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恋の食感  作者: 紫雨蒼
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4.5話 ある夏の日

たまきの高3最後の恋愛とは…

「…そっか」

ある夏の日、私たちはそれぞれの道へ向かっていった。

季節外れの別れ道。

「たまきのことは、まだ好きだよ」

「いいって、そういうの」

「いやいやほんと。だからさ、夏休みの旅行、ちゃんと来てよ?」

「……どうしよ」

はは。私ったらどこまでも彼を困らせてしまうんだなぁ。だってほら、見てよ、この彼の困り顔。

「坂田たちの恋、応援しないと」

「…他人の恋、応援できる気分じゃない」

「……」

あぁ、違う、ちゃんと言わなきゃいけない言葉はわかってはいるんだ。

「どうか、自分を責めないで…あぁほらたまき、泣かないでってば」

「じゃあフんなし。…泣いてないし」

「そんな泣いてちゃ坂田に笑われるよ」

「みなとはたぶんざまみろって、嗤うよ」

「さあどうだろうねぇ」

「そこは嘘でも否定しろよ、ばか」

「へへ」

なんだよ、ばかって言われると笑うとこも、なんも変わってないくせに。

「…考え直す気はないの?」

「ないね」

「まだ好きなのに?」

「好きだからこそだよ」

「わかんない」

「もう8回目だよ、この会話」

だってわかんないんだもん。

あー、でも私も好きだからって理由でフったことあるわ。でもいざやられるとわかんないや。

「……………ゃ」

「うん?」

「やだぁ……ッ」

「…!た、たまき落ち着いて、ね、別れても大事な親友だから」

「やだッ、やだぁ、親友とかわかんないッ」

我がまま言わなきゃよかった?求めすぎた?ねぇ、自分はどこで間違えたの?

子供のように叫んだ。

いや、子供か。まだ子供の恋愛なんだ。

涙で滲む視界でもわかるんだ。彼が本当に困った顔をしている。だめだ、散々迷惑かけたのに、最後の最後までこれじゃ。

ごしごし。

ずずッずびッ

ふるふるッ

すくッ

「…たまき?」

まっすぐ見つめる。

深呼吸。

恋人として、最後に言いたい。

「今まで、ありがと。…ばか」

そういって手を差し出す。

「こちらこそ、」

彼も手を差し出した。

その手を握った。

「……ッ」

その手をグっと引き寄せる。

「ありが…ッ、……ッ、たまきッ?」

「最後くらい、いいよね?」

あぁ、暖かいなぁ……

ぎゅ、と。最後に強く抱きしめた。

でもすぐ離れた。

でも手だけはなぜかお互い離さなくて。

駅に着いちゃった。おもむろに東庄はいった。

「未練がね、恥ずかしながらあるんだ」

「…へ?」

「だから、もしかしたら、なーんてこともあるかもね」

「ばか、そんな期待させるようなこと言うんじゃないよ、ばか」

「だから、その時はまた、手を繋ごうよ」

「…あっそ。じゃあ」

親友として最初に言いたい。

「改めて、よろしく」

「うん」






「…き?たまき!」

「…!ほぇ…?」

「ほぇじゃねぇよ。何、魚に見とれてんだよ、しかもきめぇ深海魚に」

…あ、ほんとだ。

確かに目の前には体つきがひどく醜い深海魚。他の三つの深海魚は綺麗で、仲よさそう。なんでこいつだけ。なんか、自分みたい。ひかれるように気づいたらこんなところにいた。

「あぁ…えっと、ほら!こういうのも綺麗って感じれるのさ!」

そんなふうにいつも通り、ばかみたいに明るい声なんか出してみる。

「そうかよ。…東庄と華岡君も心配してる。行くぞ」

二人が心配?なんでだろう。

…あの日からまだ半月。

あの手のぬくもりは、絶対に忘れることはない。

みなとになんて言えないよ。あんだけ騒いでおいて。

「たまき!何ぼーっとしてんだ、さっきから。行くぞ!?」

「う、うん!」

うまく生きていこうね、深海魚さん。

……。

や、やだ、泣きそう。はは、やだなぁ、二週間も経ってるのに…

「たーまーき!」

「わ、わかってる!」

醜い深海魚は三つの深海魚にちろちろと近づいていってるように見えた。

私も、いつまでも立ち止ってるわけにはいかない、か。

結局私、なんも気にしてないふりして、東庄と話して、今までと変わんない素振りしてるけど。私自身はあの日からずっと進めないままなんだもん。

だって館内入る前だって…。


「華岡。ちょっと耳貸して?」

「ん?なに?」

「…あのさ、私みなとと二人でまわりたいから、華岡は東庄と二人でまわってくれないかな?」

「いいけど…なんで?」

「…お願い、あ、このことは言わないでね」

「う、うん…」


こんなの、私、東庄から逃げてるだけ。

それを、東庄が望んでないのも知ってるんだ。だって彼はこんな、まだひきづってる私のことだって全部わかってるような顔してるんだもん。

そう、このままじゃダメなんだ。

「なんだよお前そんなあの深海魚気に入ったのかよ、趣味わりぃな」

「うるさいな~…。あ、東庄!」

あれれ、ナイスタイミングな東庄じゃん!

「見つかったんだ、よかったね」

「華岡は?」

「たまきをみんなで手分けして探してたんだよ?」

「あ…、ごめん」

そっか。私が勝手にいなくなったから。無意識だったとはいえ、申し訳なく思った。東庄の気もちも考えないで、自分勝手な行動をとって、みんなの迷惑になって、本当に情けなく思った。東庄はほんとに「親友」として接してくれてたのに。何も変わってなかった。変わったのは、私だ。

「つかお前ら二人で回ればいいのに」

みなとは私たちに気をつかったのか、そんなことをいった。

さっきまでは恥ずかしくて、ずっと言えなくて、黙ってた。でも、今なら言える。言わなくちゃ。

「いいのいいの。私たち別れたから」

…ね、と私は東庄のほうににこっと笑った。もうひきづらないよ、という意味も込めて…。


実話元にとか言いません。ごめんよ、彼がいった言葉まんま使ったりしたセリフあるんだwwwめんごだわwwま、恥ずかしいから本人には言わないけどね~


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