聴こえない
僕は聴こえない声を聴く
誰かの笑顔の裏に
音を隔てた窓の向こうに
手を掛けた扉の奥に
背を向けた教室の中に
責める声を聴く
何故お前は此処にいるのか
何故お前はお前であるのか
お前など受け入れはしないのだ
お前など愛しはしないのだ
お前には空っぽの笑顔で十分なのに
何を以てお前はそれ以上を求めるというのだ
耳を塞ぐ
目の前の唇があり得ない言葉を紡ぐ
発せられたはずの声が屈折する
無秩序な嬌声が僕を指し示す
見知った姿が僕の背中を抉る
冷たい声が
僕の中の悪意が
僕を壊そうと寄り添うのだ