えた。


「いや、全然・・・」


 駄目だ、この男は・・・。エバはもうこれ以上、何も言う気になれなかった。これからパーティ会場で出会うエリート海軍将校か、大金持ちのおじ様・・・のもちろん跡取り息子に期待しよう。





 エバ達が出て行った後、静まり返った部屋の中でシェランは胸の前に押し当てた両手を益々ぎゅっと押し当てた。ジュードがゆっくりと自分の方に近付いて来たのが分かったからだ。どうしてこんなに嫌なのか分からないが、とにかく恥ずかしくて顔を上げられないのだ。


「シェラン・・・」


 ジュードの両手が自分の頬を包み込んだ瞬間、ソーグラスミルズで彼と聞いた大太鼓の音が胸から響いてきたのかと思うほど、心臓の音が高鳴って、シェランは益々赤い顔をしてうつむいた。


「シェラン、大丈夫だから。オレがずっと側に居るから。シェランは絶対にこけたりしないし、誰かからジロジロ見られたりもしない。だから胸を張って。顔を上げて。シェランはいつだってオレ達の、世界一の教官なんだから・・・」


 ジュードの言葉にシェランは胸の奥が暖かくなるのを感じた。どうして彼の言葉はいつも私を勇気付けてくれるのだろう・・・。


 彼の手の平の中でゆっくりと顔を上げて微笑みかけると、ジュードも目を開いてシェランを見つめた。


「うん。それでこそ、オレ達のシェランだ」


 ジュードはシェランの手を取って、ゆっくりと歩き始めた。





 エバやマックス達がパーティ会場に到着すると、中は既に沢山の人々で溢れ、黒や白のタキシードを着こなした紳士達がカクテルを手にあちこちで話し込んでいた。



 パーティ会場と言っても巡洋艦の中にそんな広いスペースを設ける余裕などあるはずも無く、多分ここは乗組員の食堂か何かを片付けてパーティルームに仕上たのだろう。低い天井はより狭苦しさを感じさせるが、その分飾り付けの華やかさで気分を盛り上げようというのか、金や銀のモールが天井から吊り下がり、色とりどりの生花がセレブを迎えるのにふさわしいよう、上品に飾り付けられていた。



 エバは会場に入ってすぐキャシーにSEALの隊員が居るか聞いたが、部屋の奥で艦長らしき男性と話しているヘレン以外は、ウェイブ・ボートで見た顔は誰も居なかった。多分DEVGRUのメンバーと同じように艦内の警備に当たっているのだろう。


 エバは少々残念だったが、まだ大金持ちのおじ様、もしくはその跡取り息子が居るはずだ。彼女は期待に胸を膨らませて周りを見回したが、再びがっかりする事になった。



 ここに招待されているのはチャリティーに毎年何万ドルも寄付をしているような、海運王だのホテル王だのの肩書きを持っている人物ばかりであったが、大抵は既に一線を退き、今は会長やオーナーなどという名前になっている人々ばかりであった。無論、会社に対する影響力や権限は社長を凌ぐものだが、少々暇をもてあましている老人でなければ、わざわざヘリに乗って海を渡って来るはずはなかった。



 ・・・というわけで、当然大金持ちのおじい様は来ているが、息子や孫といった若い男性の姿は殆ど見当たらなかったのだ。


「あんまりだわ!」


 日に焼けた肌を少しでも白く見せようと、お化粧に多大な時間を掛けたエバはご立腹であった。




「やあ、君達。ジュードや君達の教官はまだ?」


 がっくり肩を落としていたエバは後ろから聞こえてきた、良く通るさわやかな声の方を振り返って、急に顔を輝かせた。巡洋艦に到着した時に話しかけてきた、ダスティン・アラード中佐が白い軍服に着替えて会場にやって来たのだ。


― そうだ!まだこの人が居たじゃない・・・! ―


 天はまだエバを見捨てていなかったらしい。彼女はダスティンの左手にマリッジリングもステディリングもはまっていない事を素早く確認すると、にっこり微笑んだ。


「ジュードをご存知なんですか?」

「ああ。さっき迷子になっている彼と会ってね。部屋まで送り届けた」

「まあ、私も迷子になれば良かったわ」


 エバ好みの金髪で大金持ちのご子息では無いが、この若さで中佐といえばかなりの切れ者に違いない。エバはターゲットを決定した。



 他の3人は、普段は男勝りのエバの180度変化した姿を見て、あっけにとられていた。



 学生時代から勉強と金儲けに明け暮れていたキャシー(正にジュードの女版である)は男の子とまともに付き合った事も無く、興味があるのは海に潜る事と、SLSに居る伝説の女潜水士だけであった。訓練所に入るのにオシャレな服など必要ないと言っていたエバも似たようなタイプだと思っていたが、どうやら違っていたようだ。


 女らしく口元に手を添えて笑っているエバをキャシーが目を丸めて見ている間に、彼等の会話は潜水士の話になっていたらしく、エバはキャシーを紹介した。


「今日、ここに来ているメンバーの中で、ただ1人の潜水士候補生なんですよ」

「ふうん。じゃあ君、ミス・シェルリーヌ・ミューラーの泳ぎを知っているんだね」

「私だけじゃなくチームの人間ならみんな知っています。授業で一緒に泳ぎますから」


 キャシーはエバに気を遣って、なるべく堅い言葉で返事をした。


「彼女は重装備を背負っているのに、まるでバショウカジキが海面を飛び跳ねるように身を翻して飛び込むのだとSEALの奴等に聞いたが、本当なのかい?それはもう美しくて、初めて見た人間は恍惚としてしまうのだとか・・・」


 エバに遠慮して余り話し込まないようにしていたキャシーも、シェランの事を褒められると嬉しくて思わず声を高くした。


「ええ!海の中に入ったら、もっとびっくりしますよ。まるで魚雷みたいですから」

「それはぜひ一度、拝見したいものだな」


 和気あいあいと話すダスティンとキャシーを見て、エバは彼女を紹介したのは失敗だったと気が付いた。しかも話がシェランの話題になっている。


 キャシーがシェランの自慢話を始めたら止まらなくなるのをエバは良く知っていたし、ダスティンに美人で独身の彼女に興味をもたれるのは非常に不利だ。そこでエバはすぐに予防線を張っておくことにした。


「でも教官の泳ぎに付いていくのは至難の業ですわ。それにシェラン教官にはちゃんとパートナーが居ますし・・・」

「ああ、そうだね。ジュードはいい青年だ」


 そう答えながら彼はチラッと入り口に目をやった。彼の部下が来てくれるように合図を送っていた。


「君にも素敵なパートナーが居るようだから、俺はもう退散しよう。では」


 エバに何か言う隙も与えず、さっさと背中を向けて去って行くダスティンを悔しそうに見送った後、エバは後ろを振り向いてマックスにムッとした顔を向けた。


「なんで私のすぐ後ろに居るのよ!おかげでパートナーと勘違いされちゃったじゃない!」


― 女って、ホント身勝手だよなぁ・・・・ ―


 そうは思っても、こんな時には黙っているのが一番である。マックスは反論せず心の中で呟いた。




 このままだとショーンにまでエバの八つ当たりが飛び火しそうであったが、そろそろパーティが始まるのだろうか、さっきへレンと話をしていた艦長が、その髪の色とそろいの真っ白な帽子をかぶり直すと、マイクのある壇上に立った。


「ジュードと教官、遅くないか?うまく説得できなかったのかな」


 ショーンが隣に立っているキャシーに囁いた。


「ううん、違うと思う。教官の靴のヒール。15センチもあるんだもの」

「15センチ?何それ・・・」

「私もビックリしちゃった。こんな靴がこの世に存在したんだなって・・・」



 15センチなんてまるでトウシューズだ。それは抱きかかえてきた方が早いだろう。


 親友の性格を考えれば、とてもそんな事は出来ないだろうが、それにしてもちょっと目を離している間に、隣にいたパートナーの姿が見えなくなったと思ったら床に倒れていたなんて、エスコートしている身としては一瞬も気が抜けないでは無いか。あいつって、ホントに気苦労の多い人間だよなぁ・・・。


 ショーンは同情して溜息を付いた。





 部下に呼ばれて廊下に出たダスティンは、艦内の全てに異常が無かったと報告を受けた。彼は引き続き警戒を怠らぬように指示すると、チラッと会場の方を見た。


 もうすぐパーティが始まる。それまでに異常なしの報告を受けたのは良い事だ。だがなんだろう。この居心地の悪さは・・・。身体のあちこちがムズムズする。


 長い間この艦に乗っているが、こんな感覚は初めてだった。


「ここにはSEALの重艦鬼神とDEVGRUの大佐も居るしな。俺1人居なくなったってたいした事はないだろう」


 彼は勝手に決定すると、さっさと会場に背を向け歩き出した。






 ショーン達が気をもんでいると、閉まりかけた会場のドアからジュードとシェランが滑り込みで入ってきたのが見えた。彼等はすぐにジュード達の所に行こうとしたが、ドアが閉まった瞬間、照明が暗くなり、艦長が居る壇上だけが照らし出されたので、人々の目はそちらに向かった。



「皆さん、本日はアメリカ海軍の誇る巡洋艦ヴェラガルフにようこそ。私はこの艦の艦長を務めるジェフリー・ハザウェイです。巡洋艦の役割は、空母や駆逐艦、フリゲート艦で成り立つ空母艦隊を守護する事にあります。正にかの艦は艦体の盾、海軍の守護神(ガーディアン)なのです。しかし、本日この世界最強のガーディアンが守護するのは世界最高のあなた方です!」



 艦長がここまで言った時、出席者達から拍手が沸き起こった。


「何だか妙なチャリティ・パーティだな。お金持ちの方々を褒める会か?」


 マックスの言葉にショーンも頷いた。彼の父も映画を製作する会社をしているので、何度か父と共にこういったパーティやチャリティショーに参加したことがあるが、ここにはそこに必ずあるべき募金箱が何処にも無かった。大抵は会場の中央や目立つ場所に置いてあるはずだ。


 それが分かっていたので招待された訓練生達も、この会場に来ている人々に比べればわずかな額であるが、寄付金を用意してきたのだった。


「募金箱が無かったら、何処に金を入れるのかな。せっかく持って来たのに・・・」



「その必要は無いよ」


 後ろから男の声が響いてきたので彼等は振り返った。さっき艦内を案内してくれたアレック・ハワードが紺色の制服に着替えてやって来ていた。アレックはその理由を小さな声で説明してくれた。


「ここに居る方々はね。このパーティに出席すると決まった時点で、救済事業団の口座に多額の寄付を振り込んでいるんだ。これはその礼のようなものなんだよ。一般人では決して見られない現役の巡洋艦に乗艦できると言うね。海軍は何かと軍費が掛かるから、たまにこういった慈善団体にサービスをして、無駄に軍費を使ってないぞってアピールするのさ」



 海軍も何かと気を遣って大変なようだ。訓練生達がアレックの話に頷いていると、彼はいたずらっ子のように笑って片目を閉じた。


「さて、そろそろだぜ。君達には自慢だろ?いいよなぁ、あんな魅力的な人が上官でさ」


 何の事を言っているのか、彼等にはサッパリ分からなかった。するとそろそろその時間になったのか、艦長がマイクを取ってにこやかに手を差し出した。


「では、今夜のパーティにふさわしいゲストを紹介いたしましょう!」


 その言葉の後、パッと入り口にライトが灯った。急に薄暗くなって身動きが取れなくなっていたシェランと彼女を支えていたジュードが、何故かいきなりライトが当たったのに驚き、回りを見回した。暗くて良く分からないが、ここに居る人々の目が全て自分達に集中しているのが分かった。


 驚いている彼等とは対照的に、艦長はにこやかにシェランを紹介した。


「ダイバーの神様と呼ばれた、アルフォート・ミューラー氏を父に持ち、海洋微生物研究の第一人者であられた母上、セルレイン・ミューラー博士。その2人の優れた才を受け継いだ伝説の潜水士、大西洋のアフロディテ、ミス・シェルリーヌ・ミューラーです!」




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