第5話「失策」
風守は手持ちの双眼鏡で広場を見渡した。
「おかしいな、やけに平和だ。
もうかれこれ、1時間以上は経ってる。
銃声の1つも聞こえないとはな。」
「確かに。さすがにもう、双方が
出会っていてもおかしくはないはず。」
下村が怪訝そうに言った。
「何かあったんじゃないのかぁ?」
中岡も不安感を隠しきれない。
「んん!?どうなっているんだ!?」
風守が声を荒げた。
双眼鏡越しによく見てやると、
80余の兵士達がこちらに向かってきている。
「クーデターか・・・。馬鹿な真似を・・・。」
「うーん。爆破するってハッタリかましたんだけどな。」
と、中岡がため息をもらす。
「至急本部に連絡してくれ。応援要請だ。
こうなったら、まとめて消してやる。」
「了解~♪」
中岡は直ぐ様、携帯電話を取り出し、電話をかけた。
それから、20分が経ち、健介達はもう出入口の
ところまであとわずかのところまで来ていた。
しかし────
そこへは、140余の兵士達が待ち受けていたのだった。
「な、なんだよあれ。」
友哉が思わず後退りした。
目の前を埋め尽くすほどの大群。
「やはり、気づかれたか。」健介が苦悶を浮かべる。
「どうする?相手は俺らの2倍くらいは・・・。」
「一旦引きかえし───なっ!」
しかし、辺りを見回すとほととんどが
敵に手を回されてしまっていた。
「おいおい、まじかよ。死にたくはないぜ。」
達也が冷や汗をかいていた。
敵は少しずつ、少しずつ近づいて来ている。
「どうやら、戦うしかないみたいだな。」
健介は覚悟を決め、銃身を握りしめる。
「とりあえず、女子の救護班はここから
離れないようにして、負傷者が出た場合は
治療に当たってくれ。頼んだぜ・・・。」
笹野は黙って頷いた。
健介は銃に弾を詰めた。
唾を飲み込む。嫌な汗が出てきた。
守りきれるのか?無理だ。
最悪の場合、皆殺しだ。
しかし、戦うしか他に方法はない
逃げても、戦っても殺される。
なら、戦う方がいい。
いや、せめて、生きるために戦おう。
雄叫びを上げる。
一斉に走り出す。
決死の戦いの火蓋が切って落とされた───。