破局していない
広間に通じるらしい部屋の扉の前で、レオンは立ち止まらず終えなかった。
「よく来たな人間よ。人の王の子、レオン」
「我々はお前を歓迎する」
「しばし待て」
「今準備中だから、待てといっている」
そう口々に、無表情でレオンに告げる四人は確か、魔族の四天王だったよなとレオンは思いだした。
だが今の話を総合すると、
「……中で何をやっているんだ? そこにカノンがいるのか!」
しかし四人は答えない。
さて、どうやって口を割らせようかとレオンが考えていると、四天王の一人が、
「……不本意だがお前の力を借りざる終えない。まさか次の日に来るとは思わなかったが」
「俺も、こんなに早く辿り付けるなんて思わなかった」
まさか、こんな方法をとらされるなんて思わなかった。
というか、これを使えば、レンヤは魔法陣が壊れるけれど使わなくても済むといった事に……。
「まさか、ルカにそういう所を見せたくなかったから、とか? 格好付けたかったとか……ありうる」
レンヤのルカへの想いが一杯一杯な感じに気づいてしまった。
そして、背伸びをして見せようとするレンヤにも、レオンは……自分にも覚えがあって責められない。
と、一人でぶつぶつ言っているレオンに、四天王の一人は、
「……どうやってきたというのだ」
「なんか地面が爆発して飛ばされてきた」
「……真面目に答えろ」
そんな事を言われてもレオンは、そうとしか答えられない。なので、
「本当だって。でも、俺は何でここに入れたんだ? 一応、人間は"勇者"がいないとは入れないんだろ?」
そう答えながらも、カノンが入れてくれたわけではないと、カノンの先ほどの様子も含めてレオンが少しだけ気持ちが沈んでしまう。
けれどすぐに四天王の一人が言った言葉にレオンは戸惑う。
「……何を言っているんだ? お前は、"勇者"ではないか」
その言葉にレオンは一瞬黙って、それから、
「"勇者"は"光の神"が認めなければなれないんだろう? 俺は、"光の神"に嫌われているし、王族だからそんなはずが無い」
「だが、そうでなければこの城に入れない。……これも、"光の神"の計算の内か?」
そう舌打ちする四天王の一人。
けれど、"光の神"とは、レオンは聞き捨てなら無い。
「どういう事だ? "光の神"がまた何かやったのか? だから……カノンは俺から……」
「それに関しては我らは知らない。だが、トリュカースも含めて、カノンカース様もいまや"光の神"の手が及んでいる」
「魔法は解いたんじゃないのか?」
「我々のは、だ。だが……まだ残っていて、そして、トリュカースの恋人のレイルもまた"勇者"だ。"光の神"が手を伸ばしやすい相手だ」
「……"勇者"と魔王は、最終的に破局する……それも"光の神"が関わっていたと?」
「……ここまで陰湿で、手の込んだ破局は今までではなかったはずだ」
「まだ破局していない」
「だが……」
「……"光の神"との事は何らかの形でけりを着けないといけないな。でないと、カノンが納得もしてくれないだろうし……」
その言葉に、四天王達は少し驚いたようだった。
「……お前達の神、"光の神"に反抗するのか? かの神は魔王様のような甘さは無いぞ?」
「……だとしても、カノンのためならいい。それに……俺は"勇者"なんだろ? もう少し勇敢でもいいだろう?」
「……勇敢と無謀は違う。お前の事は嫌いだが、カノンカース様が気に入っているから……」
「ちなみにこのままだと魔王様がいなくなるかもしれないけれど良いのか?」
レオンが言った言葉に、四天王が一様にえっという顔をした。
「待て、何の話だ!」
「だってそうだろう? カノンが気に入っている"光の神"が、カノンを誰か魔族とくっつけると思うのか?」
それに四人が沈黙する。
額にはたらっと冷や汗がたれている。
けれどそれを認めることが出来ないのか、そんな四人の一人が、
「わ、我々で対抗を……」
「出来たらこんな事になっていないんじゃないのか?」
四人は何にも言えなかった。そして暫く沈黙して、嘆息する。
「……今は、その話はおいておく。どんな事であれ、我々は我々の王達を守る、それだけだ」
「……そうか。カノンは本当に愛されているな」
そんなレオンの言葉に、四天王はふんと笑って、
「我々は人間とは違うのだよ」
そう言って、部屋への道を彼らはレオンに空けたのだった。
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また、気を付ける、という言葉ですが、つい、気よつけるにしてしまっている事が良くあります。すみません……orz。
次回の更新は近日中に。よろしくお願いします。