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第1話「戦闘態勢」

最寄りの駅から徒歩10分。

長い山道を登ると、

小高い丘に建てられた建物がある。

小山健介は、自転車を止めると、

その建物に入っていった。

ここは地元では、少々名の知れた進学校だ。

健介はそこの高校一年である。

教室に入ると、早速気分が悪い出来事が起こる。

「おはよう。」

のっぺりとした声で話しかけてくるのは

野部 堅太(けんた)なるものだ。

身体が大きいくせに

声が小さく、何を言っているのかわからないし

不可解な行動にでて、みんなを苛立たせる。

最近では既にクラスメイトからハブられているが、

本人は全く自覚がない。

健介は野部の挨拶を無視して

友達のもとへ歩み寄る。

「いきなり、挨拶されて、可哀想だなっ。」

そう言って同情してくるのは

藤木 友哉(ともや)

中学が同じで、このクラスでは一番仲が良い。

野部の陰口を叩いていると、

そこへクラスの

中心グループのやつらが入ってきた。

下村 零斗(れいと)風守(かざもり) 陽平と中岡 吏緒(りお)

野部はそいつらに挨拶をするが

風守が「うるせぇよ。」と一蹴した。

野部が懲りる様子はない。

風守たちは小馬鹿にしたように、声を上げて笑っている。

下村が野部の後ろで何かしているようだが、よく見えなかった。

野部から離れて、三人で何やら話しているようだが、わからない。

まあ、野部がどうなろうと知ったこっちゃない。

健介と友哉は野部を横目に、教室を出た。

その時、野部の背中にマジックテープで何か貼られて

いるのが見えた。どうせ下らないイタズラでもされたのだろう。

しかし、それは下らないどころの話だった―



ホームルームが始まり、担任の話を

右から左へと受け流す。

そうこうしているうちに、

ホームルームは終わり、

担任が教室を後にした。

その瞬間だった―

担任が廊下で悲鳴をあげた。

何か、大きな物音もした。

クラスメイトが騒然とし廊下に集まろうとするが、

教室の扉には謎の鍵がかかっており、廊下に出られない。

「ちょっと!何これ!鍵あかないじゃん!」

と声を荒げるのは、クラスの学級委員長の

笹野 花楓(かえで)

他の生徒も混乱しているようで、

健介たちも困惑する。

「おい、これどーなってんだよ。」

「誰かのイタズラじゃね??」

「先生悲鳴あげてたぞー。」

と、口々に言いながら扉へと近づく。

すると、廊下へ赤い液体が流れてきた。

「何あの赤い液体・・・。」と笹野が怪訝そうに言う。

「あれ!血だよ!血!」周りの女子が騒ぎ立てる。

そして、廊下の奥には、担任の横たえれた姿があった。

担任の腰から上は無残にも吹き飛んでいた。

女子たちが悲鳴をあげる。

教室は大パニックに陥った。

生徒たちは慌てふためく。

その時だった―

ドッパッァァアァァァンンン!!!!!

騒がしい教室を静まり返すかのように

教室のど真ん中で爆発音がした。

「え?・・・。」

教室は見間違えるように変わっていた。

白塗りだった教室は、今では真っ赤に染まっていた。

「いやぁぁぁぁぁっっ。」

と女子数人が叫び、他のものは立ち尽くしていた。

間違いなく教室は血の海へと化していた。

「おい、どうなってんだよぉ・・・。」

隣で、友哉が声を震わす。

ふと、健介は誰かがいないことに気づいた。

―野部堅太。

健介は叫んだ。

「おい!!!野部はどこいったんだよっ!!」

すると、一人の男子生徒が何かを見つけたようだ。

「なぁ!!このケータイ野部のじゃね!?」

粉々になったケータイの一部をみんなに見せた。

野部のケータイには何がカッコいいのは

野部自身の名前をケータイに彫刻してあるのだ。

その破片にはローマ字でKENTAと掘られていた。

友哉がまた、声を震わせながら言った。

「野部が、爆発したっていうのかよ・・・。」

野部堅太が爆発した―

一体なぜ?どうやって?

考えていると、健介の脳裏にふと呼び起こされるものがあった。

野部の背中についたマジックテープ。

まさか、風守たちが!?下村が野部の後ろで何か

していたが・・・。いや、そんな馬鹿な

彼はそこまでするはずがない。

教室は静まり返った。

そして、その静寂を切り裂くように

高笑いが響き渡る

「アッハッハッハッ!!実に、実に滑稽だぁっ!」

高笑いの主は風守陽平だった。

下村と、中岡もクスクスと笑っている。

「ちょっと!何がおかしのよ!」と笹野が怒号を飛ばす。

「ふっ、おかしいさ、この状況にうろたえるお前ら・・・がね。」

と薄笑いを浮かべながら言う。風守。

「お前ら、一体どんな神経してんだよ!!」

と一人の男子生徒も怒号を飛ばす。

しかしその瞬間。

タァァン!!と

銃声が響き渡る。

風守の手には拳銃があった。

「今のは空砲だ。言葉に気をつけろよ?次は死んだと思え。」

風守たちは教卓の後ろにたち、

「お前ら!教室の後ろに整列しろ!!」

と指示した。

生徒たちは、怯えながらも指示に従った。

風守は腕時計に目をやる。

「そろそろだな。」

時計の針が丁度9時を指したときだった。

ピンポンパンポーーン

『只今、職員室を占拠致しました。生徒たちは

監督官の指示に従い、戦闘態勢を整えてください。』

ピンポンパンポーーン・・・

職員室を占拠?

戦闘・・・態勢?

どういうことだ?

クラスがざわつく。

「おい!黙れ!お前ら!いいか?

これより、この地域一帯の高等学校と戦闘をする。

東軍と西軍に分かれて戦闘を行い、我々は東軍として

戦闘に参加する。東軍、西軍それぞれの高校リストは

黒板に掲示しておくから、よく見とけ。

戦闘開始時刻は12:30からだ。

それまでに、下村と中岡の指示に従い、

武具の装備をしておけ。それじゃあ、下村、中岡頼んだ。」

風守は謎の黒い鍵を取り出し、教室の扉をあけ、去って行った。

一体どういうことだ?

何のために戦闘するのだ?

しかし、担任の変死、野部の爆死。

このことより、どうやら本当に戦闘をするようだ。

募る不安に死への恐怖。

戦闘態勢どころか心の準備さえ整っていない。

戦闘開始時刻まで、あと3時間だ。

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