ふふふ
カノンは満月の次の日、朝からぐったりしていた。
課と居てこのまま具テーとしていても仕方がないので部屋の外へ出て歩いていくとルカに出会う。
「……はあ、良く眠れなかった。ルカ~、あれ、どうしたんだ? 着替えなんかして」
「あ、いえ、その……昨日は満月でしたから」
それ以上は顔を赤らめて何も言わないルカ。
そしてその様子を見て昨日、カノンがレオンを思い出して発情してしまって辛かった事を思い出した。
「……えっと、この首飾り、衝動を抑えるんだよね?」
「……これは推測なのですが、我達がこの時代に来たおかげであれが発情の呪いになっているので、効かなかったかもしれません。覚えがありませんか?」
「……なんか前の満月の時、気がついたらレオンのベッドで一緒に寝ていた」
「え? 良くカノンさんは一緒に寝ていましたよね?」
「いや、あの日はたまたま別の部屋でだったんだけれど、レオンにお説教をしていたんだ……レオン」
うりゅ、と涙があふれ出てくるカノンを、ルカは慌てて慰める。
「カノンさん、辛いなら思い出さなくて良いですから落ち着いて……」
そんなルカは気づいてしまった。
カノンの背後で、目を爛々と輝かせて不気味に笑うトリューカースがいる事を。
そんなトリュカースは、泣いているカノンの背を叩く。
気付いたカノンが慌てて涙を拭くのを見て、更に黒く恐ろしい気配を回りに撒き散らしながら、トリューカースは問いかけた。
「カノン、貴方を泣かすのはあのレオンという、人間のクソガキですか?」
「ち、父様……違います」
「嘘です。あの人間が原因で泣いているのでしょう? 僕の可愛くて大切で大事なカノンをこんなに泣かせて、ただで済ましてなるものか……」
そう怖い微笑を浮かべる父トリューカースにカノンは慌てて、
「ち、違うんです! 僕がレオンを振ったんです。レオンの事が好きだから……一緒に居ては駄目だと思って」
「……カノン、そうですか。ではずっとここに居なさい。ずっと……そうすればきっと、悲しい事なんてなくなりますから」
「そうですね……ずっとここに居れば良い。ずっと……」
ぼんやりとした口調でカノンも呟きだす。
そう、ここに居れば誰もカノンを傷つけない。
誰も触れず綺麗なまま朽ち果てて、そうすればきっと……。
そこでルカが声を上げた。
「カノンさん、四天王の皆さんとまた遊びませんか? 我はカノンさんも含めて皆で遊びたいのですが」
「ん? ルカが遊びたいなら良いよ。えっと父様は……」
「これから現四天王達と話し合いがあるから、僕は手が放せないかな。でも、機会があれば僕も誘って欲しいな」
「手が放せない、ですか?」
「ええ、レイルとする事がありますから」
その答えにルカは少し黙ってから、
「……そうですか。では、その時は皆で楽しみましょう。……貴方の恋人のレイルさんも一緒に」
レイルさんも、という言葉に一瞬トリュカースは反応をするも、すぐに微笑み、そうですねと答えて去っていく。
その後姿を何処か心配そうにルカは見ていた。
そんなルカにカノンが頬を膨らませて、
「……何でレイルなんか誘うんだ」
「"勇者"もまた"光に神"に近い存在ですから」
「! 父様が危ないのか!」
「……一番危ないのはカノンさんだと思います。今の"光の神"に気に入られているのですから」
この前の事を思い出してカノンはいやそうに呻く。
「う、で、でも……」
「どの道、魔王は全員、今の"光の神"の大好物の獲物ですから、全員危険な事に変わりありません」
「え? じゃあルカも?」
「うーん、一応どう対処すればいいのか分っていますから」
「どうやって?」
面白そうに覗き込むカノンの瞳は、何処か虚ろげだった。
それにルカは嘆息して、
「……所でもう部屋に辿り着きましたが、軽くノックした方がいいですね」
そう言って軽く戸を叩くと、どうぞと声がして、カノン達は中に入り込む。
そこには、次代の地の四天王ユウトと次代の風の四天王リンツがいて、二人は手にコーヒーカップを持っていた。
すでに皿の上には食べ物はなく、食後のコーヒーを堪能しているらしい。
また来ると思っていなかったのか、二人は驚きながらも嬉しそうだった。
「また来ていただけて嬉しいです。カノンカース様」
「……別に、ルカに連れてこられただけだから」
そう次代の地の四天王ユウトの言葉にカノンはそっぽを向くも、彼は嬉しそうだった。
そして、慌てたようにそれらを片付けして、他の二人を読んだ再び昨日のゲームを続ける。
昨日は負けたが今日こそはと四人が邪な事を考えてゲームをするが、その結果は昨日と同じで、魔王様が強運生だという事が分ったという。
「さーて何を着せるかな……ふふふ」
そんな風に笑うカノンは、とても魔王じみていたと後に四人は語り継ぐこととなる。
お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。
次回の更新は近日中に。よろしくお願いします。