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居心地の良い場所を離れよ

 石造りの聳え立つ城。窓からは人影……否、魔族だろう、が見え隠れする。

「それでは私はこれで」

 そう馬車で送ってくれた魔族は一礼して去っていく。

 罠かもしれないと警戒していたレオン達だが、そんな事はなくここまで連れて来られた。

 そして、現在大きな城門の前に立ち止まっている。理由は、

「さっきから何度も押しているんだが、一向に開かないんだよな」

 全員で扉を押していたのだが、一向に開く気配が無い。

 困ってちょっと下がって扉を見ていると、扉がゆっくりと開き始めた。

 そこには執事服を着た魔族が困った顔でこちらを見ている。

「この扉は、外側に開くように設定されていますので、押されても開かないのです」

「すみません」

 何故か謝ってしまうレオン達。そして中を案内されるも、人らしい給仕もちょくちょく見かける。

 全員、美形の男だが。

 それは良いとして、どういうわけか一室に通される。

「ただいまご主人様は忙しいので明日までこの部屋でおくつろぎください」

「……えっと、俺らは勇者で……」

「存じています。他に何かございましたら、備え付けのベルを鳴らしてください」

 そういって去っていく案内人の魔族。

 高級な感じの宿というか何というか。カノンは首をかしげる。

 それにダブルベッドが二つしか無いとか、何かがおかしい気がする。

 加えて、ここで待っていてくれと部屋に案内される事自体がおかしい。そもそも自分達は勇者で敵なのに?。

「どうしようか……そうか、家捜しを!」

 と、レオンが言った瞬間再び先ほどの案内人が顔を出し、

「もし、調度品を壊すようなことがありましたら、それ相応の代金を払っていただくか、体で償って頂きますので、ご了承ください」

 事務的に告げる魔族。それに、レオンが反応した。

「あ、はい、分かりました。所で、体で償って貰うというのは?」

「東の城壁が最近崩れかけていますのでそちらの補修です、それが何か?」

「ですよねー」

 そのまま去っていく魔族の案内人。とりあえずカノンは一発レオンを殴っておくかどうか悩む。

 どうしていつもいつもいつも、そういう発想に結びつけるのだろう……はあ。

「と、いう事はだ。これから魔族の兄ちゃん姉ちゃんをナンパに行ってもいいってことか?」

「……下手すると、物理的な意味で喰われるよ?」

 頭が痛くなりながらもカノンはそう忠告する。

 もっとも、高位の魔族……特に知能の発達した魔族は確かに人間を喰う事が出来るが、基本的に性交渉で魔力を食らうことが多い。その方が、捕まえる手間が省けるからだ。

 ようするに、キスしまくりというけしからん話なんだよな、とカノンは心の中で呟く。

 もっとも満月の夜といった魔物の衝動が強く出た時はその限りではないが。

 一応魔族同士でも魔力を喰らう事はできるのだが、闇と光という相反する者同士、お互い求め合う傾向が強かったりする。

 さて、それは良いとして。

「大丈夫だって。知能のある奴は、見境なく襲ってこないし、というわけで俺は行く!」

 く、余計な知識だけ増やしやがって、とカノンは心の中で毒ずく。

 そして意気揚々と駆け出したレオンに向って、カノンは杖を振り上げて、電撃の魔法を使おうとして、外れたら弁償という言葉が浮かび慌てて魔法を使うのをやめる。

 その僅かな時間差で完全に後れを取り、カノンはレオンを見失ってしまう。

「……良いだろう、この僕を甘く見たことを後悔させてやる! イオ、トランは留守番よろしく!」

 任せてー、とイオが答えるのを尻目にカノンは走り始めたのだった。

 

 レオンだって実は考えていたりする。

「さてと、この城の内部構造をある程度知っておいて、いざという時の脱出経路を決めておかないと」

 そもそもこの依頼、何かがおかしいのだ。何か別の目的がある気がする。

 それに、この前会ったあいつもカノンの事を欲しいって言っていた。

 確かにカノンは可愛くて綺麗で魅力的だが、それだけで選ぶような奴ではなかった……はず。

 いや、でもカノン、本当に可愛いし。それもありえる、か?。

 だが、計算高いあいつの事だ。それだけのはずが無い。わざと負けたのも何かの布石か?。

 魔法の明かりが灯るであろう窪みは、目印になりそうに無い。窓も同様。

 本当に構造がとても単純で分かりやすい。もっと入り組んでいるものだと思ったが、そんな事は無い。

 そして途中から部屋を覗くのを止める。

 先ほどから同じような客間にばかり。階を下がると厨房があり、そこにいた魔族とおじさんがに汚れたままここに入ってくるなとレオンは怒られた。

 大体分かったの、上の階を目指す事にする。

 そういえば偉い奴って上のほうに住んでるよねと思うも、そこからは人間にも会う。それはそれは美形の。

 とりあえず、ナンパしているふりをしつつ、そこら中を駆けて、人や魔族の気配がなくなる。

 この場所に違和感をレオンが感じていると、通路の一角に一人の魔族が待ち構えていた。

 黒髪に金色の瞳。

 年若く見える魔族だが、そもそも人間と魔族の年齢を一緒に考えてはいけない。

 幼い姿でも、ジジイだったりババアだったりするのだから。

 見た目の感じから、レオンと同い年のように見えるが。

 彼はにこやかに友好的な笑みを浮かべてレオンに言った。

「一発殴っていいかな?」


お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。


別の話も書きたいけれど、なんか、今すごい話が思い浮かぶ。


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