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本人だけが気づかない

 翌日の事。

「嘘だ! そんなの絶対に嘘だ!」

「嘘じゃない。カノンが自分からキスを迫ってきて、こう……」

「~~~~~~~~~(言葉になら無い悲鳴)」

 先ほど目を覚ましたカノンは、二日酔いの頭痛を感じながら起き上がって、部屋の惨状を目の当たりにした。

 倒れているイオ、トラン、レオン。そして樽に下半身を突っ込んで転がっている自分。

 どうしてこうなった。

「ええっと、確か戻ってきたら、イオとトランが酒を半分ほど消費していて、それで作ってたといっていたんだよね」

 そうカノンはちらりとキノコの山を見る。減った気配が全然無い。

 後で素材だけでも売るかと溜息をつく。

 そもそも前からお酒は弱いのだとカノンは皆に言っていたはずなのに。普段イオはいい奴なのに、何故こうも酒癖が悪いんだろう。

 そこで、レオンが目を覚ましたらしかった。

 そういえば、どうしてレオンが倒れているんだ?。

 理由はすぐに分かった。

「ない、ないから。そんな事……」

 酔った勢いとはいえ自分からキスするなど……何故覚えていなかった自分、とカノンは思って、覚えていたならどうなのだと疑問に思う。自分の気持ちが良く分からない。

 いや、それよりもレオンはどう思っているのだろう。まさかキスなんて。

 別に何かの答えを期待しているわけではない。……多分。

 なので、試しに聞いてみると、

「カノンの柔らかくて温かい唇がこう、俺の唇に……」

「やーめーろー」

 あまりのも生々しく聞こえて、カノンはがくがくとレオンの襟元を握り締めて揺らすも、レオンは笑ったままだ。

「いや、でもまさかカノンに襲われるなんて思わなかった」

「事故だ、不幸な事故だったんだ」

「だよな、俺もカノンは大切な“幼馴染”だからそういう対象に見れないし」

 その言葉に、カノンは何故か大きな衝撃を受けた。

 いや、確かに“幼馴染”だし仲間だから仕方ないというか、当たり前だが……。

 まるで自分が何かを期待しているみたいではないか。

 そう考えた途端、カノンは、はうと思った。

 無い、これは無い。無い、絶対無いから。無い……でも本当に?。

 そこでレオンがやけに上機嫌に、

「そういえば俺のファーストキスはカノンなんだよな」

「なん……だと?」

「昔やっただろ? そうか……覚えていないか」

 ちなみに魔王であるカノンのファーストキスは、百歳以上年の離れた子供に奪われずみである。いや、確かにあの時子供に化けてはいたのだが……。

 お嫁さんになってよとその後言われて、あの時は慌てて逃げ出した。

 何分子供の言う事。そんなに大げさに受け止める必要はなかったのに。

 そういえばあの子供も、金髪に空色の瞳をしていたとカノンは思い出す。

 すごい偶然だ。

「いや、まさかカノンがそんな風に思っているなんて気付かなかったよ! カモーン、ベイベ」

「……実家に帰らせていただきます」

「あ、嘘です。冗談です……」

 引き止めるレオンに、僕も冗談ですよと笑いかける。

 まだ目的も果たしていないのに、帰るわけないのだから。


 ギルドから依頼を受けた内容をカノンは説明した。

「よし、装備を整えに行こう!」

 何故かテンションを高めるレオンに、カノンはジト目でレオンを見た。

「……どうやって?」

「さて、あのキノコでも売るか」

 そうやって幾らかお金を得たものの、それも回復の魔法薬代で消えた。

 そして、四天王の魔族に攫われるという場所に来たわけだが。

「『美男求む! 人、魔族は問いません。ここから20km』えっと時給は、30リン……これ、魔物倒すより儲かる?」

「やはりここで普通に働いたほうが生活が……」

「カノンちゃん、カノンちゃん。レオンが本気で働こうか迷っているから止めて」

「うう……この時給……」

「ああ、カノンちゃんまでが大変な事に。トラン!」

「いいんじゃないか?」

「く、魔物嫌いのトランまで……金か、やっぱり世の中金なのか!」

 たしかにこれだけあれば、自分も含めて四人でこれでこうで、しかも宿代がかからなくて……て、違う。そうじゃない!。

「レオン、君は勇者として構えていればいい」

 危なくカノンは本来の目的を忘れる所だった。

 その言葉に、レオンがカノンに抱きついた。

「本当にカノンみたいな“幼馴染”がいて良かった」

「レオン……」

 そんなレオンを見て、カノンは罪悪感のようなものを抱く。

 利用しているだけなのに、レオンがこんなに嬉しそうだから困るのだ。

 本当に困る。

 そこで、馬のような魔物に引かれた馬車がやってくる。それはレオン達の前に止まった。

「……勇者御一行ですか?」

 その馬を操る人型の魔物が無表情に問いかけた。魔物特有の角張った耳に、金色の瞳が揺れている。

「そうだと言ったらどうする?」

「そういった挑戦する方々も、運ぶように仰せつかっております」

 その言葉にレオン達は顔を見合わせたのだった。

お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。



今日は何回更新できるか不明ですが、よろしくお願いします。

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