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一途な愛

 所変わってレオン達が深夜1:00にやってきた。

「と、いうわけでカノンを取り戻したいので、レンヤ、良い方法がないか?」

「あります」

 ぶっ通しで何かをやっていたはずなのに疲労の見えないレンヤ。

 しかしそんな疑問など吹っ飛ぶほどに、レンヤはあっさりと答えた。

 そんなレンヤにレオンは詰め寄り、

「この際、どんな方法かは問わない! 頼む」

「はい、ですがちょっと今手があまり放せませんので明日の……いえ、0時を回ったので今日の午後一時ごろでいいですか?」

「う……わかった。それでいい。よし、カノン、待っていろよ……」

 そう暗く笑うレオンに、レンヤは背伸びをしてから傍の水差しから水をコップに注いだ。

 そこでレオンはあることを思い出す。

「そうだ。そういえばルカもカノンに連れて行かれたんだが……」

「八つ当たりですか?」

「何で知っているんだ?」

「……無駄な事なのに、なんでするんだか」

 レオンの質問に答えず、レンヤは嘆息するように呟いた。

 一見頼もしく聞こえる言葉だが、この時はレオンも気になってしまった。

「無駄ってどういう意味だ?」

「カノンさんは貴方とくっつく。そして、ルカは俺と。それが信じられなくて"光の神"は邪魔している」

「"光の神"はカノンが欲しいんだろう?」

「……面白いという気持ちはあるでしょうが、カノンという魔王を魔王として存在できなくなれば……その時、再び"闇の神"が顔を出して、その状態であれば心がぼろぼろだろうから手に入る……そう錯覚をしているのでしょう」

 ぎょっとするような答えに、レオンは目を見開く。

「……好きな相手を壊そうとしているって事か?」

「心が手に入らなければその体だけでも欲しい……屈折した感情です」

 再び嘆息しながら、レンヤは傍にあったサンドイッチを口にする。

 もぐもぐと食べて咀嚼して、

「これは美味しいですね」

「だろう? この城には何故かそのサンドイッチを作るのだけが上手い料理人がいるんだ」

「一芸に秀るのは大切な事かもしれませんね」

「うむ! しかし俺の一芸って何だろう」

「一つあるでしょう」

「……王族だって事か?」

「カノンさんへの一途な愛です」

 レオンは噴出してごほごほと咳き込んでしまう。

「おま……いきなりそんな事を言うなよ」

「間違っていませんから。それにそうでないと俺も困ります」

「ルカが生まれないからか?」

「それもありますが、でも、そうでないときっと俺も……何物にも代えがたい、愛おしくて守りたい大切な人に出会えないでしょうから」

「なんか、ルカにべた惚れだな。俺は、一瞬悩んでしまったのに」

 カノンが魔王だから、もしもカノンがいなくなれば、そうすれば人間にとって良い事ではないのか?。

 レオンは人の王族としての立場もある。

 大勢の人がレオンの意思によって影響を受ける。

 知っているけれどレオンは目を背けた。

「俺には、ルカの他に何もありませんから」

「え?」

「幼い時に、両親を流行り病で亡くしまして。それで、もしもあの時ルカに出会っていなかったら、今の俺はいなかった。その出会いがあったから、今はこうなっていて……気がつかない内、必然にされていたのかもしれませんが、それでも出会って愛おしいと思って追いかけて追いかけて、ようやく触れる事が出来たのです」

「そう、か」

「俺もほんの一時諦めかけて苦しい時もありましたが、偶然が味方して、ルカが転がり込んできて……俺はずるいから、そのまま自分のものにしようとしたけれど……結局、ルカと戦って勝ちました」

「……そうか」

「きちんとルカのお父様も倒して納得させましたから、問題ありませんでしたし」

 レオンがお父様という言葉に反応した。そういえば、

「……俺、カノンのお父さんに了解を取っていない」

「それは大変です。頑張ってください」

 そう人事のようなレンヤに、レオンは血の気の引く思いで、

「あれか。カノンが母様とやっていたようなあれをするのか? 俺が」

「さあ? ですがどの道カノンさんを魔王として倒さないと、カノンさんは納得しないかもしれません」

「……そういえば、前に勇者として来て、てお願いされたよな。……まさかこれは、そういうイベントなのか?」

 そうなってくると必死に悩んでいた自分が馬鹿みたいだとレオンは思う。

 そういえばルカも連れて行ったし。

 そんな悩みだすレオンに、レンヤは、

「それでも良いのでは? どの道、勝てば多少のお願いは飲んでもらえますし」

「つまり勝って、カノンに体を要求する、そういう事ですね!」

 なぜか変に元気になっているレオンの様子に、不安を覚えたイオがレンヤの肩を叩いた。

「……あまりレオンを煽らない方が良いんじゃないかな。もしも振られたら……」

「大丈夫です。問題ありません」

「えっと……まあいっか。あれくらい元気で斜め上に頑張って、自分の欲望に素直なのがレオンだろうから」

 良く分っている仲間のイオだった。

 それにレンヤも、今の"光の神"のように、レオンが昔の自分のような感情に囚われる事は望ましくなかった。

 もっと甘くて、優しくて、温かい、そんな想いを知っているから。

 

 そしてその日の午後一時。

 レンヤは落ち着いていると思っていたが、結構無茶するんだな、という事にレオン達は気づいたのだった。

お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。


次回の更新は近日中に。よろしくお願いします。

追記;11/19 一部付け加えました。


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