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恋の食感  作者: 紫雨蒼
7/7

最終話 最後の青春

ついに告白を決意したみなと。

華岡も同じ頃、ある決断を下していた…

あぁあああ!あぁあああ!

な、なんだこれ!下着の分厚いバージョンみたいなこれはなんだ!

「水着だよ!」

「いやだからお前心読めんの!?(第1話参照)」

「みなと可愛い~!これなら華岡もイチコロだね!」

「う、うるせぇ!かわいくねぇよ!なんだよこれ…!」

「え?水着」

「そういうマジレスを待ってるんじゃねぇんだよ!」

「朝からハイテンションだね!」

そ、そりゃそうだ。なにせ今日は遊びの最終日。明日はただ帰るだけだ。

今日が最大の青春の日だと言えよう。…華岡くんは、勉強しなくちゃいけないから。

「…緊張してる?」

「少し」

「大丈夫だよ!みなとなら!だって、脈ありじゃねみたいなのたくさんあったじゃん!」

…そうだ、そうなのだ。地学をよくみててくれたり、一緒に帰ったり、下らない話をしたり、そういや一緒に掃除もしたっけ。

「あぁ、俺は大丈夫」

仮にだめでも、俺は大丈夫。俺も子供じゃない。叶わぬ恋なら、きちんと身を引く覚悟だってできてるんだ。

ちなみに、これは東庄にも伝えてある。



「ぐっとぱーでわーかれーましょ!」

「「ぐー」」「「パー」」

ところで俺たちは浜辺に来てビーチバレーをしようとしている。

ぐーチームは俺と華岡くん。

パーチームはたまきと東庄。

「いくよー!……あれっ」

薄々嫌な予感はしたが早速たまき側のボールをたまきは見事に無駄にした。サーブくらいいれろよ…。

「あーあたまきなにやってんのー」

「あっはっはーだっせー!だっせー!」

「あはは」

「うるさーい!!!」

ほんと、なにをやってもどんくさいんだから、たまきは。

「華岡君投げる?」

「いや、坂田投げなよ」

「お、おう…」

く、失敗できねぇぞ、俺…。いいとこ見せるんだ……!

「それっ!」

見事に向こう側へ。

「あー…東庄!」

「えっ?」

ぽふん、とボールは落ちた。

「「いえーい!」」

…といったが、そうだ、たまきはどんくさい。東庄は唯一スポーツだけは人並み以下なんだった…。これは我ながら要領のいい自分とスポーツ万能の華岡君に勝てるわけはないのだ。…ま、いっか!


―15分後

「あ~~もう動けない~~暑い~~」

「ちょ、ちょっと休憩させて…」

たまきはうきわをもって海へ、東庄は完全にのびてしまったのだった。

「あはは、…坂田上手だね」

華岡くんはパラソルの下で体育ずわり。俺もとなりに座る。いつも以上にお互いの素肌が露になってるせいか、ドキドキする。汗でぬれた華岡くんの身体、筋肉がしっかりついて、きちんと鍛えてるのがわかる。

「そ、そんなことないぞ?華岡くんもすごかったし!」

「スポーツは割りとね」

スポーツ以外に勉強もできる、性格も良い、顔も良い、いったいどこに悪いとこがあるのか。

……ドキドキ、ドキドキ。

静かになる。

すると波の音と、自分の心臓の音がよく聞こえる。ビーチで遊ぶ人の声がなぜか遠く感じる。

「……ねぇ華岡、くん」

「うん?」

「………」

「………?」

「……あの」

「ぎゃあああああ!!!」

「綾瀬!?」「たまき!?」

なんだよ今いいとこだったんだよ!ほんと空気読めねぇなたまき!

「どうしたの綾瀬」

「ふぇ~~んマジで痛い!マジで痛い!しぬ!しぬ!」

「なんだよどこ痛いんだよ」

こういうときは俺の役目なんだ。昔っからそうなんだ。

「くらげに刺されてるね。こういうのは海水かけるとよくなるよ」

「…華岡君詳しいな」

「いやいや。ちょっと待ってて」

そういうと華岡君は海の方へコップをもって走っていった。

「みなと~普通に泳いでただけなのにひどくなーい?」

「やーいざまみろ」

酷いのは、どっちだ。

…とか思ってたら華岡君が戻ってくる。

「痛いだろうけど」

そういって患部に海水をかける。

「ぎゃあああああ!!!マジ痛い痛い痛いストップストップ!」

「んー騒がしいねぇ」

ほら東庄まで起きてきちゃったよたまき!

「くらげに刺されちゃったのかー。…そうだ、たまきちょっと話あるんだけどいいかな」

「なにさそんな改まってぇ……ったた…はいはいなんですかぁ…」

涙目のたまきは東庄に連れられてどこかへいってしまった。

「…華岡君?」

その二人をじぃっとみつめる華岡君に俺はなんか違和感を感じて話しかけてしまう。

「あ、ごめんなんでもないよ」

「ほんと、たまきうるせぇよなぁ、はは」

「やっぱり俺たちって振り回されちゃうよね」

「な!トラブルメーカーっつーか」

「坂田はずっと綾瀬と一緒だったんだよな、いいな、楽しそう」

「まさか!あいつの世話係みたいなもんだよ、あいつのトラブルは俺が処理するんだからよぉ」

「すごいなぁ坂田は」

太陽に反射してキラキラ輝く身体。長身の顔を見上げると太陽が眩しくてなかなか見えなかった。

すると、

「そろそろお昼にしよーよ!」

たまきと東庄が帰ってきた。

お昼。…これが終わったら、俺は。たまきを見ると、うんうん!っと頷いて笑っていた。



「でさー、そのハゲがね!…」

下らない話、いつもなら楽しいのに全く内容が入ってこない。段取りとか、せりふとか、ちゃんと考えてきたから、うまく言えるかな…。

「…華岡くん、食欲ないの?」

みるとよく食べる華岡くんがあまり進んでないようだった。まあそれでも人並み位は食ってるんだけど。

「朝御飯いっぱい食べ過ぎたかな」

はは、と苦笑い。

「ごめんトイレ行ってくるね」

と突然たまきが席をたった。

このタイミングでか、わざとか?と思ってたまきをみるとどうやらガチでヤバイやつらしい。

まあ別に支障はない。

「いってらー」

これで東庄がトイレに行ってくれれば俺、言えるんだけどな…。

ま、まあいいんだ。ちゃんとチャンスくらい自分で作る。たまきの力も、東庄の力も、借りない。

「…わり、俺もトイレ」

「いってらっしゃい」

なんだよ、みんなトイレの間隔同じなの?…いや、ほんとにそうなのか?東庄は普通にいってらっしゃいとかいってるけど。

華岡君が行って少し経って、俺は今がチャンスなのでは、と思った。今すぐ行けば…。

「東庄、俺もトイレ行ってくる」

「あはは、みんなトイレかー」

もうただ夢中だった。

頭んなかは彼のことだけ。

台詞を頭のなかで再生することもなかった。そんな暇さえ感じないほどに俺は夢中だった。どっどっどっ、と脈打つ鼓動が自分でもわかる。

あの角を曲がれば。

泣いても笑っても、この角を曲がれば全てに決着がつく。

思えば初めて華岡君と出会って二年と少し。いろんな地味なアプローチとも言えないアプローチをしてきた。

何気ない話をたまきたちとしたり、二人で振り回されるのを苦笑しあったり。

俺はそのままの日々が幸せであった。でも昨日、たまきから華岡君の進路を聞いて、変わった。このまま終わらせちゃいけない。

そう、俺はずっと、華岡君のことが……っ

「…好きなんだ」

自分の声ではない。

…声の主は。

角を恐る恐る、曲がれなくて、顔だけ出す。

その瞬間にもう全てを察してしまうもんだから。俺は、俺の頭は、真っ白。

大好きな彼も。

世話焼きさせる幼馴染みも。

もうなにも考えらんなくなった。


「…え?」

「だから…俺は、綾瀬のことが好き… で」

「…え、え…………?」

「わ、わかってる!でも、綾瀬が東庄と別れたから好きになった訳じゃなくて」

「でも、…え、でも」

「ずっと好きだった…んだけど、綾瀬が東庄のこと好きなの知ってたし…気づいたら二人とも付き合ってて、絶対言わないようにしよって思ってて…。でも、昨日別れたって聞いて、気持ちだけでも伝えようって、思って…」

「……ありがとう」

「……」

「…でも、私は…東庄が好き。…だから、華岡とは付き合えない…。ごめんね」

「そ、っか。…そうだよね。ごめん!」


…え、な、なに?

現実のことなのにまるでテレビドラマでも見てるようなそんな感覚。

それが途切れたのは。

「…みなと…っ!?」

「…え?」

「……っ」

二人に気づかれたときだった。

「え?あ、わり、トイレに…その、なんも聞いてねぇよ!?はは、…あは、…ごめんな!」

頭が真っ白のなかまた俺は意味もなく走り出した。どこにいくわけでもなく。

「みなとっ!」

頼む、追いかけてくんな。お前にも華岡君にもこんな俺見せられない、見せたくない。

でも追いかけてくる雰囲気はなかった。きっと華岡君が気をきかしてたまきを止めてくれたのだろう。ほんと、優しいんだな、華岡君は…。

一人、東庄のとこにも戻らないで、人気のいないビーチのはしのほうへ歩く。誰にも見られたくなかった。こんな惨めな、自分。


なんとなくでも、わかってたような気がした。わかってたけど、わかりたくなくて考えないようにしていたのかもしれない。

華岡君が、たまきのことを好きだってこと。そう思えば、今までにもそんな風に思える態度とってたっけ。

どうしてだろ。

たまきよりずっと努力してきた。たまきよりずっと優れてる点だって多い自信はある。なのに。

なんで?

お前はずっと東庄といちゃついてりゃよかったんだよ。華岡君の気持ち、踏みにじりやがって。どれだけ華岡君がドキドキして伝えたと思って…!

「…!?」

やだ、なんだこれ。

こんなんただの嫉妬じゃねぇか。

たまきに罪はない。

いや誰にだって罪はない。

だから。

この怒りと悲しみを、誰にぶつけていいのかわからなかった。

「…みなと」

「来んなよッ!」

やっぱり来てしまった、たまき。

今来られてもムカつくだけだ。

「私ね、別に華岡が嫌いな訳じゃなくて…」

「うるさいな!なにしに来たんだよ!」

「え、えっと…」

「慰めに来たってか?んなこと頼んでねぇよ!余計惨めだっての!ほっとけよ!」

「…ご、ごめ……。…ッ、うるさいな!」

………え?

たまきを見れば、俺が怒ればいつもおどおどして訳もわからず謝るたまきではなかった。

目は本気で怒っていた。

態度も本気で怒っていた。

「たま、き…?」

「なんだよ!妬みかよ!友達なんだから!心配になって来ちゃダメなのかよ!」

妬み?流石にこっちだって。

「妬み?笑わせんなよ、そんな、わけ……ッ」

「泣けよみなと!受け止めるから!吐き出せよ!全部!汚いのも全部!」

「…たまきのバカやろぉおおおおおおおお!!!!!」

なんだよお前、お前になんか。絶対こんな姿見せたくなかったのに。

「なんでお前ばっかなんだよ!お前みたいにバカでなんもできなくて、女子力もなくて、なんでお前にばっかできて俺にはできねぇんだよ!俺だってさぁ!今までずっと頑張ってきた!お前のリア充の話だって正直ムカついてたけど!我慢して聞いてきた!」

「みなと…」

俺は自然とたまきの胸元をつかんでめいいっぱい叫んだ。

「なんでお前なんだよ!!!」

たまきの頬には涙があった。でもそれはたまきのものじゃなくて。俺の。

「…みなと、ありがとう。今吐き出してくれて。きっと、あのままだったらお互いいい関係になれなかったからさ」

そっか。そうだ、今叫ばなければたまきと友達ごっこしてたかもしれない。妬みって、それほど怖いものだから。

「なんだよ、お前も成長したのな」

「…私が失恋したときとか、たくさん話聞いてくれたから。泣いてても、たくさん相談乗ってくれたから」

「友達だからな、幼馴染みだもん、もうこれ腐れ縁だよ」

「はは、ねぇあいつらんとこ戻りたくないからもう二人で遊んじゃおうよ!」

「おう!涙乾くまでぜってぇ男子どもには見せない!」


そうして俺たちはスッキリした気分ではじっこのほうのビーチで遊んだ。たまに思い出して、笑って泣きながら。



「…夕焼けが沈んでくねぇ」

「綺麗だな」

「真っ赤っかだー」

「結局この物語はお前と東庄が幸せで俺と華岡くんが報われない悲しいお話だったんだな」

「そうと決まった訳じゃないよ。…私だって東庄にフられてるしね。それに、これで終わりじゃないから」

「…大学ってことか?」

うん、とたまきは頷いた。

「しばらくは考えらんねぇな。華岡君のこと、もう少し好きでいさせてほしいな」

「思うのは問題ないでしょ」

「…行こうぜ、華岡君たちも待ってるだろうし」

「もう、大丈夫?」

俺はその問いに満面の笑みで返す。

「…あぁ」



「とーじょー!はーなーおーかー!」

「おや、二人ともどこいってたんだい?」

「よかったー、戻ってきて」

大丈夫、大丈夫。

すると東庄が海の方を差して言う。

「今日、打ち上げ花火あるんだってよ?」



たまきの計らいで俺は今華岡君と二人きりで花火を見ている。

うしろのほうにたまきらがいるけど。

「…綺麗だな、…花火」

「そうだね…」

「俺さ、ずっとさ」

「知ってた」

「…え?」

「いつも見ててくれてありがとう」

「っなんだよ知ってたのかよ~、ほんと、す、好きだった」

「ありがとう。…俺たちさ、失恋組、だね」

にへ、と苦笑する華岡くんはなんだか本当にかわいくて。

「たまきのどこがいいんだか」

「笑顔が良くて、いつも元気で無垢な感じ、かな」

「なんじゃそりゃ。…まあ、いい経験ができたな、お互い」

「そうだね」

「また友達として仲良くしてくれるか?」

「もちろんだよ、坂田」

その答えだけで、今の俺には十分だよ。


こうして俺の最後の青春は終わった。

高校最後の恋が失恋に終わってしまったのは悔しいけど。

でも、たまきとはもっと絆が深まったし、華岡君ともこれからも仲良くしていける。


楽しい青春をありがとう。



―時は過ぎ

「み、みなと!へんな、へんな格好じゃないかな!?」

「大丈夫だから早くしろ!遅刻すんだろ!」

「ふぇ~~ん」

「大学生になってまだふぇーんとかいってんのかいい加減にしろ!」

俺たちは無事に付属の大学へ入学した。たまきはやはりギリギリだったようで、学部も余り物しかもらえなかったようだ。たまきに福祉学部は無理だろ…。

俺はといえばきちんと自分の学びたい学部へ行くことができた。

「そういえば東庄のやつ東大行ったんだってな」

「それね!私には受験することすら教えてくれなかったのに~」

「すげぇよなぁ」

そう、華岡くんだけだと思ってたのに東庄まで外部受験したのである。まあ、頭いいから当然かなぁ。

そして華岡君はもう一年頑張るそうだ。

今でもたまに連絡を取って、応援している。

「…!たまき、あの人」

「…どれ?あれ?あれがみなとが今推してる先輩?」

「いや、向こうにも気があるような」

「きゃ~~いいなぁ~~」

そう、華岡君のことを忘れた訳じゃない。あのときの気持ちだってホンモノだ。でも俺の物語はあそこでおわりじゃない。そうたまきが教えてくれたから。

「せ、先輩!」

「あ、おはよう、みなと、今日もきめてるじゃん」

「か、からかわないで下さい!」

俺のこれからの物語は、まだわからない。



時間かけすぎた!終わりました!やっぱり終わり書くのが苦手です。

でも楽しくかけた!ネタをくれたみなとのモデルのお友だち、ありがとう。

これから素敵な恋をして下さい。

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