愛は全てを救う
フリフリの貴族が普段のパーティで着ていそうな豪華なレースのドレスを、ホーリィロウを着て、残念だが非常に似合っていた。
そんなホーリィロウに、若干引きつつレオンが問いかける。
「何でそんな服を持っているんだ?」
「行く先々で綺麗なお嬢様方に、『ぜひ、ぜひ、着て頂きたいです!、きゃー/////』と言われてね」
「……その事に疑問は?」
「女性には優しく、が僕のモットーなんですよ?」
そうですか、さすがはモテる勇者様は違いますね、とぶつぶつと呟くレオン。
そこで、ホーリィロウの仲間である戦士が少し小さめの花の入った花瓶を持ってくる。
そして、そのままホーリィロウの頭に乗せた。
「……何をやっているんだ?」
「この前助けた、クレメンダ領のマリー、マリーアントワネットお嬢様からこのような花瓶を頭に乗せる髪型が流行っていると聞いたので試そうかと」
「やめろ、さすがにそれは無い」
「無いとは思ったけれど、そういう髪型も意外に面白いかなと僕は思うのだが?」
「……何で昔からそういうセンスだけは斜め上なんだろうな、お前は……」
いつも振り回す側のレオンが珍しく溜息を付く。
そこで、ホーリィロウの仲間の魔法使いが、
「あのー、前回もそうですが、レオン様?、は我等が勇者様とどのようなご関係で?」
それはイオも気になっていたので耳をそばだてて様子を見守る。
にやにやとホーリィロウは笑い、一方レオンは気まずそうに目を背けて、
「……前回が初対面だ」
「いえ、ですが……」
「ほら、魔法使い。レオン様がそう言っているのならばそうなのだろう」
さりげなく様付けで名前を呼ぶホーリィロウに、レオンは苦虫を潰したような顔をする。
残念とイオは小さく心の中で思った。しかし、レオンの素性が気になったが、いずれは分かるだろうとイオは楽観的に考えた。
そして、あまり会話したくないというかのように、レオンはカノンの傍に歩いていく。
心なしか憂鬱そうで、いつもの明るいレオンからは想像をつかない。
一方、未だカノンと僧侶のイータは、シャー、と相手を威嚇しあっていた。
そんなカノンをレオンは後ろからぎゅっと抱きしめる。
カノンが固まった。
「え、えっと……レオン?」
「ちょっとカノンを補給する」
そのままレオンはカノンの首筋に軽くキスをする。
カノンの顔が真っ赤になって、引き剥がそうかどうしようかとわたわたとしてから、そっと安心させるようにレオンの手に自分の手を重ねた。
しかしどちらも女装しているので、百合カップルのように見えると誰もが思った。と、
「レオン様! 僕だってレオン様を癒す事が出来ます!」
「……いや、一応僧侶だから、神様に仕える人にそういう事しちゃいけないだろ?」
「大丈夫です! 愛さえあれば、大抵の場合何とかなります!」
必死に抱きついてこようとする僧侶のイータを絶妙な距離に逃げつつ避けるレオン。すると、
「カノン……あれ、どうした? 肩を震わせて」
カノンが顔を上げ、満点の笑みを浮かべて、
「レオン……僕が、魔物とのハーフだからって、好きなように体を弄んで良い訳じゃないいんだからな!」
「別に、気持ち良くなかったんだから良いだろう?」
「気持ち……確かに、ちょっとレオンの体温が伝わって気持ちいかなと思ったけれど! それとこれとは話は別だ!」
素で告げるカノンに、今度はレオンが気恥ずかしくなる。
珍しく頬を赤らめるレオンに、カノンは珍しいなと思いつつ見詰めていた。
そして取り残された僧侶イータが、そんな二人が気に食わないので何かを言おうとして、ホーリィロウに遮られた。
「それじゃあダンスをする組はくじ引きでいいかな?」
とりあえず全員が社交ダンスしか出来ない事が分かった。
「それで、俺とホーリィロウ、カノンと僧侶のイータになったわけだが……そこ、喧嘩するな」
再びカノンと僧侶のイータは、シャー、と相手を威嚇しあっていた。
そして言っても止める気配が無い。と、
「仕方がありませんね、では、レオン様が女性役という事で。僕は男性パートしか踊れませんから」
くるっと、カノンがこちらを向いた。微妙そうにレオンを見て、ホーリィロウを見て、再び何かいいたそうにレオンを見る。
レオンは自分が嵌められた事に気づいた。
「ホーリィロウ、そういうアピールの仕方はどうかと思う。俺を男役にさせろ」
「レオン様は女性パートしか踊られたことが無いはずですよね?」
「……知らん。カノンの前では、幾ら……」
「貴方様といえど、僕は仕えるべき主と獲物の区別は付けているつもりですので」
「……後悔するぞ?」
「実力で示せば構わないでしょう。そもそも、そちらの方の手腕も僕にはあることはお忘れで?」
「どっちも女装しているんだし、どちらのパートを踊ったとしてもアピールにはならないだろう?」
「ではこのままで構わないですね」
本当に扱いづらい、とレオンは心の中で思う。昔からこいつはそうだった。
そして本気でカノンを獲物として取りに来ている。
理由は、どれなのかが分からない。単純に見かけに惹かれただけなのか、別の理由があるのか。
そう、カノンが……。
レオンはホーリィロウの事を昔から知っている。
それ故に、彼がどれほど魅了に長けているのかを知っている。
取られたくない。
たった一つだけどうしても譲れないそれを奪われたなら、レオンは自分が狂うのではないかと思う。
ずっと焦がれて、追いかけて、けれど無理かもしれないと思いながら忘れられなかった彼。
そこで、カノンがレオンに近づいてきて、レオンの頬にキスをした。
自分からなんて珍しいとレオンは思っていると、そのままカノンは真剣な表情でにっと笑った。
「勝て、レオン」
短い言葉。けれど、それだけで十分だった。
レオンはホーリィロウに向き合って、自信を取り戻したかのように笑う。
「いいだろう、お前には負けない!」
そんな様子にホーリィロウは焼けますね、と呟いたのだった。
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気よつけて→気を付けて、ですね。指摘して頂きありがとうございましたorz。本当に気が付けばそういう癖がついてた。いつ付いたんだろう……記憶に無い……。
また、この話を追記:すぴぱるにも投稿するかもです。
明後日から冬コミデスネ……私は体調不良で自宅待機です。遊びに行きたかったお。代わりに、連日更新できたらなと思っています。コミヶで並んでいる間の暇つぶしにでもお楽しみくださいませ。
次回更新は未定ですが、よろしくお願いいたします




